最近、鹿児島県内の飲食店や鹿児島市のスーパーで「うんまか深海魚」という文字を目にする。ボウズコンニャクに、キュウシュウヒゲと耳にする機会の少ない名前ばかりだが、実は鹿児島は深海魚の宝庫だ。ブレイクしつつある「うんまか深海魚」の魅力に迫った。

海の幸豊かでも注目されていない魚

鹿児島県は熊本との県境から南の与論島まで、実に南北600kmに広がっている。東京からだと岡山と広島の県境までに匹敵する距離だ。豊富な海洋資源に恵まれ、私たちは様々な海の幸を味わっている。

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そんな海の幸の中に実は、あまり注目されていない「深海魚」がある。

「東の沼津・西の鹿児島」地形に共通点

深海魚とは水深200m以上の海「深海」で過ごす魚介類を指す。

鹿児島大学水産学部・大富潤教授
鹿児島大学水産学部・大富潤教授

鹿児島の「深海魚」について研究・調査し、これまで1300種類もの深海魚を食べたことがあるという鹿児島大学水産学部の大富潤教授は、鹿児島の錦江湾(鹿児島湾)は、湾の中に200mを超える深海が存在する珍しい地形だと指摘する。

鹿児島大学水産学部・大富潤教授:
実は、静岡・沼津市の沖の駿河湾から南にかけてと、鹿児島の錦江湾から南にかけて、同じような海があるんですね

静岡県の駿河湾は深いところで2500m。その南に、伊豆諸島、小笠原諸島が連なる。

同じように、錦江湾の南には、種子島、屋久島、トカラ列島、奄美群島がある。こうした地域は「島しょ域」と呼ばれ、太平洋ではこの2カ所だと大富教授は指摘する。

駿河湾はタカアシガニ 錦江湾は?

静岡・沼津市の南端。伊豆半島の付け根にあり駿河湾に面する戸田(へだ)地区。「深海魚の聖地」として、古くから深海魚漁が盛んに行われている。

水深200~500mに生息し大きいものでは3mを超えるタカアシガニはそのひとつだ。

では鹿児島の深海魚には、どんな種類があるのだろうか? 

鹿児島市の中央卸売市場魚類市場をのぞくと、キンメダイ、タカエビなど、なじみのある魚介類が並ぶ。実はこれらも深海魚だ。

しかし、深海魚の中には「未利用魚」と呼ばれる競りにかからない魚も存在する。かつては網にかかっても船の上でそのまま捨てられていたが、現在ではこうした魚類を扱う業者もみられる。

その1つが仲卸業を営む田中水産だ。田中水産では、直接、漁師から仕入れた未利用魚を2019年ごろから販売している。

田中水産・田中積社長:
漁師も今ものすごく減っているんですよね。お金にならないから(取った魚を)海に捨てようとするのを「ちょっと待ってください」と。どこか使ってくれるところがあるかもしれないよ(と思った)

使われない魚も漁師の収入源に。

そんな思いから田中水産や鹿児島大・大富教授などを中心に、2020年に立ち上げたのが、かごしま深海魚研究会。県内で取れる深海魚を「うんまか深海魚」と銘打ち、ブランド化に取り組んでいる。

スーパーでも販売 低価格が魅力

イオン九州では2022年7月から「うんまか深海魚」の販売を始めていて、売り場には専用のコーナーがある。深海魚の特徴や料理のヒントを掲示し、手に取りやすいよう陳列されている。

この「うんまか深海魚」、最大の魅力は「価格」。

鹿児島大学水産学部・大富潤教授:
そもそも、こういったのは、海の上で捨てられていた魚ですから。つまり、キロ0円の魚だったのが並んでいるわけですから、高い値段がつくわけがないんですよね

イオン九州・水産担当バイヤーの水溜心一さんは「深海は水温の高低があまりないので、年間を通しておいしい魚をお客様におすすめできるという非常に大きなメリットがある」と話す。

飲食店でも深海魚 味に驚き!

飲食店にもその波は広がっている。鹿児島市内で取材した。

大富教授が「第二のメヒカリ」と呼ぶ、キュウシュウヒゲの天ぷら。口の中で一瞬にしてとろける身の柔らかさが魅力。大富教授の研究室の調査では、個体数でみると錦江湾の中に最も多くいる魚との結果が出ている。

さらに大富教授が「イチ推しの魚」というのが、ボウズコンニャクのあぶり。軽くあぶった皮のパリパリ感と、身のトロトロ感のコントラストが絶妙だ。

最初は十数店舗で始まった「うんまか深海魚」の提供、今では県内50店舗以上に増えている。

鹿児島で今、ブレイクしつつある深海魚。この夏、ディープな海の、知られざるディープな世界に飛び込んでみてはいかが?

(鹿児島テレビ)

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