8月8日に発生したハワイ州マウイ島の山火事。
死者は110人となり、発生から1週間経過した今でも多くの人と連絡が取れないなど、被害の全容は明らかになっていません。

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住民「死ぬと思った…」避難時もサイレンは鳴らず?

いまだ出火の原因は分かっていない山火事。
切れた送電線が出火原因になったとの見方もある中、火災が発生した当日、住民が撮影した映像には強風で送電線が切れ落ち、その周辺から火が燃え広がる瞬間が映っていました。

ラハイナの住民:
送電線が落ちて、枯れ草に引火した。風に吹かれて、あっという間に燃え広がった。

めざまし8は、ラハイナに住んで13年、ラハイナ本願寺で僧侶をしている広中愛さんに当時の状況を取材。広中さんは強風の物音で目が覚め、2日分の着替えとパスポートを持って妻と4人の子供と避難したといいます。

浄土真宗本願寺派 ラハイナ本願寺 僧侶 広中愛さん:
全ての想像を上回る風と火の速さ。失った物が大きすぎるという感じですね。

浄土真宗本願寺派 ラハイナ本願寺 僧侶 広中愛さん:
走って帰って、ご本尊を取って一緒に避難することができないかと思って、そうしたんですけど、もうこれは残念だけれども、俺行ったら死ぬと思いまして。

お寺や自宅は、この山火事ですべて焼失してしまったといいます。避難していたときの状況は…

浄土真宗本願寺派 ラハイナ本願寺 僧侶 広中愛さん:
火はあるけどサイレンはならない。(以前は)警察がゆっくり動きながらその退避を促すんですけど、今回はそれがなかった。

避難を促すものがなかったという、行政や警察の対応…。行政の対応に問題はなかったのでしょうか。

山火事発生から1週間 いまだ延焼続く地域も

自然が豊かで「渓谷の島」と呼ばれるマウイ島。ダイビングの他、巨大な噴火口を見られる国立公園もあり、コロナ前には日本人が年間約5万7000人が訪れる島です。
今回被害が特に大きいラハイナはマウイ島西部にあり、人口約1万3000人が暮らす観光地としても知られている美しい町で、中心部は歴史保存地区に指定されています。

今回の山火事での、焼失被害の現状はどうなっているのでしょうか?

一番広範囲で焼失被害が出たのがラハイナで878万㎡焼失。現状、85%鎮圧されていますが、延焼が続いています。カアナパリ周辺も4047㎡焼失しましたが、現状は鎮火。キヘイ周辺も今は100%鎮圧されています。
内陸のアップカントリーやクラ周辺では併せて274万㎡が焼失、鎮圧されたのは75%で、ここでも延焼は続いています。

山火事発生から1週間たってもいまだに鎮火できない理由は?森林環境、火災に詳しい岡山大学の吉川賢名誉教授に聞きました。

岡山大学 吉川賢 名誉教授
岡山大学 吉川賢 名誉教授

岡山大学 吉川賢 名誉教授:
マウイ島全体がすごく乾いていたんですね。そして火災が起こった。火災が起こった後も雨は降っていないので、火災が起こる前と同じ状態が続いている。大きな火災が起こると再燃する可能性はかなりあるので、雨が降ったりして全体が湿潤になるまでは、また燃え始める危険はずっと続いていると思います。

島の中でも複数の地域が燃えていますが、火災が起こった原因は複数考えられるのでしょうか?

岡山大学 吉川賢 名誉教授:
原因はこれからしっかりと調べていかないと分からないと思いますが、強風が吹いて燃える物がたくさんあったということが、大きな山火事を引き起こした原因としてあると思います。

一度「鎮圧」宣言も…山火事拡大 見えてきた問題点

アメリカで過去100年で最大の被害となった今回の山火事ですが、発生当時の自治体の発表に気になる点がありました。

8月8日に、山火事が発生。マウイ郡の公式HPによると、夜中にマウイ島中部のクラで山火事発生したとの通報。
そして、午前9時55分マウイ郡の公式HPで山火事を100%鎮圧と宣言。
しかし、その後 火事が広がり、午後9時45分にマウイ郡長が非常事態宣言を発令しました。

山火事が拡大する前に一度、鎮圧が宣言されていたのです。

そして、非常事態宣言が発令された40分後の午後10時25分に人工衛星が捉えた画像を見ると、
同時多発的に、かなり燃え広がっていることが分かります。

なぜ、一度当局が山火事は100%鎮圧したと発表したあと、燃え広がったのでしょうか?

岡山大学 吉川賢 名誉教授:
この火災が起こる前からマウイ島全体がかなり乾燥していて、それに、枯れ木、枯れ草がたくさん増えている状態だったので、どこでも燃える状態になっていた。そういうところでは同時多発的にたくさん火災が起こる可能性があります。ちょうどハリケーンが来ていたということですので、強風で飛行機などを使った状況の把握がなかなかできなかったということで、どれだけどこが燃えているかという情報の錯綜(さくそう)があって判断ミスが起こったということは考えられます。

緊急事態を知らせる警報機がハワイ州には400基、マウイ島だけでも80基あります。しかし、ハワイ州の担当は「警報機が発動された記録はない」と話しています。

「火はあるのにサイレンは鳴らなかった」という複数の住民の証言。今後の当局の調査が待たれます。

(めざまし8 8月17日放送)