エンゼルス大谷翔平選手(29)の右肘内側側副靱帯損傷が判明し、「投手として今季絶望」という現実に、日米に衝撃が走りました。SNSでは「俺の靱帯」がトレンド入り。

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SNS上では「私の靱帯をあげたい。回復を心から願います」「大谷の怪我悲しいな。酷使しすぎたのかな」など、悲しみの声が続々とあがりました。

8月24日、エンゼルスのミナシアンGMは「画像で検査をして(右肘の靱帯に)損傷があった。ショウヘイは今シーズンもう登板しない」と発表しており、今後の試合への出場は毎日の様子を見ながら。全治については不明で、手術の判断はまだだと話しています。

荒木大輔氏が語る「大谷選手の右肘靱帯損傷」

今後、大谷選手はどのように治療しながらプレーを続けていくのでしょうか?
「めざまし8」は、自身も過去に同じけがをし、靱帯を再建するトミー・ジョン手術を受けたことがある、元プロ野球選手で野球解説者の荒木大輔氏に話を伺いました。

元プロ野球選手・野球解説者 荒木大輔氏
元プロ野球選手・野球解説者 荒木大輔氏

――ピッチャーにとって大事な肘の「靱帯損傷」、どう受け止めますか?
野球解説者 荒木大輔氏:

僕らもファンの方と同じように、すごくショッキングで。(大谷選手が)毎日のように出続けることで、かなりの負担がかかっていたと思うので…。「故障はしてほしくないな」とあまり口に出したくはなかったんですよね。言いたくなかったんですけれど…。そういうことが現実として起きてしまったこと、ものすごくショックで。どうしようもできない感じです。

靱帯損傷とは?「筋肉の疲労の蓄積が影響」

大谷翔平の右肘靱帯の損傷とは、どのような状態なのでしょうか?
まず靱帯とは、骨と骨を結びつけている組織。関節の動きを安定させ、外側に反る動きを制限する役割をしています。帝京大学医学部附属病院の石井桂輔医師によると「筋肉の疲労で損傷しやすくなる。ゴムを何回も伸ばすと切れるのと同じような状況」だということです。

――荒木さんも現役時代に右肘靱帯を損傷したということですが、具体的に痛みなどはあるのでしょうか?
野球解説者 荒木大輔氏:

個人差があるとは思うんですけど、僕自身はボールを持ったときになったということは全く分からなかった。投げながら力が入りにくいなとか、ちょっといつもと違う腕の使い方になっているということはあったんですが、その後登板間隔を空けている間に回復するものが、なかなか回復しなく、次の登板に支障が出たということがあった。その時にパチンとやってしまったということはなかったです。
おそらく蓄積が一番だと思います。例えばアキレス腱を切ってしまったとか肉離れをしてしまったときに、反発的に瞬間的に切ってしまったとかいうことではないと思います。

靱帯は筋肉の疲労で損傷しやすくなるということですが、大谷選手は今シーズン128試合中126試合に出場。ここ1カ月のスケジュールもダブルヘッダーの日があったり、7月28日、8月4・10・24日は二刀流で出場するなど、過密スケジュールをこなしていました。

大谷翔平選手 7月末から8月末の出場スケジュール
大谷翔平選手 7月末から8月末の出場スケジュール

過密スケジュールの中、サインは出ていた

この過密スケジュールの中で、「すでに大谷翔平の体からサインは出ていた」と荒木さんは語ります。

7月28日のタイガース戦2番DHで出場した大谷選手ですが、4回表第3打席、38号ホームランを打った後、ベースを回る際に左腰辺りを押さえその後、途中交代しています。

野球解説者 荒木大輔氏:
このときにも自分でしっかり会心の打撃をしているんですけども、違和感を持っているしぐさが出ていました。

野球解説者 荒木大輔氏:
この大谷選手の場合は腰ですけれども、腰をやることで体のバランスって、少しずつズレますよね。例えば体のゆがみがちょっと出てしまうとか何かしてしまうと、ボールを投げるときにいつもと同じ位置で投げるためには他で補おうとするので、余計な負荷が肘にかかる。

例えば自分の場合だと、肉離れをあるキャンプのときにしてしまったんです。ちょうど肘をその年に初めて手術したんですけど、そのときにトレーニングしてもらっている先生とかに話を聞いたら、補おうとすると腰の位置とか肩甲骨の補う動きだとか、そういうところによって肘に負担がかかるというのを言われたことがあります。大谷選手も同じような感じだと思います。

さらに、8月4日、二刀流で出場したマリナーズ戦4回に指のけいれんを訴え降板しています。

野球解説者 荒木大輔氏:
しっかりとしたサインとして出ているんじゃないかなと。その時に肘の患部に痛みということがなくても、指のどこかとか腰とかいろいろなところに体の方で悲鳴をあげているというか、本人にサインを送っていたんだと思います。

――8月24日に投げたのは26球。制球が定まらず外に抜けるような感じがありましたが?

野球解説者 荒木大輔氏:
ボールが抜けてしまうというのは、体がしっかり使えていなくて体重移動もできていないので。そこで補おうとすると、腕を強く振ったり、違う位置で投げなければいけないということにつながりますので。必要以上に負担がかかるのかなと思います。

球速としても、24日は最速で平均球速より約6キロ遅い152㎞でした。
2018年に故障をした際にも、球速に異変がありました。このときは初回が159㎞で、3回には143㎞と一気に下がってしまっていました。その後4回に降板しています。

野球解説者 荒木大輔氏:
大谷選手の場合は、何か体の不調が起きる前って必ずコントロールの乱れがすごく出てきて。引っかけてしまうボールが出たり、とんでもないところにすっぽ抜けていってしまうような力ないボールがいくということが結構見られるので、こういう時は危険なサインなのかなと思います。

2018年にも同じけがを…今後は?

2018年、異変があったこの2日後に今回と同じ右肘靱帯損傷が発表されました。
大谷選手はシーズン終了後に「トミー・ジョン手術」を受け、219日ぶりとなる2019年5月に打者として復帰しています。投手としては693日ぶりとなる2020年7月に復帰後初登板、二刀流復活ということになりました。

大谷選手の今後はどうなるのでしょうか。
エンゼルスのミナシアンGMは「見ての通りバッティングはできる。彼は第2試合でバッティングをした」と話しています。
靱帯損傷は軽傷・中等傷であれば手術をしない保存療法という選択肢もありますが、重度で肘の不安定さが強い場合など重傷であれば、手術ということになります。

野球解説者 荒木大輔氏:
画像で見ればある程度の損傷の度合いが分かってくると思いますが、後は本人の筋力でどこまでカバーできるかというところも非常に大きいと思います。

(「めざまし8」8月25日放送より)