通称「本マグロ」とも呼ばれるクロマグロ。博多湾で全長約1.5メートル、重さ約150kgのクロマグロが見つかった。専門家によると、博多湾で発見されるのは異例だということだ。

海岸に「大きな魚が落ちていた」

江川夕月記者:
海水浴場で、クロマグロが打ち上がっているのが発見されました

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2023年6月10日早朝。福岡市西区の大原海水浴場で、地元の人が生きた状態のクロマグロを見つけた。

クロマグロを見つけた人:
何か、打ち上がっているような影が見えた。スナメリとかではなく、大きな魚が落ちていた。クロマグロと知って信じられないというか、まさかこんな大きい魚は…、初めて見た

専門家によると、クロマグロは太平洋や東シナ海などに生息していて、夏にかけて産卵のために日本海にやって来るが、博多湾で発見されるのは異例だという。

近畿大学水産研究所・升間主計所長:
今回、見つかったのは「大人」。壱岐とか対馬の方でクロマグロの養殖をいっぱいやっている。そのいけすの中にいたマグロが、網を突き破って逃げて海水浴場に打上げられたと思う

福岡県の漁獲量 10年で3分に1に

今回、博多湾で見つかったクロマグロは養殖ではないか、ということだが…。深刻な地球温暖化が叫ばれる中、すぐそばの福岡の海で、いま何が起きているのか。博多湾の漁師の1日に密着し、実情に迫った。

博多湾で底引き網漁を行っている漁師の森穣司さん。引き上げた網の中には、この日の狙う魚の1つ、アナゴが入っている。

漁師・森穣司さん:
博多湾のアナゴは、脂がのっていておいしいですよ。だけど昔に比べると相当減ったと思います。やっぱり、夏場の水温の上昇などでおられん(居られなくなる)のかな

一方、シャコは箱一杯にあがっているが、それでも…。

漁師・森穣司さん:
シャコもこの20年くらいでみたら、とれる量は10分の1くらいに減ったんじゃないですかね。昔は、ほんともう捨てるくらいにとれよったっていうけど…

多くの種類の魚は年々、漁獲量が減っている。福岡県の漁獲量の推移を見ると、この10年だけでも5万3,000トンから1万6,000トンへ、3分の1以下に激減。50年のスパンで見ると、25分の1以下に減っている深刻な状況だ。

漁師・森穣司さん:
年々、ひどくなりよるっす。勘とか経験だけじゃ対応しきれない、異常気象みたいなものもあるとは思うっすね

“異変”…急に網にかかるようになった魚も

多くの種類の魚が減っている一方で、昔はとれなかった魚が網にかかるという異変も起きている。

漁師・森穣司さん:
これ、タチウオっすね。僕が漁師になった頃とかでは、底引き網漁で網にタチウオが入るってことは、なかったすね

本来なら、九州でも南側の温かい海を好み、博多湾ではほぼとれなかったというタチウオ。この5年ほどの間に、急に網に入るようになったという。

そして午後11時。この日、最後に引き上げた網にかかっていたのは…。

漁師・森穣司さん:
カブトガニっす。すごいっしょ

2億年も前からこの地球上に生息し、「生きた化石」とも称されるカブトガニだ。

漁師・森穣司さん:
これこそ、その環境に、環境の変化に耐えてきた生物かなって。こんだけ自然環境の変化が、ほんと数年スパンで変わってくると、自分たちの食卓、食べ物とかも変わって来るのも、まあ近いとは思うっすね

(テレビ西日本)

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