2023年8月24日、ついに開始された福島第一原発「処理水」の海洋放出。処理水は海底トンネルを通って、沖合1kmにある放出口から海に流された。タンクには134万トンにも及ぶ処理水が保管されていて、全ての処理水を放出するには30年程度かかるとされている。

各国で反発の動き

日本の処理水の放出開始を受け、各国では反発する動きがあった。「福島汚染水放出、反対!」と、声をあげる若者。

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韓国・ソウルでは処理水の放出に反対する市民団体の大学生メンバーが日本大使館のあるビルに侵入。大学生16人が逮捕された。
また中国政府は、これまで10都県を対象としていた日本産水産物の輸入禁止を処理水が放水された日から全国に拡大させた。

中国外務省の会見:
日本が汚染水の放出を強行するのは、正当ではなく、合理的でもなく、不必要なものだ。それは極めて利己的で無責任な行為だ

この事態を受け、福岡の水産関係者の間でも動揺が広がっている。

中国の「全面禁輸」影響は大きく

福岡市中央区の「長浜鮮魚市場」は、年間約300種類の豊富な海の幸を扱う全国屈指の鮮魚市場だ。

「福岡中央魚市場」常務取締役・廣川一志さん:
この魚は輸出向けです。中国の人たちが大好きな魚。マナガツオ、超高級魚。中国の人たちはもっぱら、そのまま大きい油の鍋で、ばーっと揚げて、ダーンと大皿に出すんですよ

福岡中央魚市場の廣川一志さんは、午前3時から始まるセリを前に不安な表情を隠せない。

「福岡中央魚市場」常務取締役・廣川一志さん:
全面禁輸のあおりを食って安くなると思われる宗像・鐘崎のレンコダイ。結局、輸出向けの人が買わないから、値段が安くなっちゃう。中国には高くても食べたいという人が1億人くらいいるので、中国が輸入できなくなると日本人が食べる値段になっちゃう

仲卸会社の廣川さんによると最近では、マナガツオやタチウオ、レンコダイなどの多くの魚が中国に輸出され、3倍近い価格で売買されることもあるという。しかし、今回の中国の「全面禁輸」の影響で価格が安くなる恐れもあるのだ。

この先どこまで影響が出るのか…

午前3時、処理水放出後初となるセリが始まった。威勢のいい掛け声が飛び交うが―。

「福岡中央魚市場」常務取締役・廣川一志さん:
価格は半分ぐらいかな。やはりレンコダイは少し安いですね。きのうの朝はまだ全面禁輸が発表されてなかったじゃないですか。きょうから、ぽんとやられるとやはり困りますよね

セリには中国の仲買人も顔を出していたものの、買う動きは見られなかった。

「福岡中央魚市場」常務取締役・廣川一志さん:
東北の一地域にALPS処理水を流したというのが、これだけ日本中に影響があるということですよね。きょう、すでにどうかしたら値段が1日で3分の1とか半額になっている魚種もあるから。その目の前の漁師さんだけでなく日本中の漁師さんに影響があるということ

廣川さんは、放出は始まったばかりでこの先どこまで影響が出るかは不透明だと話す。

「福岡中央魚市場」常務取締役・廣川一志さん:
国が本当に安全なんだというのを訴えて、世界中の人が分かってくれればいいが、30年ってあまりに長いので、いままで10年間かかって、いろんな説明しても納得していただけなかったので、どうなるのか、ちょっとわからない

中国の動きについて岸田文雄首相は「外交ルートで中国側に対して即時撤廃を求める申し入れを行った」と述べた。事故から12年余りを経て、動き出した処理水の海洋放出。風評被害対策をどう進めていけばいいのか。福岡でも懸念が広がっている。

(テレビ西日本)

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