山形・鶴岡市加茂地区に計画されている風力発電事業について、日本野鳥の会・山形県支部などは8月15日付けで、希少な鳥たちに深刻な影響があるとして、民間の事業者に事業の中止を要請した。

”未来がない”風力発電計画の中止を要請

日本野鳥の会・山形県支部の細谷千鶴子支部長は、風力発電事業に危機感をにじませながら次のように語った。

日本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長
日本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長
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本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長:
この地区周辺の広い範囲から鳥の姿が消えてしまうのではないか、少なくとも今よりも格段に減ってしまう

現在、鶴岡市加茂地区で計画されている風力発電事業について、日本野鳥の会山形県支部などは、15日付けで事業主のJRE社(ジャパン・リニューアブル・エナジー)に事業の中止を要請した。

日本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長:
現状を踏まえてもらわないと、本当に未来がない計画だと感じている

絶滅危惧種 クマタカの死がい見つかる

中止を要請する大きなきっかけになったのは、8月2日の鶴岡市の皆川市長の会見だ。

鶴岡市・皆川治市長:
“バードストライク”の可能性が高いものと受け止めた。重大な事案だと受け止めた

鶴岡市が明らかにしたのは、鳥が風車にぶつかる「バードストライク」の可能性。

6月下旬、市内で稼働している「JRE鶴岡八森山風力発電所」で、国の絶滅危惧種に指定されている希少猛禽類(もうきんるい)のクマタカ1羽の死がいが見つかった。詳しい死因は今後環境省が調べるが、野鳥の会でもバードストライクだろうと見ている。

日本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長:
今回の八森山の場合は、クマタカが近くで営巣していて、普段は高いところも飛べる鳥だが、営巣のために下りてくる回数が増える。そうすると風車にヒットしてしまう可能性がものすごく高くなる

バードストライクは渡り鳥にも影響

今回の死がいが見つかったクマタカなどの希少猛禽類に加えて、野鳥の会が懸念しているのは「渡り鳥」のバードストライク。

加茂地区の建設予定地から1.5kmから3.5kmの場所に、湿地保全に関するラムサール条約に県内で唯一登録されている「大山上池・下池」があり、コハクチョウやオオヒシクイ・カモ類など、冬を越すため毎年数千羽の水鳥が飛来する。

鶴岡市は渡り鳥や景観への影響も挙げ、2023年2月、すでにJRE社に事業の中止を求めている。

日本野鳥の会 山形県支部・細谷千鶴子支部長:
「仲間が死んだ、ここは危ない」と避けて通るようになる。野鳥の会としてよりも、山形の自然を愛するものとして、鳥が来なくなる・寄りつかない場所になってほしくない

日本野鳥の会山形県支部は今後、鶴岡市や反対する住民と連携しながら、JRE社の判断に対し明確な説明を求めていくとしている。

野鳥の会の細谷さんは、「鳥だけでなく人間への影響も懸念されている。JRE社には今回のクマタカの件をうやむやにせずに対応してほしい」と話していた。

(さくらんぼテレビ)

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