8月、鹿児島市に大手焼き鳥チェーン「鳥貴族」がオープンする。いま鹿児島には全国や複数県に展開する飲食チェーン店が続々と進出している。なぜ今なのか、なぜ鹿児島なのか? それぞれの戦略を取材した。

「地元の方の声受け進出」専門家は「新たな展開も」

霧島市の県道沿いにあるうどん店。

この記事の画像(19枚)

一番人気は「肉ごぼ天うどん」(税込760円)だ。

福岡・北九州市発祥のチェーン店「資さんうどん」は、九州を中心に62店舗を展開していて、2022年12月、鹿児島に初出店した。マーケティング・広報課の伊藤典子さんは「お住まいの人たちから『出店してほしい』といった声をSNSなどでいただいていた」と話す。

客が車で来店できるよう、幹線道路沿いで駐車場が確保できることが店の基本戦略。鹿児島1号店を霧島市にオープンした理由だ。

伊藤さんは「多くのお客さんにお越しいただいているので、少しずつ認知が広がって受け入れていただいているのかなという実感はありますね」と手応えを感じていた。

2023年だけでも1月に松屋(松のや、マイカリー複合)、4月にむさしの森珈琲、6月にスターカフェ×タニタカフェと、最近飲食のチェーン店の進出が相次いでいる鹿児島。

地元のシンクタンク、九州経済研究所・福留一郎経済調査部長は「アフターコロナの需要を見越して、新たな展開で鹿児島市に目をつけたのもあるかもしれない」とみている。

「360円均一」鳥貴族が鹿児島に 将来は大量出店も?

そんな中、鹿児島市の繁華街、天文館で着々とオープンの準備を進めているのが、全国で600店舗以上を展開する大手焼き鳥チェーンの「鳥貴族」だ。鹿児島の人たちに聞いてみると「全国のお店ができるのはうれしい」「中心地感は出るのかなと思う」と好意的な声が目立つ。

多くの客でにぎわっていた鳥貴族の店内
多くの客でにぎわっていた鳥貴族の店内

鳥貴族発祥の地、大阪を訪ねた。黄色と赤の看板が特徴的な店舗外観。取材した日も多くの客でにぎわっていた。

大阪の利用者(学生):
安い上にすごくボリュームもあり大学生に非常に適している居酒屋だと思う

 大阪の利用者(会社員):
初めて?鹿児島で?そらもう鹿児島県民皆さん大助かりやと思いますよ

この鳥貴族、大きな特徴はその価格設定。「客に値段を気にせず楽しんでもらいたい」というコンセプトのもと全メニュー、一律360円で提供されている。新型コロナの影響で見合わせていたという地方進出を2023年に入り再開。九州への進出は、福岡に次いで鹿児島が2番目だ。

その狙いについて、鹿児島1号店となる天文館店の中野泰尚マネージャーは「この天文館が、一番人が集まる場所だと思っている」と話す。 

大阪の店舗に話を戻すと、取材した店舗からわずか200メートル離れた場所にも鳥貴族の店舗があった。1つのエリアに集中して出店する「ドミナント戦略」と呼ばれるもので、都市部のほとんどで同様の戦略が展開されている。

鹿児島市の1号店オープンは8月17日。中野マネージャーは「天文館で認知してもらうことができれば、鹿児島で数店舗の出店というのは考えている」と、同様の戦略に含みをのぞかせる。その上で中野マネージャーは「鹿児島は食文化に関しては学ぶことの多い県。怖さもあるが、私たちが長年やってきた鳥貴族という業態を知ってもらえることのほうがワクワクしているというのが正直な気持ちです」と語った。

唯一無二!? 野菜炒めで勝負

フライパンの上で踊る大量の野菜。

皿に盛るとあふれそうなくらいの肉野菜炒めが完成した。

約3カ月前に鹿児島中央駅近くにオープンした、何とも珍しい肉野菜炒めの専門店「ベジ郎」。「一皿で1日分の野菜を」そんな狙いで青果の卸売業を営む東京の企業が始めた。

運営会社の竹川敦史社長は「コロナ禍で農家からの野菜の供給は止まらず、センターで野菜があふれてしまった。この野菜をどうにかしなければいけない。コロナ後を見据えた時に、野菜が1店舗あたり、日本で一番出るような店を作れないかと考えた」と、始めたいきさつを語った。

2021年から関東圏で店舗を増やし、エリアを飛び越えて初めて進出したのが鹿児島だった。竹川社長の知人が鹿児島で飲食店を経営していたのが理由のひとつだが、ここでの成功は今後の試金石になるとみている。

ベジ郎を運営・竹川敦史社長: 
鹿児島は飲食店の個々の力が強いと思っている。我々も鹿児島のマーケットで勝負して勝つことができれば全国ある程度どこでも勝てるんじゃないかというにらみもある

勝負の時間帯のメインはお昼時だが夜の「ちょい飲み」ニーズに合わせたメニューも展開。リピーターも多い。すでに4~5回訪れているという男性は「野菜もボリュームがあり、ちょうどいい量がとれる。味も選べておいしい」と話す。

「地元の店もステップアップを」相乗効果に期待

続々と鹿児島にやってきている飲食のチェーン店。九州経済研究所・福留一郎経済調査部長は「自分たちは何ができるかを改めて考え直し、大手チェーンが進出することをきっかけにして地元の店もステップアップできるチャンスになってくれればいいと思います」と、地元店との相乗効果に期待する。

コロナ禍の苦境から復活しつつある飲食業界の象徴的な動きともいえそうだが、地元飲食店にとっては大きなライバル。互いに切磋琢磨(せっさたくま)して業界が盛り上がることを期待したい。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。