54歳で若年性の認知症を発症した62歳の男性。発症後の落ち込む日々の中、妻に背中を押され通い出したデイサービスが立ち直るきっかけとなり、認知症を知ってもらう活動を始めている。認知症の当事者とその家族の思いなどを取材した。

54歳で若年性の認知症を発症

「落ち込んでしまって死んでしまいたいような気分にまで落ち込んだ。そして引きこもった」

こう話すのは、大分県豊後大野市に妻の京美さんと2人で住む戸上守さん62歳。市役所に勤めていたが8年前、54歳の時に若年性の認知症を発症。

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契約書を作るのに字や数字を間違ったり、書類をどこやったわからなくなるなど、事務作業ができないような状態になったという。

そして、40年間勤めた市役所を退職。

「認知症を知ってもらう」当事者が発信

発症後の落ち込む日々の中で妻の京美さんに背中を押されて通い出したデイサービスが立ち直るきっかけとなったという。

戸上さんと同じような若年性認知症の人が集まっていて畑作業をしたりデイサービスが請け負った配送作業などを行っている。

妻の京美さんは「とにかく一歩踏み出そうということで助けを求めて、それが今のデイサービス」と当時を振り返る。

前を向き始めた戸上さんは夫婦で話し合い、認知症を知ってもらう活動を始める。2021年には認知症の本人が情報発信を行う「県希望大使」の第1号に任命された。

戸上さんは「認知症の人たちを元気づけたいし家族の方も少しでも安心させたいという気持ちがある」と話し、妻・京美さんも「できることいっぱいあるし普通だよということを当事者や家族が発信する方がいいかなと」と、“知ってもらう”ために夫婦二人三脚で取り組んでいる。

各地で講演や認知症当事者の相談に乗るなど様々な活動を行っている戸上さんは「認知症になってからの生活の方が幸せかもしれない。デイサービスに行ってたら、夫婦のことをよく聞くけれど私は幸せだなと思った」という。

アルツハイマー病新薬、日本でも承認

認知症を巡っては製薬会社「エーザイ」がアメリカの企業と共同開発した「レカネマブ」という新薬が日本でも承認されることになった。認知症の進行を抑えることが期待される世界初のアルツハイマー病治療薬。

この薬について専門医は、期待しつつも全ての認知症に効果があるものではなく課題もあると言う。

「データを見ると早期のアルツハイマー型認知症にはある程度効果が期待できる。副反応などのリスクであったり、金銭的なもの、デメリットもあるので、そこをやっぱりしっかりと見極めて正しく本当に効く人に早くいかに届けていくかがすごく課題になる」(日本認知症学会専門医 萩原聡医師)

その上で萩原医師は「かかりつけの先生に一言相談してみる。地域の包括支援センターであったり市役所の物忘れ相談会だったり、いろんな方法があるので、そのあたりを利用するといい」と認知症は早期発見が大切だと話す。

「新しいことだって挑戦できる」

最後に戸上さんは「新しいことだって挑戦できるし、新しいことだって覚えられるということを知ってほしい。認知症は怖い病気ではない、認知症になっても幸せに生きることができるはずだ」という話をしてくれた。

大分県内の65歳以上の認知症の人の推計人数は約6万4000人から6万7000人で今後さらに増えると見られている。

認知症については「おれんじ」という情報サイトで県が様々な情報を発信している。こちらも参考にし、認知症について正しい理解を深めてもらいたい。

(テレビ大分)

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