インターネットで化粧品や健康食品を買う人も多いと思うが、いまトラブルが相次いでいる。購入のボタンを押す前に、ちょっと立ち止まってみてほしい。それ「定期購入」の契約になっていないだろうか?

広告の下の方に小さく「定期コース」

消費者契約に関する問題に取り組むNPO法人が、インターネット通信販売のとある広告について問題があるとみている。それが、「ファンデーションが『初回特別価格79パーセントオフ』」。

通常価格は1万円以上するものが、1980円で買えるというものだ。試しに一度この価格で購入できるのかと思いきや、広告の下のほうを見ると、小さく「定期コース」と書かれていた。

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「こちらは自動でお送りする定期コースです」「2回目は30日後に38パーセントオフの1個当たり5950円で2個」「2回目を受け取らずにご解約される場合は、通常価格9600円との差額分のお支払いが発生します」

この表示は「消費者に誤認される」として、京都市のNPO法人が2022年7月、広告の差し止めを求め、京都地裁に訴えを起こした。

訴状などによると、全国の消費生活センターには、この会社の化粧品広告などについて、2023年3月までの1年半の間に2400件以上の相談が寄せられていた。

相談例:
お試しのつもりだったけど、すぐに2回目の商品が届き困惑
2回目から高額になる定期購入になっていた
解約したい

NPO法人によると、裁判が始まったあと、この会社の広告の表示が変更された。定期購入であることや、解約の際には、通常価格分の代金支払いが必要なことが赤文字で強調されている。

ただNPO法人は、変更後であっても広告の差し止めが必要だと訴えていた。

「“定期購入”であることを認識することは格段に難しい表示だった」

京都地裁は8月30日の判決で、「今後、誤認表示を行う恐れがあるとは、直ちに認めがたい」として、広告の差し止めについて棄却した。

一方で、「変更前の広告は、定期購入契約であることを認識することが格段に難しい表示であった」とも指摘した。

NPO法人側は…

原告側 増田朋記弁護士:
初回だけおすすめですよという趣旨の強調がそのままになっていたらですね、いくら条件部分が強調されたところで被害が収まらないということは、正直明らかなんです。そこの不当性がしっかり認められて、差し止めが認められるべきではなかったかと

ネット通販の定期購入トラブルは、近年増加の一途をたどっている。2022年の消費者白書によると、「定期購入」に関する相談件数は過去最多を更新。5年前は約2万件だったものが、2022年は約7万5000件と3.4倍に増加した。

商品の内訳では、6割以上が化粧品で、次いで健康食品が2割以上となっている。

実際に街で聞いてみると…

30代女性:
あります、あります。ダイエットサプリとか買って。最初500円、ワンコインで買える。めっちゃ安いと思って買って、そしたら実は違っていて、次から定期購入で5000円とか。(定期購入の表示が)めっちゃ小さく書いてあるから、「大きく書けや」って(思った)

60代男性:
栄養ドリンク関係だったと思う。1回目は非常に安いんで、ついついポチっとしてしまったら、それが定期の承認も含まれてて、それを解約するのに2~3カ月か。「だまされた」みたいな感じですね

専門家に「トラブルの実態」聞く

街の人に話を聞くと、定期購入のトラブルに遭ったことがある人が本当に多いようだ。「お試し価格」「初回限定88パーセントオフ」「なくなり次第終了」など、購買意欲をそそる宣伝文句が並ぶ。

もちろん全ての定期購入が悪いわけではないが、中にはトラブルになってしまうものもある。そんな定期購入に関して気を付けるべきポイントを、京都府消費生活安全センターの仲澤悦子さんに聞いた。

仲澤さんは消費生活安全センターで、消費者からさまざまな相談を受けているそうだが、定期購入に関するトラブルは増えているのか?

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
そうですね。去年の件数もぐっと上がっていまして、一時期は電話を取れば「定期購入」、置いてもまた「定期購入」というようなことも多かったです。今年も相談件数は高止まりで、同じような傾向が続いています

特に高齢者で大きく増加

まず定期購入に関するトラブルの実態を確認します。なぜ急増しているのか。

▼消費生活センターへの相談は、2018年~2022年の4年間で約3.4倍に急増。去年の相談件数は7万5000件以上あった
▼40代以上の方の相談が増加傾向にある。特に高齢者が大幅に増加、その背景にはスマホ・SNSの普及、広告の巧妙化が考えられるということだ
▼対象の商品も多様化していて、健康食品や美容食品がよく聞かれるが、歯磨き粉、発毛・育毛剤、電子たばこ、ペットフードなどに関する相談もあったそうだ

トラブルに遭う年齢や商品など、多様化しているのですね。

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
4年前の数字、2万件以上ではありますが、まあ少なかったわけなんです。その頃には若い女性、10代~20代の女性をターゲットにした「痩せるスムージー」、「青汁」、「ダイエットサプリ」、それから「豊胸サプリ」といったものが多かったんです。その辺りの方がある程度一巡したと言うんでしょうか、その後業者さんも増えたのか、どんどん拡大していき、ターゲットとしては未成年から80代まで、商品に関しても健康食品などから化粧品ですとか、電子たばこもありますし、スープのもとみたいなのもあり、多岐にわたっています

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
未成年では、脱毛剤ですとか、ダイエットサプリですとか、はいたら痩せるタイツ・スパッツといった話もあります

なぜトラブルに遭ってしまう高齢者が増えているのか?

