8月28日、一部で報じられ話題になったのは、家具小売り大手の「イケア・ジャパン」が制服への着替え時間について「従業員に賃金を支払っていなかった」というニュース。

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イケア・ジャパンは、「めざまし8」の取材に対して事実関係を認めた上で、「着替え時間に関しては、関連法令に明文の規定もなく、判例上の基準も曖昧な部分があることから、実務上見解の分かれる点について不明確性をなくし、従業員有利の方向で明確な取扱いを設定するものとしました」とコメント。

その上で、来月から着替え時間を1律5分とし、1日10分間を労働時間に含めるとしました。

「労働時間に含まれる」ことで年間・約4万円の給料アップ?

これまでイケア・ジャパンでは、2006年の開業以来会社指定の制服に着替えて勤務することが定められており、この「着替え時間」は労働時間に含まれていませんでした。

しかし、9月以降は着替え時間を出退勤時各5分とし、合計10分間を1日の労働時間に含めるとしています。
これは、例えば、千葉県船橋市の最低賃金1時間984円で計算すると、週5日で20日間働いた場合、年に約4万円給料が上がることになります。

2000年3月、最高裁は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間とし、着用を義務づけられた制服などへの着替えも労働時間に当たるとの判断を示しています。しかし、実際「着替え時間も労働時間」とする企業はそれほど多くありません。

これについて、日常的なトラブルから大規模な案件まで幅広く扱っている、弁護士の三平聡史氏はこう話します。

三平聡史弁護士
三平聡史弁護士

三平聡史弁護士:
職場によって、制服が必須なところなのか、あるいは着替えにかかる時間、上着一枚なのかどうかとか、いろんな状況があるので、基準として確実に判別できる基準は作れないというのはあると思います。色々な見解はあるんですけど、ある程度制服は必須になっていて職場で着替えることになっていた場合は、さすがにそれは勤務時間にカウントするという方向性が強いと思うので、なぜいままで、このままになってしまっていたのかなと。

「労働時間」線引きのポイントは?

それでは、どのようなケースが、労働時間に含まれるのでしょうか?

例えば、帽子をかぶるだけ、エプロンをつけるだけ、ジャケットを羽織るだけなど、ほとんど時間が拘束されない着替えは、労働時間に入らないことが多いです。

また、出社時にスポーツウェアなどを着て出社し、会社でスーツに着替えるなどは、会社の命令ではなく個人の都合のため労働時間には入りません。ただし、会社規定の制服に着替える場合は、労働時間に入ります。

休憩時間に外出するために着替える場合でも、医師や看護師など衛生面から会社命令が出ている場合は労働時間に入りますが、個人の判断の場合は入りません。

三平聡史弁護士:
一番根本的なところは、会社の指揮・命令下にある。会社に拘束されているかどうかで、例えば更衣室で着替えるというのがルールになっていれば、明確にルールにはなっていないけれども、みんながしているという状況であれば、労働時間に入るという方向になりますが、自由であるという場合は、そうじゃなくなってくると。
細かく考えていくと職種によって中間的なものはいっぱいあるんですけども、大きいところはそういう所です。

(めざまし8 8月29日放送)