冷凍技術が進化する中、福井の水産加工会社が「冷凍ずし」の開発に成功した。わずか4分で握りたての味を再現。漁獲量が減少する中、加工食品という新たな分野に挑戦する水産卸会社を取材した。

温めるだけで“握りたて”のおいしさに

福井ブランドのサーモンや国産マグロなど、北陸近海で捕れた海の幸を使ったおすし。

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一見普通のすしに見えるが、すべて冷凍食品だ。開発に成功したのは、福井市に本社を置く「鮮魚丸松」だ。

原渕由布奈アナウンサー:
これはすごい!お魚の部分はすごくしっとりしているのに、ご飯はふんわり軽い食感。さっきまで冷凍されていたおすしとは思えない、職人さん作りたてのような味です

ネタの部分はレンジの熱で固まることなく、生の柔らかさを残した状態で解凍できる。コメも冷えて固まることはない。おいしさの秘密は、開発に1年かかったという独自の技術にあった。

原渕由布奈アナウンサー:
4分間、解凍した巻きずしですね

五島輝幸社長:
触ってもらうと、コメは温かいけど、中のネタが冷たいのが分かると思う

その秘密は、シャリ飯だけ「熱の伝導率」を上げることにある。ご飯を炊く水の中に大豆由来の成分を溶かしておくことで、コメをコーティング。するとコメとコメの間に隙間ができることで、熱伝導率が高まるという。その結果、ネタまで熱は伝わらず、シャリだけがほどよい温度で食べられるように解凍できる。

加えて、2022年2月に導入した特殊な凍結機にもおいしさの秘密があった。

五島輝幸社長:
プロトン凍結機と言って、うちの凍結する肝となる機械。この凍結機を使って、魚のドリップ(うま味成分などが入った組織液)が出ない凍結をしている

冷凍すしを作る肝となるプロトン凍結機
冷凍すしを作る肝となるプロトン凍結機

一気にマイナス40度で冷凍できる特殊な凍結機を使うことで、冷凍してもうま味や風味、色味を損なわず保存することを可能にしているのだ。

目指すは“冷凍ずしのシェア1位”

会社が加工品開発に乗り出した背景には、乱獲などで国内の漁獲量が年々減少しているからだ。

元々水産物の卸販売がメインだったが、漁獲量に大きく左右されない加工販売にシフトチェンジした。販売している冷凍食品の売り上げは好調で、会社全体の売り上げは2022年に比べて1.5倍余りに増える見込みだ。

五島輝幸社長:
僕らは今、魚屋というより「水産ベンチャー」として売りに出ている。卸、物販、小売り、加工、飲食から直接消費者に売っていくという1次、2次、3次産業を全部足して6次産業と言うが、それを自社グループの中で他社に依存せず回していくことが目標

凍結機と加工施設を備えたことで、豊漁の時に安く良い品を大量に仕入れ、保存することが可能になった。今後は認知度が低い冷凍ずしのマーケットをさらに拡大したいと意気込む。

五島輝幸社長:
まずは冷凍ずしのマーケットを作って、そこにファーストペンギン(先行者利益)として、うちの商品が1番にシェアを取る流れに持って行きたい

冷凍のすしは鮮魚松丸のホームページや店舗で販売しており、にぎりずしは12貫で税込み3,000円、巻きずしは16貫で税込み3,000円で購入できる。

(福井テレビ)

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