2023年10月、新型コロナの影響で当初の予定から3年遅れて「かごしま国体」が開催される。準備が佳境を迎える中、間に合わなかったのが鹿児島県の新たな総合体育館整備だ。
一方、2024年の国民体育大会改め「国民スポーツ大会」が開催される佐賀県には、新たなアリーナが完成した。両県の体育館と街づくりについて考える。

どこに建てるのか? 進まない新体育館整備

鹿児島市にある県総合体育センター体育館は築60年以上が経過し、施設の老朽化が進んでいる。

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全国レベルの競技大会を行うにも広さが不十分とあって、「かごしま国体」に向けて新たな体育館の整備が検討され始めたのは2008年のことだった。しかし、「どこに新たな体育館を建てるのか?」。その答えを見いだせないまま時間だけが過ぎていった。

候補地として、2008年には鹿児島県庁東側の土地が提示された。その後、2013年には鹿児島市・ドルフィンポート跡地、さらに2018年にはJR鹿児島中央駅西口が候補地に。
2019年には再び、県庁東側の土地。そして2021年、またドルフィンポート跡地…。

候補地が提示されるたび賛否の議論が巻き起こり、新たな体育館は国体を前に着工すらできなかった。

「SAGAアリーナ」完成で街が活性化

一方、大規模な大会を前に施設の完成にこぎ着けた場所もある。2023年5月にオープンした「SAGAアリーナ」だ。会場内はすり鉢状になっていて、スポーツの一体感を味わえる巨大な空間となっている。

2023年5月にオープンした「SAGAアリーナ」
2023年5月にオープンした「SAGAアリーナ」

SAGAアリーナは2024年、国体にかわり初めて開かれる「国民スポーツ大会」を前に佐賀県が整備した。

バレーボール女子日本代表の紅白戦
バレーボール女子日本代表の紅白戦

8月12日に行われたバレーボール女子日本代表の紅白戦では、迫力ある音響と光の演出の中、選手たちが入場し、会場内の3つの大型ビジョンには、白熱した試合の様子が映し出された。

1階から4階まである客席には最大で8,400人が収容可能で、どの席からも見やすいように勾配も工夫されている。
九州最大規模のSAGAアリーナでは、スポーツだけでなく人気アーティストのコンサートも次々と予定されている。

大阪から来た人:
遠くてなかなか来られないけど、こういう機会に色々観光できたらいい

佐賀県内から来た人:
こうやって色々なイベントがあるときにみんなで集まって、わーわー言って楽しんでいける施設になるんじゃないかな

総工費約257億円。巨額を投じた背景について、佐賀県の担当者は次のように語った。

SAGAサンライズパーク整備推進課・丸井泰斗さん:
アリーナを中心とした見るスポーツの機能をはじめ、育てる、支える、憩いにぎわうという機能の充実を図って。本当に国体(国スポ)だけで終わりではなく、その先の佐賀のさらなる文化の醸成を目指して整備を進めてきた。土日のイベントは2年先まで埋まっている状況

JR佐賀駅からアリーナに向かう歩道も新たに整備され、街の景色にも変化が見られる。

2019年、「アリーナ効果」を見越して、店を構えた店舗もある。アリーナのオープンから3カ月。実際、どう感じているのだろうか?

ラフカフェ&ダイニングバー店長・水町奈央美さん:
お客さんが1.5倍から2倍くらいは増えた。売り上げもすごく増えた。県外の方がすごく増えた。九州だけではなく、東京や北海道から来ましたとか。ライブの時とか特に。佐賀が活性化されたなとすごく思う

SAGAアリーナは地元に経済効果も、もたらしているようだ。

塩田知事「場所についての異論、意見が大きい」

構想から15年、一体なぜ、鹿児島に新たな体育館はできなかったのか。8月25日の定例会見で鹿児島県・塩田知事に見解を聞いた。

上片平健アナウンサー:
純粋に一県民として、なぜ鹿児島にできなかったのかなと思うんですが、土地の問題か、費用の問題か、反対意見との調整が難しかったのか?

鹿児島県・塩田康一知事:
今までの経過を見ていると、場所についての異論、意見が大きい。場所ありきではなく、どういったものが必要なのか、どういったものを作るのか、そういったことを議論しましょうということで、スポーツコンベンションセンターという形での整備をする

鹿児島の新たな総合体育館は現在、再び鹿児島市のドルフィンポート跡地での整備計画が進められている。基本構想で示されたのは客席8,000席、コンサート利用も想定したSAGAアリーナと似た規模の施設だ。

SAGAアリーナで行われていたバレーボールのイベントには、ロンドン五輪銅メダリストで鹿児島出身の2人、迫田さおりさんと新鍋理沙さんも参加していた。

元バレーボール日本代表・迫田さおりさん(鹿児島市出身):
鹿児島にもこれだけきれいで設備も整った体育館ができたら、たくさん鹿児島にも色々な方が足を運んでくれて鹿児島の魅力を感じてもらえると思うので、鹿児島にもできたらうれしい

元バレーボール日本代表・新鍋理沙さん(霧島市出身):
やっぱり見る方も楽しいと思うし、やる方もお客さんの声援や応援が力になる。本当に素晴らしい会場だと思うので、色々なところにこういう会場ができるとスポーツももっともっと盛り上がっていくと思います

「かごしま国体」という大きなきっかけが失われた中で、県民の納得のいく形で新たな体育館が鹿児島に完成する日は来るのだろうか。

(鹿児島テレビ)

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