富山・南砺市の井波彫刻総合会館で、「プラモデル」の個展が開かれている。個展を開いた松井康真さんは、南砺市出身で、東京の全国ネットのテレビ局でアナウンサーをしていた。会場には“テレビマン”としての思いを込めたジオラマ作品も展示されている。

昭和40年代のプラモデル屋も再現

南砺市「道の駅井波」のすぐそばにある、井波彫刻総合会館の展示室の一角に、うず高く積み上げられた箱、箱、箱。その数、約600点以上もある。

その数600点以上…!貴重なプラモデルの山
その数600点以上…!貴重なプラモデルの山
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パッケージを見てみると、飛行機に、城やバイク、戦車に楽器とさまざまだ。

これらは全て、今では入手困難になったプラモデルで、持ち主は、井波出身の現在はフリーアナウンサー、松井康真さんだ。

アナウンサー・松井康真さん:
昭和40年代のプラモデル屋さんの店先を再現しました

高くて大きいものは手の届かないところにあった
高くて大きいものは手の届かないところにあった

アナウンサー・松井康真さん:
60歳前後の方は記憶があると思うが、高くて大きなプラモデルは、おもちゃ屋さんの手の届かないところにあって、指をくわえて見ていた。私が実際に見ていたのはこの「タイガー1(ローマ数字の1)」。当時は2,200円でした

大人が楽しむプラモデルの魅力を発信

3月に東京のテレビ局を定年退職し、生まれ育った井波の魅力を全国に発信したいと、今は富山と東京の2拠点生活を送っている。

この個展も、4年ぶりに世界各国の彫刻家が集い公開制作を行う「南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ」の盛り上げに一役買ってほしいと、地元の同級生の声かけで実現した。

富山で過ごした子ども時代から「プラモデル」に魅せられ続けてきた松井さん。

アナウンサー・松井康真さん:
趣味は?と聞いたときに、「油絵」と答えると「素敵な趣味ですね」と言われる。ところが、60歳で「プラモデル」と言うと、「子どものおもちゃをまだやってるの」とみんな思う。プラスチックを素材にした芸術とは言わないまでも、“プラモデルという趣味の市民権”を得たい

「老眼になっても、あの頃の憧れを持ち続けたい」。同じ思いを持つ、俳優・石坂浩二さんの呼びかけで模型サークルの発起人となり、大人が楽しむプラモデルの魅力を発信するほか、テレビ局員時代から「模型史研究家」としても活動、本の出版にも多く携わってきた。

今回は、商品化した模型メーカーさえ持っていない貴重なコレクションのほか、自身が製作したジオラマも展示している。

その中で、テレビマンを彷彿とさせる作品がある。

「間近で見た人は私しかいない」記憶を形に…

関東・東北豪雨で決壊した鬼怒川(茨城)を再現
関東・東北豪雨で決壊した鬼怒川(茨城)を再現

今から8年前(2015年9月)に発生した関東・東北豪雨。茨城県で決壊した鬼怒川を再現したジオラマだ。

アナウンサー・松井康真さん:
再現するにあたっては気持ちの良いジオラマではない。屋根の上に老夫婦が犬を抱いて助けを待っている。真上でずっと実況した。これを間近で見た人はおそらく世界で私しかいない。災害の記憶を残そうと作った

当時、ネット上で報道ヘリが救助にあたる自衛隊機の近くを飛んでいるという事実とは違う情報が流れたというが、地上30メートルで救助活動する自衛隊機に対し、その様子を見守る報道ヘリは、さらに上空500メートルを飛んでいることも正確に再現している。

災害の啓発の意味も込めて製作

今年7月の大雨による土砂災害で市議が亡くなった
今年7月の大雨による土砂災害で市議が亡くなった

アナウンサー・松井康真さん:
富山県は基本的に水害の被害はほとんどなかったが、南砺市でも(7月に)大雨の土砂崩れで市議が亡くなった。いつ何が起きるかわからない。災害の啓発の意味も込めて作った

アナウンサー・松井康真さん:
映像はその時に大変だなと思うが(関東・東北豪雨から)1年、3年たち、もう8年たつ。その時のジオラマを見て、ああ、そうだったなと思い出してもらえる

テレビ局のアナウンサーとして目の当たりにした大水害。
これまで、大きな災害が少なかった地元、富山の人たちに見てもらうことで、日ごろの備えのきっかけにしてほしいと話す。

松井さんの初めての個展は、9月17日まで開かれている。

(富山テレビ)

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