石川県珠洲市蛸島町に2023年8月にオープンした珠洲ホースパークでは、引退した競走馬が余生ゆっくりと過ごしている。奥能登の自然に囲まれたウマたちが、どんな日々を送っているのか取材した。

サラブレッドに豊かな余生を

珠洲ホースパークでは広さ約1万㎡の敷地に5頭のウマが飼われている。このウマたちは引退した競走馬、乗用馬で、その役割を終えてここに辿り着いたのだ。サラブレッドの平均寿命は25歳前後で、競走馬として活躍できるのは5歳から7歳くらいまでと言われている。

珠洲ホースパーク
珠洲ホースパーク
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この施設は、競技を引退したウマたちにのんびりと余生を過ごしてもらいたいと、JRA日本中央競馬会の元調教師、角居勝彦さんが作った。しかしなぜ奥能登、珠洲市なのか。角居さんは「ウマは食べた分だけウンチするんですけど、有機肥料としてそのまま使って、耕作を放棄した場所にウマが入ることで草地化することができる」と説明する。ウマは動いている間は草を食べ続けるので、耕作放棄地が多い珠洲ではウィンウィンの関係なのだ。

角居勝彦さん
角居勝彦さん

ホースパークで一番の古株、アル(11)。競走馬時代の名はレッドアルティスタだ。記者がアルの体に触れてみると、とても温かくて驚いた。「ウマは人間の体温より1℃だけ高いので、冬場なんかはぴったりとくっついていたいくらい」と角居さんは話す。他にも最年長のセリシーヌ(16)に心優しいポッキー(11)、新入りのカウディーリョ(7)、そして羊と一緒に飼われていたミニチュアポニーのてん(推定6~7歳)が暮らしている。

ウマ特有の社会

ウマ同士仲が良さそうに見えるが、実はウマの世界にもルールがある。「力関係と言いますか、ウマは社会性を持っているので、ウマの中でも序列があるんですけど、見ているとちょいちょい入れ替えをしてやろうとしている」。角居さんによると、現在はトップが古株のアル、次にポッキー、セリシーヌ、てんと続く。施設に入った時期や体力の有無などに基づいて、ウマ同士が順位付けを行うそうだ。

エサを食べるのもその順番に従う。「今は順番が決まってしまったので、争わずに草を食べていますけど、新しいウマが入ってくるタイミングでその順番決めもシャッフルが始まったりする。ポッキーが2番手でいたんですけど、争わないので仲良くセリちゃんとポッキーが一緒にいます」。そんな力関係を変えようと画策しているのが、ミニチュアポニーのてんだ。「小さいんですけど気も強いし、ひょっとしたら一番攻撃性があるかもしれない」と角居さん。記者が近づくと、てんは急に距離を詰めてきた。これも力関係を誇示するためだという。

「序列の2番に入ろうとミニチュアポニーが入ろうとしているのが面白い。人間に対しても『順番入れ替えたろか』みたいなところが少しある」。そんなてんには、かわいい一面もある。角居さんが強めにかいてあげると、気持ちよさそうに鼻が伸ばしている。鼻が伸びていればリラックスしている証しなのだそう。

ミニチュアポニーのてん
ミニチュアポニーのてん

ウマと触れ合いに珠洲へ

角居さんは「昔から人と共生している動物なので、どういう動物なのかを多くの方に見てもらって、いろんな人に触れ合い体験をしてもらえればと思います」と期待している。奥能登、珠洲の自然の中でのんびり暮らすウマたちと触れ合ってみてはいかがだろうか。

【珠洲ホースパーク】
営業時間:午前10時~正午、午後1時~午後3時
入場料:500円
ウマとの触れ合い体験:30分4000円(要予約)
定休日:火曜・水曜
※詳しくは「みんなの馬」で検索を。

(石川テレビ)

石川テレビ
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