「水族館30年問題」という言葉をご存じだろうか。大量の海水を使うことから設備の老朽化が進みやすい水族館。開館30年を目安に大規模改修や建て替えが必要とされる状況を表現している。鹿児島市にある「いおワールドかごしま水族館」も例外ではない。かごしま水族館が直面する30年問題について検証した。

「かごしま水族館」にオープン“30年”が迫る

かごしま水族館は1997年、鹿児島市の「本港区」と呼ばれるウォーターフロントエリアにオープンした。「黒潮浪漫海道」をコンセプトとして鹿児島の海を中心に、約800種類もの生き物を展示している。

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ジンベエザメやエイなどが回遊する「黒潮大水槽」は壮観で、イルカのジャンプなどを見ながら生態を学べるイルカプールも人気だ。
日本では1990年代に水族館オープンが相次いでいて、各地でリニューアルや建て替えの計画が進んでいる。

いわゆる「水族館30年問題」だ。延べ1,600万人以上の県民や観光客を魅了してきたかごしま水族館もオープン30年が迫る。

葛西臨海水族園の3つの問題

かごしま水族館の対応の前に、1989年、東京・江戸川区にオープンした葛西臨海水族園の30年問題への対応を見てみよう。

クロマグロが80匹泳ぐ圧巻の大水槽。フンボルトペンギンは137羽と飼育数日本一を誇る葛西臨海水族園。施設は大きく3つの問題を抱えていた。

まず、「施設・設備の老朽化」だ。水槽のガラスは白濁し、アクリルガラスの接合部に線が入っている。

さらに、水槽の裏に回り施設設備を見てみるとコンクリートにヒビが入っていた。東京都動物園計画担当課・蔵持修課長はコンクリートの成分が水槽に溶け出したり、海水があふれる可能性があると危機感を持っていた。

次に「飼育スペースの不足」。この30年で水槽を追加したりレイアウトを変更したりした結果、バックヤードは天井が低く、配管や配線が入り組んでいる。

スタッフは、かがみながらの作業を余儀なくされ、効率が悪い状態が続いている。

そして、「求められるバリアフリー対策」。1989年のオープン当初は、バリアフリーの考え方がまだ社会に浸透していなかった。

車椅子やベビーカーは業務用のエレベーターでしか対応できず、バックヤードを通って館内に入る。「ペンギンを横から観察できるスペースだが、階段でしか来ることができない。車いすの方は苦労されてしまう」と、担当者が悩みを語った。

来館者からも「ところどころで階段を下りるところがある。ベビーカーで移動できるようにしてもらえるとありがたい」との要望が聞かれた。このように老朽化や時代のニーズに応えるべく、変化を迫られた葛西臨海水族園が選んだ道は、「建て替え」だった。

幸い、敷地内に広い土地があったため、そこに新しい建物を建てることで生き物への負担も、費用も減らせると判断。音響など最先端技術を駆使した新たな水族園が2028年開業予定だ。

“魅力のある施設”を目指す

30年まであと4年となったかごしま水族館。来館者から見える場所に限れば老朽化は目立たないが、バックヤードを見せてもらうと…。

鹿児島市水族館公社 総務課施設係・松林国治主幹:
ここはイルカプール裏の予備プール。日頃のメンテナンスはしているが26年たつとさびが目立つ。しっかり直すために(営業を休止して)水を抜いて作業する必要性が今後出てくる

また、寒い場所を好むアザラシに対応した特殊な冷却装置も一部故障している。

担当者によると、「(26年前の型式の機械で)修繕部品がない状態。特に水族館は殺菌装置や専用の冷凍機など特殊なものが結構ある」ということで、苦労が絶えないようだ。

設備の老朽化が刻一刻と迫る中、施設を管理する鹿児島市は2022年、水族館のあり方を考える検討委員会を設置。現在の建物を生かして展示スタイルを見直す「リニューアル」の方向で、検討が進められている。

鹿児島市 観光振興課・安田直高課長:
「観光施設」「環境教育」「調査研究」の水族館の役割は今後も変わらない。展示方法についてはいろんな方法があるので、生き物の見せ方については今後も検討していかないといけない

かごしま水族館を訪れた人は「子どもたちは見て喜ぶような、それぞれの生き物の面白いところが見られたら」、「エスカレーターを上ったら黒潮大水槽が見えてくるのがこの水族館の売り。ベビーカーで上っていけたらいい」と話していた。

子どもから大人まで多くの人を魅了してきたかごしま水族館。避けて通れない30年問題を逆手に取り、さらに魅力ある施設になることを期待したい。

(鹿児島テレビ)

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