百貨店「そごう・西武」が9月1日、アメリカの投資ファンドに売却された。JR福井駅前には西武福井店があり、地元では撤退への懸念が高まっている。専門家は「投資会社が自分たちで経営するとは考えづらい」とし、4つの売却先が想定されると分析している。
広報「当面は現状のまま営業を続けていく」
関係者によると、投資ファンドと連携するヨドバシホールディングスは西武池袋本店の土地などを約3,000億円で購入した。そごう千葉店、西武渋谷店でも出店を検討するとみられる。

一方、福井テレビの取材に「そごう・西武」の広報は、「西武福井店」を含む全10店舗について、「当面は現状のまま営業を続けていく」と回答した。
また、買収した米投資ファンド、フォートレスは「そごう・西武をこれまで以上に地域の皆さまに愛される象徴的な場にしていきたい」と答えた。

西武福井店・田中香苗店長:
本部からはお客さまに迷惑をかけることなく、株主が変わっただけと聞いている。駅前のシンボルとして、商品とおもてなしをしっかり充実させ、お客さまが何度も来たくなるお店作りを頑張っていく。引き続きお買い物に来てください

西武福井店に入居するテナントからは、「今後について店側から何も聞いていない」、「従業員の雇用の問題もあるので早めに知りたい」、「本来なら取引業者との話し合いがあってもよいのではないか」などの声が聞かれた。
親会社が投資ファンドに変わった以上、先行きの不透明さは残る。百貨店に詳しい福井県立大学副学長の北島啓嗣教授(専門・流通論)は、投資ファンドの役割は投資家から集めた資金を最大限の効率で運用し、そのもうけを分配することにあるという。

北島啓嗣副学長:
もうかるか、もうからないかが投資ファンドの判断基準。そこに「ウェット(同情心)」のようなものが入る余地がない。投資家に対して最大限応えるのが最優先なので、社会的意義や雇用、地域活性化は優先順位が低い
経営維持ではなく“売却”の可能性
全国の百貨店の売り上げは1991年の9兆7,000億円をピークに減少が続く。2022年は4兆9,000億円と最盛期から半減した。

「そごう・西武」は2022年度まで4年連続で最終赤字になるなど、業績の不振が続いている。この長期にわたる不振が、売却の背景にあると分析する。

北島啓嗣副学長:
百貨店はかつて流通、小売業界の中でパワー、社会的意義のある存在だった。ただ、その地位をショッピングセンターやネット通販に奪われ、百貨店の収益が上がってこない。
北島啓嗣副学長:
コロナが明けた瞬間に富裕層が戻ってきて黒字体質になった百貨店もあるが、「そごう・西武」のブランドは他の百貨店に比べると超一流というわけではない。なかなか売り上げが上がらず、新しい道が必要になった
人口減少が進む地方にある「西武福井店」は、経営の維持ではなく、売却される可能性があると指摘する。

北島啓嗣副学長:
投資ファンドの体質上、百貨店をずっと自分たちが経営していくことは考えにくい。どこかに売って、もうけたお金で次の投資を行う。次の引受先がどうなるのかが問題
考えられる「西武福井店」の4つの売却先
売却先について4つの可能性を挙げた。

(1) イオンやユニーなどの流通大手
(2) 高島屋、三越伊勢丹など別の大手百貨店が引き受け存続する
(3) 不動産会社が購入し、業態を転換する
(4) 自治体や地元の経済界が資金を投入して、百貨店を維持する
最後に「西武福井店」が百貨店として存続するためには、2024年3月16日に決まった北陸新幹線の福井開業が重要になると指摘した。

北島啓嗣副学長:
新幹線開業で地元がどれくらい盛り上がれるのか。駅前再開発の投資などの頑張りが百貨店を維持することになる。また、百貨店が新幹線で来た人に素晴らしいサービスを提供すれば、福井駅前の魅力の維持につながる。良い循環に回れるのか、正念場を迎えている
(福井テレビ)