子どもの名前に名付けた「ナカムラ」への思い

中村哲医師が凶弾にたおれ半年。
彼の信念は、脈々とアフガニスタンに遺されている。

2020年5月のアフガニスタンの首都・カブール。

イスラム過激派組織によるテロがいまだ横行し、決して平和とは言えぬこの国に、ある男の子が生まれた。

出迎えてくれたのは、父・サミウラさん。

家に案内してもらい、男の子と対面することができた。
くりくりした目に、何とも愛らしい笑顔。

彼に付けられた名前は「ナカムラ」だ。

父・サミウラさん:
今回、わたしは神様と約束しました。次に生まれてくる子どもの名前は、偉大なる「ナカムラ」にすることを

「ナカムラ」とは、2019年12月、凶弾に斃れた中村哲医師に敬意を込めた名前だ。

中村哲医師:
大きな昔からある用水路が枯れた。全然水が来なくなった。そこを復活してなるべく多くの人が暮らせるようにしないと

9つのかんがい設備を整えた中村医師

未曾有の干ばつに苦しむアフガニスタンで、医師でありながら、用水路建設に全力を注いだ中村医師。

亡くなって半年、中村医師は、現地に何を遺したのか。

中村医師が2003年から7年かけて建設したマルワリード用水路。全長25km、アフガニスタン東部を流れるクナール川から水を引き込み、毎秒6トンの水を送る。

壊れた箇所は地元の住民たちが修理を行っていた。

現地住民:
この水は、家庭用だけでなく、農業用水としても使われ、本当に助かっている

これまでに9つのかんがい設備を整えた中村医師。

枯れた大地、約1万6,000ha(ヘクタール)が美しい緑によみがえり、実に65万人もの自給自足が可能になった。

現地住民:
何もなくて違う村に逃げていたが、故郷に戻ってくることができました。いろんな仕事があるので、この土地で幸せな生活を送れています

水がもたらすあらゆる恵み。

乾燥した大地に、2万本を超えるオレンジの木が植えられたほか、はちみつ作りも始まった。
酪農も再開し、ミルクやチーズが作られるようになった。

悪化の一途をたどる政情を尻目に、静かに広がる大地は、
もの言わずとも、無限の恵みを語る
平和とは観念ではなく、実態である

(「天、共にあり」より)

“僕の後継者は用水路そのものだ” 人々の心に中村医師の思いが…

地元住民のネジブラさんは、中村医師についてこう語る。

ネジブラさん:
中村先生は、長いことアフガニスタンにいて、皆から愛されていました。先生が仕事をする姿を見ていただけの小さい子どもたちがやがて大きくなり、今となっては、その子どもたちが先生と一緒になって仕事をしていたんです。長い間共に過ごした先生だからこそ、わたしたちは「カカ・ムラド」と呼んでいました。

ネジブラさん:
「カカ」は伯父という意味です。家族のような存在だったからこそ「カカ」と呼んでいました

僕の後継者は用水路そのものだ

中村医師が生前に語っていたこの言葉通り、水路周辺で暮らす人々の心には、中村医師の思いがいつまでも残っている。

父・サミウラさん:
この子が、いつか中村先生のようにアフガニスタン国民のために仕事をしてほしいと期待しています

※一部画像 ペシャワール会提供
(テレビ西日本)