ブライダル補助金のナゾ
森雅子首相補佐官がSNSに投稿した「ブライダル補助金」についてネット上でいろいろ盛り上がっている。
森氏の投稿は、このブライダル補助金が、日本少子化対策のためのものと私には読めたのだが、実際には外国人に日本に来て結婚式を挙げてもらうなど、ブライダル産業への補助金らしい。
この記事の画像(4枚)別にこれが日本の少子化対策と関係なくても、インバウンド消費を増やし、コロナで傷んだブライダル産業を建て直すということで、政策的な整合性はあるのだろう。だからこそ経産省はこのブライダル補助金を出すことを決めた。
確かにインバウンド消費は日本にとってありがたい。先日発表された第2四半期の実質GDP(国内総生産)は、年率換算で6%増だったのだが、個人消費が物価高などでマイナスだったのに対し、インバウンド消費はなんと8%増の3.8兆円で大きく貢献した。円安で輸出も好調なので日本経済は「いい感じ」になってきている。
我々はなんのために税金を払うのか
政府がブライダル産業に補助金を出す、外国人が日本に来て結婚披露宴をしてお金を落とす、ブライダル産業が税金をたくさん払ったり、消費したりして日本は金持ちになる、という構図だ。
だが税金というのはこういう事のために使うものなのか。我々は働いてお金を稼ぎ、税金を払う。それは国民の義務だ。その税金が国を守る防衛費や、困った人のための社会保障費、子供への教育費などに使われるのはわかる。また上下水道などの公共インフラ、災害対応にも使われるべきだ。だが政府の金儲けのために私たちは税金を払わなければいけないのか。
たくさん税金を集めて、政府がお金を儲けるより、最初から税金を少なくすれば、個人で自由にお金が使えるし、政府も無理してお金を儲ける必要がないのではないのか。
日本は優秀な官僚によって作られた極めて暮らしやすいが、規制の多い窮屈な国だ。言い換えれば自由な資本主義ではなく社会民主主義的な国だと思う。
政治家や官僚の投資能力を信用する?
たとえば雇用調整助成金というシステムがあって、経営が苦しくて給与が払えない会社の従業員は雇用保険から給与を支給される。これは一見素晴らしいシステムに見えるのだが、我々会社員は、強制的に徴収される雇用保険料から、経営を失敗した会社の従業員の給与を払わされている、という事なのだ。なんかおかしくないか。
雇用保険を「なし」にして、経営が苦しい企業は倒産した方が資本主義的には健全ではないのか。同様にブライダル産業が不要なら市場から退出すればいいし、インバウンド需要があるのなら、たとえば規制を緩和するなりすればいい。なぜ我々の税金をブライダル産業にあげなきゃいけないのか。
一つ言えることは、政治家や官僚に国家の基礎部分を管理してほしいとは思う。だが彼らに投資まで頼んではいない。投資というものは自分の金でするものであって、他人の金を黙って使っちゃイカン。我々はブライダル補助金などのために税金を払っているのではない。政府はこのような補助金は直ちにやめてほしい。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】