利用者の低迷などで10年前に閉館した「海の時空館」。“大阪最後の負の遺産”とも呼ばれているこの施設の活用をめぐり、1日から事業者の公募が始まった。 今、その場所は一体どうなっているのだろうか。

「海の時空間」の開業から閉鎖まで

今回、なぜ公募に至ったかという背景には、10年間で7,000万円ほどかかっているという“高額な維持費”がある。この費用は税金なので、この施設を何とか生かしてくれる事業者の募集を今まで2回してきたが、成立せず、今回3回目を迎えた。経緯をまとめた。

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2000年に開業した「なにわの海の時空館」は、大阪市の海の交流の歴史を伝えるために、磯村市長の時代にオープンした。

目玉はガラス張りのドーム型の建物で、建設費は176億円。 そして、その中にある江戸時代の木造船を復元した高さ30メートルの「菱垣廻船(ひがきかいせん)」の製作費は、なんと10億円だった。

しかし、入館者数は右肩下がりで、毎年2億円から3億円の大赤字が続き、橋下徹市長の時代には議会の全会一致で施設の廃止が決まった。

大阪市 橋下徹市長(当時):
こんなバカげた計画がどうして進んでいったのか確認して、公にする必要があるんじゃないかなと思う

しかし2013年に閉鎖してからも、維持管理の費用が発生し続けた。

閉館後の問題

大阪港湾局事業戦略課 石田圭担当係長:
主には電気代がかかっております。海に浮かぶ構造上、海水なども進入してくることもありますので、湧水ポンプであったり、必要最小限の設備関係を動かす動力として電気が必要になってきますので、閉館以降の10年間で約7,000万円となっております

そしてもうひとつ問題となったのは、菱垣廻船をどうするか。

これだけ立派な船を他の場所で展示できないのかと思うが、まず動かすのが無理だ。複雑な作りなので解体すると元に戻すのが難しく、切り刻んでも難しいので、屋根を外して外に出すこともできなくはないが、数億円かかるのでこの場所に置いておくしかないという。

それ以外にも、建物の中には数多くの展示物が残されたままになっている。

3度目の正直となるか

大阪市はこれまでに活用してくれる業者を探すため2回の入札を行ったが、いずれも成立しなかったため、9月1日に3度目となる入札の受け付けが始まった。

2025年の大阪・関西万博の会場、夢洲のすぐ隣、咲洲にあるこの建物。大阪市はなんとしてもチャンスを逃がしたくないと意気込む。

大阪港湾局事業戦略課 石田圭担当係長:
負の遺産と呼ばれている建物を、周辺の地区全体の活性化につながるように事業展開していきたいというのが、我々大阪市の長年の悲願です。3度目の正直で

果たして、元「海の時空館」は有効活用の道が見つけられるのか。この建物は陸地側にエントランスがあり、エレベーターに乗って地下2階まで降り、海の中を通ってドームの中に入っていくという壮大な建物だ。

2013年に1回目の公募があり、この時はこの建物の形を生かしてほしいという思いで、賃貸契約での公募だったそう。そういったこともあり、応募がなかった。

そして、2回目は2020年でコロナ禍だったので、どうしても事業者側も先行きが不透明の中で手を上げるのが難しかったのかもしれない。こちらも応募がゼロで不成立だったという。

今回3回目になるが、いい条件ではないかと思われるのが、(工期の遅れも心配されているが)万博の会場がすぐそこにあり、IR(統合型リゾート)の建設予定地でもあるということだ。そういった意味では、にぎわいスポットとして、前回よりはいい条件がそろっているという印象だ。

市としては今回、そもそも公募の形として、このドームは生かした形にしてくださいねと言っているようなので、中の船をどうするのか。あるいは他の展示物をどうするのかなどは、その事業者に任されるそうだ。

建物のエントランス側には緑の芝生が広がっており、そのエリアは新しい建物を建ててもいいということだ。すでに5つの事業者がもう見学に来ているということで、前向きに検討しているかもしれない。

3度目の公募への大阪市の思いについて、関西テレビ・神崎報道デスクはこのように話す。

関西テレビ 神崎報道デスク:
実は大阪市は他にもいっぱい“負の遺産”というのを抱えていました。それを維新の橋下市長とか吉村市長、松井市長が順番に清算していって、今、現状で維持費がかかって残っているのが、この“海の時空館”だけになっています。維新系の市長としては、何とかして、この最後の1つの片を付けたいという思いがあるので、ここを強力に推し進めているということです

 3度目の正直で公募に手をあげる事業者は現れるのか、注目される。

(関西テレビ「newsランナー」2023年9月1日放送)

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