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:
スマホの普及率が関係していると思います。NTTドコモモバイル社会研究所のスマホ所有率のデータをみますと、2015年に60代は33パーセント、70代は13パーセントでした。今年60代は93パーセント、70代は79パーセントに伸びています。普及率が伸びた時期と、トラブルの相談件数が伸びた時期がちょうどリンクしているようです。高齢者の方は、初めてスマホを持つ方もたくさんいらしたと思いますが、スマホのリテラシーが追いついていない方もいらっしゃるのではないかというのが懸念されます

事例1「小さい文字を読まず」トラブルに

定期購入に関して、実際にあったトラブルの事例です。実際の事例をもとに作成した広告のイメージだ。

▼「誰でも美魔女に」などと書かれ、通常価格1万円以上するスーパー美容クリームが、90パーセントオフの特別価格1480円で販売されていた。
▼「美魔女コースに申し込む」ボタンを押すと次の画面に飛び、「注文を確定する」ボタンの下に小さな文字が書かれている。
▼小さな文字をよく見ますと、「今回のご注文は“定期コース”になります」と書いている。また、「2回目は30日後に2個お届け(3万円)」や、「解約は3回目発送以降のみ可能」などと書かれていた。

このような小さな文字で条件が記載され、トラブルになってしまうケースがあるということだ。

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
このようなご相談は典型的なものかと思います。“1480円”ってこれだけ大きく書いているのに、実際の契約内容はこれではなくて、実は下に小さく書かれたものですと。小さな文字が本当の契約内容であって、1480円というのは何て言うんでしょうか…。非常に引っかかりやすいお話かなという感じがします。大きな画面ですと読めますが、本当にスマートフォンの中の小さい文字なんです。これが大事だと思って注意して読まないと気付きにくいと思います

事例2「知らない間に契約変更」

また別の実例をもとに作成したイメージです。

▼「夢の脂肪燃焼サプリ」「定期縛りなし」「今だけ特別価格980円」という広告を見て、ダイエットサプリの注文をした40代女性がいた。
▼「定期縛りなし」と書いてあって申し込んだのですが、特別割引クーポンを利用したことになって、いつの間にか4回購入が条件のコースに変更されていたという。

これが意図的だとすると悪質に思えるが、このような巧妙な手口が増えているのか?

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
最近多い話かと思います。980円で契約したつもりなんです。その後に、「あなたにお得なクーポンがあります。このクーポンで500円引きです」というようなのが表示されまして、980円は安いけれど、さらに500円安くなるのかと思ってポチッとしてしまうわけですが、そこには長く小さく契約内容が書かれていて、実際は4回購入が条件で、しかも2回目は3個お届けで1万5000円ですよなどと高額な契約に変更させられてしまっている感じです

トラブルを防ぐポイント

▼「初回」の文字があれば、「定期購入」と疑うべし
▼大きい文字より小さい文字を要チェック
▼最終画面をよく読んで、スクリーンショットを撮る
▼困ったら消費者ホットライン「188」に電話で相談

「初回」の文字は疑うべしですね?

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
消費者の方は初回限定とか書いてあると、自分は初回だから安く買えるんだと思って申し込むんですけれども、業者さんからすると初回があるってことは2回目があるよねという理屈になります。「美魔女コース」と書かれていれば、定期コースだって分かってるよねということにもなります

Q.クーリングオフは可能?→Aできません

ここで視聴者から届いた質問を紹介する。

Q.定期購入でもクーリングオフは可能ですか?

京都府消費生活安全センター・仲澤悦子さん:
定期購入に限らず、インターネット通販はクーリングオフはできません。自分から申し込みに行ったことになります。クーリングオフができるのは、訪問販売や電話勧誘販売などいくつかの特別なやり方に限られていまして、いわゆる不意打ち性のある契約方法です。インターネット通販ですと、自分で調べたよね、自分から行ったよねというところもありますので、今のところクーリングオフの対象にはなっていないです

契約や購入の際には十分に気を付けていただき、もしトラブルに巻き込まれてしまったら、消費者ホットライン「188」に相談してほしい。

(関西テレビ「newsランナー」2023年8月30日放送)

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