エンジン用ピストン国内シェアNo.1、創業100年以上の長野県上田市の自動車部品メーカーが異業種への挑戦を始めた。それは「コーヒー栽培」。電気自動車の普及で主力製品の先細りが懸念される中、会社は「多角化」を模索し、新たな事業に進出した。今後の展望を取材した。
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危機感…コーヒー栽培に挑戦
上田市のアート金属工業。100年以上の歴史があるメーカーで、エンジン用ピストンは国内シェアNo1。
今、本社工場の敷地にはメーカーには不釣り合いな農業用ハウスが建っている。
2023年6月、苗木40本を植えて栽培スタート。フルーティーな香りが特徴の「ティピカ種」で既に花が咲き、小さな実ができている。

それにしても、なぜ、コーヒーなのだろうか。
三城伸五社長は、「電気自動車が増える中で、主力製品のピストンが生産提供が減っていくという危機感がありますので、それを新しい事業で補っていきたいということでいろんな事業にチャレンジすることに決めました」と話す。

電気自動車の普及でエンジン用ピストンの先細りが懸念される中、会社は「多角化」を模索。
社員から意見を募ると最も多かったのが「農業への進出」だった。
上田城跡公園に近いため、「観光農園が良いのでは」ということになり、観光客などにも話を聞いたところ、「くつろげるカフェがほしい」という声が多く聞かれた。
そこで、始めたのが「コーヒー栽培」。
三城伸五社長は、「ここでコーヒーを栽培して、提供することができればと考えた。国内でも新しいコーヒーの苗木を栽培する技術ができてきたことも後押しした」と、コーヒー栽培への挑戦の理由を話す。

コーヒー栽培専従の社員は“初心者”
葉に付く虫などを丁寧に取っていく竹内仁士さん。コーヒー栽培専従の社員だ。
経験が全くなく、初めてのコーヒー栽培に戸惑いがあったという。
竹内さんは、岡山県で栽培を手掛ける農園で1カ月半、研修するなど育て方を学んできた。

コーヒーの生産国と言えば赤道に近い中南米や東南アジア、アフリカの国々。栽培に適した気温は20℃から30℃とされている。
信州は寒すぎる気がするが―。
竹内さんは、「この苗、特殊でして、下は15℃、上は42℃まで生育範囲があるので、上田の寒い地の中でもハウスものならできる」と説明する。
種を冷凍する「凍結解凍覚醒法」といわれる方法で、苗木は耐寒性や順応性を高めてある。
ハウス内は、地下水を利用したヒートポンプシステムや温度で窓が自動開閉する仕組みを導入し、温度管理を徹底している。

いずれはカフェ併設の「観光農園」
順調にいけばこの冬、収穫し、果肉などを取り除いて「コーヒー豆」にして春には社内で試飲するという。
いずれはカフェを併設した「観光農園に」という構想も描いている。
「『本当においしいね』と言ってもらえるようになるのと、上田でもコーヒーできるならみんなでやろうよって長野県も盛り上げたい、そういう思いで今やっています」と竹内さんは意気込んでいる。

(長野放送)