2023年はコロナが5類に移行し、各地に盆踊りの音色が戻ってきた。大ヒット曲の登場や世界進出の話題など、4年ぶりに盛りあがっている。盆踊りのイマドキ事情を調べた。
愛知で続出!ヒット曲使うワケ
盆踊りというと「炭坑節」など、伝統的な民謡などが連想されるが、愛知県では、個性的な楽曲が多く使われている。
8月5日から行われた「名古屋城夏まつり」では、1985年に発売された荻野目洋子さんのヒット曲「ダンシング・ヒーロー」が使われた。
8月3日から6日に行われた「大須夏まつり」では、1988年に発売された、爆風スランプのヒット曲「Runner」にのせて踊った。
7月21日から8月30日まで豊川市の豊川稲荷で開かれた「YORU MO-DE(ヨル・モウデ)」では、1994年に発売されたTRFのミリオンセラー曲「BOY MEETS GIRL」を使い、DJ KOOさんがアレンジしたことで話題になった。
8月13日に行われた、豊田市の「しもやま夏まつり」では、1972年に発売された、研ナオコさんのヒット曲「京都の女の子」が使われた。

なぜ愛知に盆踊りらしくない曲が多いのか、日本民謡研究会の可知豊親(かち・ほうしん)会長は、2つの理由があるという。
1つは「地元の民謡が少ない」こと。地元の民謡があっても地味で、踊りには向いていないという。
もう1つの理由は「全国的に知られる祭りがない」ことを挙げている。
愛知県に民謡や祭りが少ない理由について、可知さんは「裕福な土地だった」からだという。名古屋城築城で発展した尾張藩は裕福で、人々のストレスがたまりにくく、日頃の“ガス抜き”の場が必要なかったという。
22年にはユネスコ無形文化遺産に…日本が誇る「郡上おどり」

岐阜県には全国的に知られる「郡上おどり」がある。8月15日から始まり、かけ声OK、入場制限なし、31夜開催など、4年ぶりに通常通りの開催となり、お客さんからは「楽しい」「いつもの夏が戻ってきた」と喜びの声があがっている。
400年続く伝統の「郡上おどり」は、2022年11月、「風流踊(ふりゅうおどり)」としてユネスコ無形文化遺産に登録されたことは、大きな話題となった。
秋田の「西馬音内(にしもない)盆踊り」、徳島の「阿波踊り」とともに「日本三大盆踊りのひとつ」に数えられていて、開催期間が「日本一長い」ことでも知られている。(2023年の「おどり納め」は9月9日)
全部で10ある楽曲は、全て国の重要無形民俗文化財に指定されている。

そして今は、世界に広がっている。2022年5月にアメリカ・ニューヨークのマンハッタンや、7月にはブラジル・サンパウロで行われた。
2023年には、8月13日にカナダ・トロントで、11月にはドバイで行われる。
広がっている理由について郡上市の観光課は 「振りがシンプルで、特別な衣装がいらないことが挙げられるのではないか」と説明している。
「かつては出会いの場」意外と知られていない盆踊りの歴史
「盆踊り」の歴史は、和文化研究家でAll About「暮らしの歳時記」ガイドの三浦康子さんによると、かつては「出会いの場だった」という。

平安時代中期に空也上人(くうや・しょうにん)が、仏教を広めようと「歌って踊りながら念仏を唱えた」ことから始まり、鎌倉時代に一遍上人(いっぺん・しょうにん)が全国を練り歩いて広めたといわれている。手を合わせて「南無阿弥陀仏」と唱えながら飛んだり跳ねたりする踊りだったという。
その後、室町時代になると念仏から踊りに重きがおかれ、次第にお盆と結びつき、精霊を慰め送り出す行事「盆踊り」となったとされている。変化があったのは江戸時代で、徐々に“娯楽化”し、男女の出会いの場となっていったようだ。
背景には「満月」が関係していたといわれている。盆踊りは旧暦の7月15日、満月の日に行われていた。当時は照明がなく、月明かりで気分が高揚し、異様な盛り上がりになったようだ。服装は軽装の「単衣の着物」だったという。

その後、風紀の乱れから取り締まりの対象となり、衰退していった。大正時代に再び娯楽として奨励され、次第に“町おこし”の意味合いも持つようになり、今に至っている。
三浦さんは、地域性を活かしつつ、文化として継承してほしいと話している。
SNSでバズったBonDance!ハワイではブルーノ・マーズの曲で
そして、盆踊りはいま、海外でも人気だ。

マレーシアでは、7月22日に盆踊り大会が行われた。参加者は約4万人で、海外で開かれる盆踊り大会としては最大規模だという。
1977年に現地の日本人会などが、日本文化の紹介イベントとして始めたそうで、2023年で47回目を迎え、今ではマレーシアの大人気イベントになっている。
楽曲は「東京音頭」など、日本でもおなじみの民謡が人気だという。

またハワイでもこの時期、「ボンダンス」として親しまれている。19世紀に日本からの移民たちが農作業のツラさや異国の地の寂しさを和らげようと始めたといわれていて、現在では、島内の数十か所で行われている。
ハワイでは、独自進化の末に「ブルーノ・マーズの曲で盆踊りを踊っている」とSNSで注目され、2万を超える「いいね」を集めた。
アメリカの人気歌手ブルーノ・マーズの「24Kマジック」という曲で踊っている。動画を見た人から「意外と合ってる」「みんなリズム感いい」など、驚きの声があがっている。
海外で広まっている理由について、盆踊りを研究する柳田尚也さんは日系移民が文化を根付かせたことや踊りが簡単で気軽に日本文化を楽しめることを挙げている。
(東海テレビ)