熊本・合志市の国立療養所・菊池恵楓園で、小・中学生と保護者がハンセン病問題を学ぶツアーが開かれた。参加者たちは入所者から話を聞いたり、園内の施設を見たりして、誤った隔離政策の歴史などを学んだ。

ハンセン病と国の誤った隔離政策

菊池恵楓園で学ぶ旅
菊池恵楓園で学ぶ旅
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ハンセン病問題について正しい知識を身につけてもらおうと、7月25日に熊本県が開いた「菊池恵楓園で学ぶ旅」には、小・中学生や保護者あわせて43人が参加した。

ハンセン病とは、らい菌に感染することで起こる病気で、長い間「恐ろしい伝染病」「遺伝病」などと誤解されていた。

いわれなき差別を受けてきた元患者たち
いわれなき差別を受けてきた元患者たち

特効薬が開発され、治る病気になったにもかかわらず、国は隔離政策を進め、「らい予防法」が廃止される1996年まで、元患者たちは隔離生活を強いられ、いわれなき差別を受けてきた。

菊池恵楓園の入所者は、最も多かった1958年には1,700人を上回っていた。

どのような差別を受け暮らしてきたか…

歴史資料館の様子
歴史資料館の様子

参加者たちは、2022年5月にリニューアルオープンした歴史資料館を見学し、隔離された入所者たちがどのような差別を受け、どのように暮らしてきたのかを学んだ。

参加者:
強制的に、患者の意見を聞かず療養所に入れたからひどいですね、国の政策が

参加者は…
参加者は…

参加者:
苦しいこともたくさんあった。でも、やっぱりいろいろな人に自分たちのことを伝えたいという気持ちもあって。きつくても自分たちのことを分かってもらいたいなという気持ちは、私たちも知っておかないといけないと思いました

自らの経験を話す志村康会長と太田明副会長
自らの経験を話す志村康会長と太田明副会長

また、入所者自治会の志村康会長と太田明副会長が、自らの経験を参加者たちに話をした。

入所者自治会 志村康会長
入所者自治会 志村康会長

入所者自治会 志村康会長:
1番下の妹が生まれて間もなく私は恵楓園に入所した。母親が亡くなって初めて恵楓園に来てくれた。自分の妹でありながら60年も70年も会えない。そういう社会を私はおかしいと思う

入所者自治会 太田明副会長
入所者自治会 太田明副会長

入所者自治会 太田明副会長:
隔離の場所が生活の場所になった。ほとんどの入所者が家庭を持つことはできなかった。十分な教育も受けられなかった。さまざまな壁がありました。しかし、そういった壁をなんとか突破して、これまで生きてきた

子どもたちは、一生懸命メモをとるなどして話を聞き、参加者たちは園内を見学した。

「差別をまた生まないためにも…」

歴史資料館の原田学芸員は“隔離の壁”を前に、参加者に当時の様子について説明した。

社会と断絶…“隔離の壁”
社会と断絶…“隔離の壁”

歴史資料館 原田寿真学芸員:
コンクリート製の壁が建てられています。外から見ると非常に不気味な何かよくわからない壁が続いている施設に見えたそうです

歴史資料館 原田寿真学芸員:
この壁は療養所の周囲に建てられていましたが、刑務所のような場所なのかと、ハンセン病の療養所とはすごく特殊な場所、恐ろしい場所という印象を強めました

規則に違反した入所者を収容する監禁室
規則に違反した入所者を収容する監禁室

参加者は、社会と断絶されていた当時の状況を象徴する“隔離の壁”や、規則に違反した入所者を収容する“監禁室”、“納骨堂”などを見て回り、「亡くなっても故郷に帰れないのはとても悲しいことだし、差別をまた生まないように学ぶことはとても大事なことだと思う」と話してくれた。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
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