7月29日から8月4日まで、鹿児島県内8つの市と町で“文化部のインターハイ”とも呼ばれる「全国高等学校総合文化祭」が開かれた。文化部に青春を燃やす全国の高校生が鹿児島に集い、輝いた7日間を振り返る。

鹿児島で開催「文化部のインターハイ」

7月29日、華々しく幕を開けた「2023かごしま総文」。文化部で活動する高校生約1万7,000人が鹿児島に集い、演劇部門・写真部門・放送部門・吹奏楽部門など22部門で作品の展示や舞台発表を行った。

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薩摩川内市で開かれたのは、独特の節調で吟じる詩に合わせて剣舞・詩舞を披露する「吟詠剣詩舞部門」。鹿児島からは県内5校による合同チームが出場し、堂々とした演舞を披露した。

一方、カメラやノートを手にした多くの高校生もいた。話を聞くと「今、取材をしています」という。実は、新聞部門に参加の生徒たちだ。

新聞部門ではフィールドワークを実施。約300人の生徒が鹿児島市内外8つのコースに分かれ取材に取り組んだ。

鹿児島の代表的工芸品のひとつ「薩摩焼」の歴史を取材するため、陶芸の町として知られる日置市東市来町美山を約40人の生徒が訪れた。薩摩焼の展示や陶芸体験ができる美山陶遊館では、学生が館長に取材をしていた。

大分県の高校生:
薩摩焼のほかの県の焼き物とは違う特徴を教えてください

館長:
一番の特徴は「貫入」といって、細かいヒビが入っている

高校生記者はメモを取ったり写真を撮ったりして、真剣に取材活動に取り組んだ。

他校生との交流で得られる“刺激”

翌日には、生徒たちが取材内容をもとに記事を作成し、新聞作りに励んでいた。

薩摩焼の歴史や製作の工程などが掲載された学生新聞
薩摩焼の歴史や製作の工程などが掲載された学生新聞

全国各地から集まった生徒たちが知恵を出し合い、原稿やレイアウト細かなデザインまで、自分たちだけで紙面を作り上げる。新聞を通して行われた交流は、生徒たちにとって大きな刺激となったようだ。

高知県立高知農業高校・森本葵斗さん:
同じ班のみんなと新聞の編集の話をしている時に、自分の知らない技術というか、「ここをこうすればいいんじゃないか」みたいなアドバイスを学べたので、学校に帰って生かしたいと思います

高校生記者から“逆取材”を受ける鹿児島テレビの記者
高校生記者から“逆取材”を受ける鹿児島テレビの記者

ちなみに、鹿児島テレビの取材班が会場で取材中に、東京の高校生記者から「普段どのように取材をしているのか」と“逆取材”を受ける場面もあった。好奇心あふれる高校生たちの制作意欲には脱帽だ。

それぞれの気持ちを発表に込めて…

総文祭は生徒同士の交流を目的とした部門がある一方、12部門では審査や表彰も行われた。

今回、鹿児島県勢は2部門で文化庁長官賞を受賞した。最高位の文部科学大臣賞に次ぐ賞だ。

自然科学部門で文化庁長官賞に輝いたのは、鹿児島市の池田高校だ。江戸時代の日記を155年間、5万3,210日分を地道にデータベース化し、当時の気象を分析することに成功した。

池田高校・末満李紗さん:
呼ばれた時は安心もしたしうれしくて、先輩から(研究を)受け継いできたので、結果を出せたことがうれしかった

池田高校・後堂莉乃さん:
この研究で学んだことは、コツコツ積み上げていくことなので、この経験を生かして、どんな分野でもコツコツ積み上げて大きなものをつくりたい

弁論部門では、沖永良部高校の川上天歌さんが文化庁長官賞を受賞した。中国人の母親が受けた外国人差別、「差別を受けて苦しんでいる人がいる現状を知ってほしい」そんな思いで9分間の弁論原稿を書き上げた。

沖永良部高校・川上天歌さん:
名前を呼ばれた時に「あれ、私だっけ?」って思ったぐらいびっくりした。審査員や見に来た方にそれだけ影響を与えられたのかなと思うとうれしく思う

大会当日は、お母さんも会場で見守ってくれていた。

沖永良部高校・川上天歌さん:
おびえることしかできなくて、母のことを非難する人に対しても、何も自分の気持ちを伝えられなかった私も、精神面でだいぶ成長したし、お母さんが「ありがとうね」って言ってくれて、よりうれしくなりました

コロナ禍越えて実現した青春

総文祭を支えた高校生は出場者だけではない。生徒実行委員会、そして大会当日の運営まで、多くの高校生が携わった。
生徒実行委員長を務めた甲南高校3年・三森芽依さんは大役を終え、胸をなでおろしていた。

生徒実行委員長 甲南高校3年・三森芽依さん:
コロナの影響もあったりして、やりたいことができなかったり、思い描いていた高校生活じゃない部分もあったが、それでも総文祭を通して全国のみんなと関わる機会を持てて、思い切り青春ができたので、すごくいい思い出だった。大学生になってからも自分がしたいことを思い切りできるような大人になりたい

総文祭は今回が47回目。全国の都道府県持ち回りで開催され、その1巡目の締めくくりが鹿児島大会だった。鹿児島で全国の文化部の高校生が輝いた2023年夏。芸術・文化の魅力、そして高校生たちの情熱を私たちに改めて見せてくれた。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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