中国・貴州省の台盤村で開催されたバスケットボール大会「村BA」が爆発的な人気になっている。

中国で大人気の「村BA」について、FNN北京支局の葛西友久記者がお伝えする。
中国で「村BA」が大人気
中国で今、爆発的な人気となっているのが「村BA」と呼ばれるアマチュアのバスケットボール大会だ。Tシャツのほか、グッズまで作られるほど、人気になっている。

大会が行われた場所は、首都北京から約8時間の中国南部貴州省にある台盤村。少数民族のミャオ族が住む人口わずか1200人の、のどなかな村だ。

それが、決勝戦が行われる会場では、バスケットコートギリギリまで囲むように、足の踏み場もなく、最上階の席まで人で埋め尽くされていた。収容人数2万人というが、それ以上の人がいた印象を受ける。
観客の中には少数民族の衣装を着た人や民族楽器を鳴らしての応援と、華やかかつ賑やかな雰囲気だ。

台盤村では1936年から祝日を祝うレクリエーションとして、毎年バスケ大会が始まった。そして、2022年にSNSでその様子が投稿されたところ「村ならではのバスケが面白い」と話題になった。アメリカのプロバスケットボール「NBA」にちなんで「村BA」として親しまれ、全国人気に発展した。
村BAの出場資格は「農村部の戸籍」が条件となっていて、選手は普段、学生や農民、教師や村役場で働く村人たちだ。

2023年は規模を拡大し、台盤村やその周辺だけでなく、1500kmも離れた別の省の村も参加し、247チームが村の頂点を目指し、2週間かけて戦った。そのプレーは決して、プロ並みとは言えないが、それでも「試合が見たい」と、全国から観光客が押し寄せ、駐車場は連日満車となっていた。
いったい、何がこれほどまでに人を引きつけるのか、観客に話を聞いた。

観客:
プロは商業化されているが、ここに全国から集まるのは、純粋にバスケの魅力を感じることができるから。

観客:
バスケがわからなくても熱意が伝わるものがあり、楽しめます。
人気の背景に“プロスポーツへの不信感”
観客は大興奮で村BAへの思いを語ったが、その背景の一つには、中国のプロスポーツへの不信感というものがある。

サッカーのプロリーグでは、経営不振やレベル低迷、さらには、元代表監督が法律違反の疑いで調査される事件も起きた。
そうした中、村人たちが一生懸命プレーする姿が、見る人の心を打ったのだろうか。

そして、アマチュア大会を貫くために「村BA」は入場料が無料で、会場には“広告”が一切ない。さらに試合のハーフタイムでは、美しい衣装を着た少数民族が歌と踊りを披露し、会場を盛り上げる。

そして、優勝チームに贈られる賞品も話題を呼んだ。30日、全ての試合が終わった深夜1時から始まった表彰式では金メダルのほかに、優勝賞品として「豚の丸焼き」が、2位には「羊の丸焼き」、3位には「鳥の丸焼き」が贈られ、最後まで大盛り上がりだった。
中国政府が「村BA」のサポートに本腰
台盤村の商店街ではあちこちに「真っ赤」な横断幕が掲げられている。

「ミャオ族は中国共産党によって輝き、スポーツは精神を奮い立たせ素晴らしい」など、政府(共産党)が「村BA」を使って地元を盛り上げる様子が伺える。

台盤村がある貴州省は中国でも貧しい省として知られているが、村BAの経済効果は大きく、地元政府によると、2023年上半期の「村BA」を目的とした旅行者は、2022年同期比で10%増となる約300万人、その経済効果も日本円で800億円に上るという。こちらも2022年比で50%増という数字だ。
今回の大会にも出場した、台盤村の隣村の幹部はさらなる効果を実感していた。

隣村の幹部:
(村BAが)爆発的な人気になった以降、新たな産業もできて、地元の経済をけん引し、向上させました。
さらに、2022年大学を卒業したばかりの青年は、村BAをきっかけに「バスケを通じ、地域に貢献したい思いが強まった」と話している。

村BAに出場した青年:
(仕事は)子供たちにバスケットボールを教えています。地元の経済は良くないから、バスケを通じ地元を発展させたい。
新たな産業や地元に残る若者が増えるなど、思いがけない形で地方経済に好循環をもたらしている。

中国政府は2023年6月、台盤村のような「村バスケ」を全国各地で開催し、2023年秋に全国大会の決勝戦を開くと通知した。通知では「各地の地域文化との融合、農産物の展示会など魅力発信もしっかり行うように」と指示している。
中国経済が失速する中、政府主導の大型投資で強引に都市計画などを進めるよりも、台盤村のこうした草の根的な動きに将来性を感じた。
(「イット!」 8月1日放送より)