2020年7月に豪雨の被害を受けた人吉市で復興支援のプロレス大会が開かれた。被災地で復旧活動を手伝い、大会を主催した男性を密着取材すると不屈のファイター・大谷晋二郎への熱い思いが見えた。
予想を超える400人集客
3月18日、人吉市立第一中学校の体育館で“人吉豪雨災害復興支援プロレス”が開かれた。2020年7月豪雨で大きな被害にあった被災地を盛り上げようと、復興支援ボランティア「U.F.K」が開いたもので、会場には、予想を超える約400人が集まった。

最初は、小さな子どもたち向けのプロレス教室が開かれ、レスラーたちが1日500回以上するというスクワットを体験したり、ロープをタッチしながら走ったりして楽しんだ。


熱気と歓声 ウナギ・サヤカ選手も登場
その後、大会が進むにつれて繰り広げられる激しい技の数々に会場は熱気と歓声に包まれた。


人気絶頂の女子プロレスラー、ウナギ・サヤカ選手が登場するとさらに盛り上がった。

対する井上貴子選手はスタンガンで威嚇し、会場を沸かせた。

プロレスは力を与えられる!
このイベントを主催した、復興支援ボランティアU.F.K・内田雄也代表。内田さんはこれまでさまざまなプロレス団体と協力し、被災地でチャリティー大会を開いたり、募金を届けるなどして、災害からの復興支援を続けている。

復興支援ボランティアU.F.K・内田雄也代表:
(チャリティープロレスを)最初に見たのは熊本地震のときで、その時はみんな暗中模索なので、プロレスで元気を与えられるのかなと。いざ始まると、みんなニコニコ笑顔で。そのときに本当にプロレスって力を与えられるんだなとそばで見ていて思ったので、これは間違いないとずっとお手伝いさせてもらっています
“理由つけて行かなかった”ひっかかり
このイベントの他にも、代表の内田さんは2012年7月の九州北部豪雨災害以後、県内外の被災地に入り、ボランティアで復旧活動に当たってきた。

復興支援ボランティアU.F.K・内田雄也代表
東日本大震災のときに熊本にいて、津波や火災を報道で見て被災地に行けないもどかしさがずっとあったんです。気づいたんです。行けないんじゃなくて、行かないんだと。理由をつけて行かなかったです。店がある、仕事がある、子供が小さい。それがずっとひっかかっていて、地元・熊本で(2012年7月九州北部豪雨)災害があったときにここしかないと、1人でボランティアセンター行って、そこからのスタートです

今では、行きたいけど1人では行けないという人たちのために「バスを出すから行きましょう」と誘い、みんなで行ける形を作っている。
不屈のファイター 大谷晋二郎
そんな内田さんに大きな影響を与えたプロレスラーがいる。大谷晋二郎さんだ。倒れても倒れても立ち上がる熱いファイトが多くのファンに支持されている。大谷さんは、被災地・熊本をずっと応援している。

大谷晋二郎さん:
僕が信じているプロレスの力を熊本の方が信じて求めてくれたんです。それはもう、立ち上がるしかないでしょう

タッグパートナーの田中将斗さんは「真っすぐで熱い、人情深い。責任感が強い。熊本で困っている人がいたら助けに行こうと思うのが大谷晋二郎だ」と語る。
しかし、大谷さんは2022年4月、試合で激しい技を受け、リング上で動かなくなり救急搬送された。頸髄を損傷し、首から下が麻痺状態になった。

元気をくれた大谷さんに恩返しがしたい
大谷さんの回復を祈り、支援しようと全国各地で募金活動が行われている。
復興支援ボランティアU.F.K・内田雄也代表
「大谷さんから今までいっぱい元気をもらったから」「恩返しがしたい」とか、みなさんのメッセージを届けることで大谷晋二郎も「よし、頑張ろう」と。逆に今回は僕たちが、大谷さんが言ったように「一緒に頑張りましょう」と大谷晋二郎に言いたい。そういう気持ちでいろいろお手伝いをさせてもらっています

大谷さんが代表を務めるゼロワンの興行を応援しているパブリックビジネスジャパン社長の萩原宣さんは、募金を呼びかけ、大谷さんとその家族の支援を続けている。
大谷さんの体調について萩原さんによると「いろいろな内臓系や呼吸器系の疾患はだいぶよく良くなって、つい最近まで呼吸補助の管を入れていたが、その辺はなくなって自発呼吸ができるようになっている」という。

3000万円以上の募金 ファンに御礼
3000万円以上の募金が集まったことに、ファンに直接御礼が言いたいと5月6日、大谷さんは東京で行われたプロレス会場にやってきた。
パブリックビジネスジャパン・萩原宣社長:
めちゃくちゃ喜んでいました。自分も頑張るけど、きょう来てくれている皆さんが僕以上に頑張っていることを僕は知っていると。周りを気遣うことを言うわけです。正直、涙が止まらなかったです。車イスの大谷さんですけど、本当にファンから見てもすごく安心するプロレスラー大谷晋二郎が目の前に現れたと。首から下は一切動かないけれど、会場のみんな思いは一つだと思います。「よかった、大谷に会えて」と


内田さんは「大谷晋二郎が元気だったら、『人吉プロレスをやりたい』と言ったら、『やりましょう!』と言っていたと思うので熊本に来れない間は僕がそれをつなげていきたい」と語る。
大谷さんファン 子どもにも「晋二郎」
他にも大谷さんに思いを寄せている人たちが人吉のプロレス会場にいた。大分県別府市から子ども3人と来場した右田智幸さんだ。

大谷さんの大ファンで次男には同じ「晋二郎」と名付けた。それが縁で一家揃って大谷さんと親交がある。

2021年、次男の晋二郎さんは大谷さんに悩み事を聞いてもらった。
父・右田智幸さん:
高校の途中から(気持ちが)落ちかけていたんです。そうしたらゴング(内田雄也さんの店)で大谷さんが「ちょっといいですか」と(次男と)二人きりで30分くらい話してくれて

大谷ならきっと…頑張ろう人吉
大谷晋二郎ならきっと豪雨被災地の人吉でもチャリティープロレスをやったに違いない。
その思いは会場を埋め尽くした人たちに届いたはずだ。

会場に訪れた観客からは「挨拶の大事さから勇気を与えるところまで一連の流れですごく充実した時間だった」「これからも続けてもらって、自分たちも元気をもらえたらいいなと思った」など沢山の歓喜の声があがっていた。
復興支援ボランティアU.F.K・内田雄也代表
人が集まって、声を出して笑顔になれるというタイミングが重なって、きょうの大成功につながったんじゃないかと思います。みなさんが笑顔になってくれて、本当によかったと思います

今回の大会を主催した内田雄也さんは今後、熊本城でチャリティープロレス大会を開催したいと考えているという。

(テレビ熊本)