総務のリモートワークに関する調査を発表

新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がリモートワークを導入したことだろう。また今回の導入を機に、業務への支障が少なかったなどとして、在宅勤務制度などを設けた企業も出てきている。

一方でサービス業や工場勤務など、リモートワークを導入しづらい業種や部署があるのも事実。こうした中、株式会社月刊総務が「総務のリモートワークの実施に関する調査」の結果を発表した。

同社は、日本で唯一の総務専門誌「月刊総務」を発刊している。1963年6月に創刊し「総務の今を知り、これからの総務を創る」をキャッチフレーズに、総務部門で働く人を中心に、幅広くビジネスパーソンに読んで役に立つ記事を提供。

上場企業、大手事業会社、中堅・中小企業と、幅広い企業が定期購読しているという。

調査は、「月刊総務」読者や「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ら総務担当者320人を対象に、6月16〜18日にWebアンケートで実施した。

そして、この調査で明らかになったのは、 総務がリモートワークがしづらいという実態だった。
 

提供:株式会社月刊総務 「月刊総務7月号表紙」
提供:株式会社月刊総務 「月刊総務7月号表紙」
この記事の画像(7枚)

緊急事態宣言中も総務の完全リモートは1.6%

まず、緊急事態宣言中の総務のリモートワーク実施状況だが、「完全にリモートワークだった」と回答した総務は1.6%

一方で「ほとんど毎日出社していた」が25.3%と、約4分の1の総務がコロナ前と変わらず、出社していた。

なお「交代制で毎日最低でも1人は出社するようにした」(33.1%)「交代制で毎日ではないが週に数回出社した」(40.0%)などと、社内業務に最低限必要な人員だけを出社させるという対応を取った企業が多かったようだ。

提供:株式会社月刊総務
提供:株式会社月刊総務

そして出社した理由だが、「郵便物の対応」が79.7%と多く、「契約書等の押印」(60.3%)、「代表電話の対応」(49.8%)が続いた。たしかに、現状ではどれも出社しなければ難しい業務ではあるだろう。

提供:株式会社月刊総務
提供:株式会社月刊総務

例えば「契約書等の押印」は、最近では「ハンコを押すためだけに出社した」という在宅勤務ができない人の心の声を代弁した広告が話題となったが、6月に内閣府と法務省、経済産業省は「押印についてのQ&A」という資料を公表し、「契約書に押印は必ずしも必要ない」という見解を示し、リモートワークの推進を図っている。

(参考記事:「契約書に押印は必ずしも必要ない」政府が指針…“脱ハンコ”に法整備はいる?法務省に聞いた)  

しかし、現在(アンケート実施時)のリモートワーク実施状況は、「毎日出社している」との回答が48.4%と、緊急事態宣言が解除されたいま、約半数の企業の総務が原則出社に戻していることとなる。

出社している理由は「会社から出社するように指示されたから」が33.1%で、その他として「郵便物の対応」(65.6%)、「契約書等の押印」(51.3%)などとなった。

提供:株式会社月刊総務
提供:株式会社月刊総務

リモートワークで総務の約4割が仕事増

このように、リモートワークがあまり進まなかった総務ではあるが、一方で会社がリモートワークを導入したことで、総務の仕事自体は忙しくなったようだ。

「リモートワークの導入によって総務の仕事は増えたのか?」という質問に対し、「はい」と回答した割合は42.8%。増えた仕事は、”社員のリモートワーク環境整備に関する業務”であり、以下ような業務を行ったという。

・社員のWiFi・テレワークPCの手配
・リモートワークの規程、制度の整備
・人が少ない分、電話や来客の応対が増えた
・郵便物などをPDFで自宅の社員に共有する作業が増えた
・助成金の申請など
・衛生関係業務(マスクの配布、アルコール消毒液の補充等)


他の部署がリモートワークに完全移行し、支障なく行えていたのは、総務がいろいろ手配してくれたおかげもあったのだ。そして、久しぶりに出社するとアルコール消毒液などが設置されていたのも、このような業務があったからだろう。

今回の調査結果から分かったのは、郵送物の振り分けや書類の押印などが業務のため、多くの企業の総務が出社を余儀なくされていたことだ。

今後もリモートワークは続きそうだが、総務はどう変化していくべきなのだろうか? 月刊総務の担当者に話を聞いた。

コロナ禍による環境の変化から調査

ーー総務の業務を教えて

総務部の仕事内容とは一般的に「その他の部署では扱わないが、会社にとって必要不可欠な業務のすべて」。非常に広範囲な業務に携わります。

企業によって、内容はさまざまですが、人事・経理・広報などの業務を兼務していることも少なくはありません。


ーー調査を行ったきっかけは?

