夏休みに入り、各地で水難事故が相次いでいる。

こうした中、静岡県と下田市は7月19日、ドローンを使って、海水浴場の安全を監視する実証実験を白浜大浜海岸で行った。

実証実験で使用したドローン(提供:静岡県下田市)
実証実験で使用したドローン(提供:静岡県下田市)
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静岡県と下田市は、昨年度から合同で、ドローンの活用による海水浴場の安全監視業務の省力化や安全性向上の検証を行うため、ドローンパイロットやライフセーバーと連携し、カメラ・スピーカーを搭載したドローンによる海水浴場の安全監視の実証実験を行っている。

今年度の実証実験は、7月から9月(7/19、8/15、9/5)にかけて行われる予定だ。

ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)
ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)

地上だけでなく空からも安全を監視できれば、事故などを早期に発見することにつながることだろう。

では今回、このような実証実験を行った背景は何なのか? 実証実験によって、どのような課題が明らかになったのか?

静岡県下田市の担当者に“背景と課題”を聞いた。

ライフセーバーの継続的な人材確保が課題

――「ドローンによる海水浴場の安全監視」の実証実験を行った背景は?

過疎地域では、人口減少・高齢化が著しく、安定的な雇用や生活基盤の確保など、人口減少や地理的条件不利に起因する様々な課題を抱えています。 

これを受け、静岡県では、昨年度から地域課題への解決に向けて専門人材を派遣し、 静岡県と過疎市町が連携した、革新的技術(ドローンや AI、センサー等)の活用、および、支援に取り組んでいます。 

また、静岡県と下田市は、昨年度から合同で、ライフセーバーの継続的な人材確保が課題となっている海水浴場の安全監視について、ドローンパイロット等の専門人材と共に、ドローンを活用した安全監視業務の省力化等に関する実証実験を行っています。 

今年度は、海水浴場開設期間を含めた7月~9月にかけて、社会実装に近い形での実証実験を予定しています。 

ドローンの飛行ルート(提供:静岡県下田市)
ドローンの飛行ルート(提供:静岡県下田市)

――7月19日の実証実験では、どのようなことを行った?

朝8時、正午、午後4時に定期パトロールを行い、安全監視の開始や終了のアナウンス、遊泳エリアの案内を行いました。また、遊泳エリア外にいる遊泳客や、遊泳エリア付近にいた水上バイクへの注意喚起、天候(強風など)に応じた注意喚起を行いました。

課題は「ドローンパイロットの人材育成など」

――実証実験に参加したドローンパイロットやライフセーバーは、どのような感想を話している?

ドローンパイロット、ライフセーバーは、それぞれ、以下のような感想を話しています。

【ドローンパイロット(株式会社ウインディーネットワーク 阪本真吾氏)】
・今後、予定している実装に向けて、ドローンによる安全監視の効果の確認や、課題の洗い出しをすることができ、非常に有意義な機会でした。
・空からの視点で広域を監視でき、また、広いビーチでも見たい地点まで、すぐに移動して確認できることが大きなメリットだと思います。
   
【ライフセーバー(特定非営利活動法人下田ライフセービングクラブ 山口智史氏)】
・ドローンを活用することで、地上とは違う視点で監視ができる。海側からアナウンスすることで、海を向いている遊泳客にもアナウンスが届きやすい。
・一般的に、ライフセービングは若者中心の活動だが、例えば、高い年齢層や体力面に自信がない人も活動に参画できるかもしれない。今後の人材の多様化も期待できる。
・東向きの海岸では、朝の時間帯は、海側が光って見えにくい時があるが、ドローンのカメラで海側から浜を見ることによって、遊泳客の様子がよく分かる。

ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)
ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)

――今回の実証実験で明らかになった課題は? 

ドローンのアナウンスの多言語化です。日本語で注意喚起をした際に、指示に従ってもらえない方が、外国人だったことから、アナウンスの多言語が必要だと感じました。

ドローンが撮影した映像の一部(提供:静岡県下田市)
ドローンが撮影した映像の一部(提供:静岡県下田市)

――実用化に向けての課題は?

ドローンパイロットの人材育成や機体購入費、運用に向けた体制づくりなどです。今年度の実証実験を踏まえて、検討していきます。


――「ドローンを活用した海水浴場の安全監視」の実用化は、 いつ頃を予定している?

来年(2024年)7月を予定しています。

ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)
ドローンで海水浴場の安全を監視する実証実験(提供:静岡県下田市)

ライフセーバーの継続的な人材確保が課題となる中、静岡県と下田市が7月から9月にかけて行う実証実験。「ドローンパイロットの人材育成や機体購入費、運用に向けた体制づくり」といった課題を解決し、実用化予定の来年7月以降、水難事故が減ることを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。