山形・舟形町など1市2町にまたがる山に、関西電力が大規模な風力発電施設の建設を計画していることがわかった。その数40基。候補地では、国の天然記念物のイヌワシの“つがい”が確認されていて、反対の声が上がっている。

「配慮書」の提出は先延ばしに

風力発電計画が持ち上がっているのは、舟形町と最上町・尾花沢市の1市2町にまたがる「熊ノ返山(くまのかえしやま)」周辺の山地。

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関係者によると、関西電力は2022年春から1年をかけて、1市2町の市町長や舟形町議会のほか、地元の地区長や建設業協会・小国川漁協などを訪れ、県内最大の40基の風車の建設を計画していると説明したという。

しかし、関西電力が2023年3月から7月にかけて行った調査で、国の天然記念物に指定されているイヌワシの新たなつがいが1組、絶滅が危ぶまれているクマタカのつがいも複数確認された。

事業認可を得るためには、第一段階として県と1市2町に対し、生態系への影響や保全対策などをまとめた「環境影響評価配慮書」の提出が不可欠だが、イヌワシの新たなつがいが確認されたことにより、この夏まとめる予定だった「配慮書」の提出が先延ばしになったという。

イヌワシの保全「何としてでも」

専門的立場で関西電力から意見を求められている今井正さんは「イヌワシが生息し、ましてやペアでいる所での風力発電事業計画は全国どこにも存在しない」と話す。

希少猛禽類研究家・写真家 今井正さん:
県が納得する「配慮書」でないと何回も訂正させられるから、計画そのものを“縮小”するか“断念”するかという選択になる

今井さんは今回新たに見つかったイヌワシのつがいを「神室山系南ペア」と名付け、8月、環境省に登録申請し、保護に乗り出している。

希少猛禽類研究家・写真家 今井正さん:
イヌワシはいま全国で500羽ほどしかいない。500羽のうちつがいで2羽が熊ノ返山周辺にいる。何としてでも保全しなければならない

舟形町民からも厳しい声

計画を受け舟形町民は「40基? びっくりする。山と川が舟形の一番の魅力。押し切って建設するのは難しいのでは」「生態系に影響があるなら反対」「イヌワシは残さなければ。種の保存の見地からも強行できないのでは」など、厳しい意見を寄せた。

関西電力は取材に対し「熊ノ返山周辺は全国で検討している候補地の一つ。調査は進めているが具体的な計画は何も決まっていない」と話している。

(さくらんぼテレビ)

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