2019年11月にも一度、総務に対して大規模調査を行いましたが、新型コロナウイルス感染症により総務を取り巻く環境が大きく変わってしまったため、調査結果が今の状況と乖離してしまいました。そのため、改めて総務の実情を知るべく今回調査を実施しました。

また、9月号(8月7日発売)の特集にて、「管理部門のリモートワークを実現する業務のデジタル化」(仮題)を企画しており、総務が必要としているデジタルツールに関して事前調査を行いたかったという背景もあります。


ーー出社した際の心境について、どのような回答が多かった?

・リモートしている人は、電話対応など嫌なことや面倒なことがなくなることで、そういったストレスがなくなることに満足している。リモートしていない人にしわ寄せがくるので、リモートをしていない人は不平等感が募る。満足している人は、リモートの意味を勘違いしているように思うので、リモートとリモートをしていない人の仕事が平等になるようにする。

・リモートワークありきの報道に違和感を覚える。柔軟な対応が出来ることが良いのであって、すべての業種業態でリモートワークが良いとは限らない。出社することが悪ではない。

などの回答が見られました。
 

「総務は会社にいるもの」との意識を変える必要

ーー調査を行って、印象に残っている回答はある?

・総務部門が出社して対応する、という全体意識は根強く、総務部門からの働きかけや取り組みでは全社浸透にも限界があり、場面においては経営層レベルからの意識変更が求められる。

・備品管理、郵便物の対応、代表電話の対応等従来総務部だけが対応するものとされたものについて、他部署にも対応できる形にしないとリモートワークへの移行は難しいと思います。それと総務部門の責任者の「総務は会社にいつもいるもの」という意識を変えることも必要になると思います。

・社員が一人でも出社する以上、総務の完全リモートワークは不可能かと。

・他部署がリモートしてくれれば、総務もリモートできるが、社員の大半が出勤していれば、必然的に総務がオフィスにいないと問題がでてくる。他部署のリモートを浸透させることが、総務のリモートにつながると思う。

上記のような、総務は会社にいて当たり前と思われているという回答が印象に残っています。


ーー調査で気づいたことは?

・社員からの問い合わせには、Teachme Biz(クラウド型マニュアル作成ソフト・ツール )のマニュアルのリンクを送ることで対応している。離れていても画像や動画で確実に手順を伝えられることが重要になると感じている。

・レンタルオフィスで、郵便物の受け取りもレンタルオフィスのスタッフが対応してくれたので支障なかったが、自社オフィスであれば出社の必要があったと思う。

調査でこのような回答があり、離れていても確実に相手に情報を伝えられる伝達手段(システム)の必要性や、郵便物の受け取りの手間を改めて実感された方がいるようです。


ーー今後、総務の働き方はどう変わるべきだと考える?

「月刊総務」では、企業の課題を解決すべく、業務の効率化や社内環境の改善を能動的に提案し、企業の成長を継続的に支援していく「戦略総務」という在り方を推奨しています。

言われたことを受動的にこなすのではなく、自社に貢献するため、既存業務の改善や変化を生むための新たな仕掛けを考えていく。そのためにも、社員だけでなく経営陣ともコミュニケーションを取り、課題や方向性を把握する。情報収集のために社外人脈を広げるなど、積極的な活動が求められます。

ビジネス界全体でシステムなど手段を変える必要も

ーーリモートワーク導入に総務がいろいろ動いていたようだが、不満の声はあった?

・中小企業において、一般社員である総務課の業務が多すぎる。緊急事態宣言の中、奴隷のように扱われていると感じた。

・在宅勤務の中、営業等の職種は何も仕事を行わず待機、それでも手当は出る。全く納得がいかないと感じた。総務課については専門職とみなして手当等を支給すること。評価を出すこと。

・緊急事態宣言の中、やる気は全く出なくなったし、社員の為に動くという思いもなくなった。
会社がその大切さを認めることだと感じる。

また、「三六協定の捺印をするためだけに出社した、馬鹿々々しい」といった声もありました。


ーー今後、企業は総務の業務内容をどう改善するべき?

調査結果を見るに、いまだ紙ベースの業務が多く、物理的にリモートワークが困難な企業が多いようです。

今後は可能な限り業務のペーパーレス化を進め、特定の誰かがオフィスにいないと業務が進まないといった事態が起きないように努めるべきでしょう。

また、今回、経営陣のITへの関心不足などを嘆く声も上げられました。システムを導入したくても決済をしてくれなかったということです。上層部の意識改革も必要になってきます。もちろん、自社が変わったとしても、取引先がそのままでは結局仕事は変わりません。ビジネス界全体で手段を変える必要があります。


総務の業務は企業によって多岐にわたり、社内でしかできない業務はあるかもしれない。しかし緊急事態宣言中においても「完全リモートワークができた総務は1.6%」という数字から、総務に大きな負担がかかっていたことは想像できる。

日本全体でリモートワークが推進されているいま、「総務は会社にいつもいる」という意識を社会全体で変えることが重要となりそうだ。

【関連記事】
「ハンコを押すために出社した」在宅勤務ができない人の心を“代弁”した広告に共感
コロナ収束後も6割超「テレワークを続けたい」が効率は下がった…今後の働き方はどう変わる?

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。