使われなくなった機械を改修し、新たな命を吹き込む理容師が沖縄県浦添市で店を営んでいる。店のオーナーで理容師の男性は、車いすの利用者が快適に髪を切ることができるようとアイデア炸裂のマシーンを生み出した。
物作りが大好きなオーナーが店内を装飾
浦添市城間にある理容室、エクシード。
店内に入ってみると、ジュークボックスや黒電話などアンティークなグッズが多くそろえられているが、ただのインテリアではない。
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
これは、パチンコウォーターサーバーです。ここにコップをおいて、これが水で、これがお湯です。これは製作に1年くらいかかりました。こうやって7が３つそろったら、もう一杯出ます
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
これも、昔の東芝の冷蔵庫ですよね。幅があるじゃないですか。タオルを入れて、ここからタオルが取れるようになっています
オーナー理容師の豊里智さん。
物作りが大好きで、遊び心あふれる仕掛けのほとんどが手作りだ。
他にも利用客に快適に過ごしてもらいたいと、設備にはさまざまな工夫が散りばめられている。
友人で常連客の平田吉一さん：
夏なんかはいすに座るとけっこう暑かったりするので、このいすは横から風がくるように工夫されています。こういったものも、お客さんの目線になって考えているなと思いました
（豊里さんの）性格はおおらかで、何事にもチャレンジ精神があるっていうのか、いろいろなことをやってみたいというのがあるのかな。いままでずっと付き合ってきてそう思いますね
人を思いやる心意気、10点満点の9点を目指す理由
工業高校で学んだ技能を生かし、壊れていた機械にも新たな命を吹き込む豊里さん。
店が開業30年を迎えた2022年、新たに開発したのが、車いすに乗ったままカットとシャンプーができる理容台とシャンプー台だ。
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
本当の電話ではありますが、こういう感じでシャワーになっています。使い勝手はあまり良くないですが、見た目に温かさも少し入れたかったんです
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
ここを見てくれると分かりますが、これで車いすが上がります。この状態で髪を洗います
製作のきっかけは、3年ほど前の2020年に車いすのままでシャンプーができたらうれしいという利用客からの要望があったからだ。
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
お客さんに、この設備を車に詰んで利用者のところに行ってはと言われたことがあります。それも一つの手なんですが、私の考えはまた違っていて、施設から車に乗って一歩外に出るというこの気持ちの高まりが、やっぱり良いんじゃないかと思っているんですよ
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
車いすから通常のシャンプーいすに移動する際に抱きかかえられる場合が多いわけですが、それを嫌がられます。特に女性の方は、抱きかかえられてのシャンプーやリンスっていうのは、寂しい気持ちがあるのか、照れくさいのもあると思いますが、そのあたりを無くすために作ったんです
「できるところまでやってあげたい」店名に込めた意味
この日、車いすで生活する島袋照子さんが、娘の順子さんとともに来店した。
車いすで生活するお母さんを連れて来店した島袋順子さん：
新聞をたまたま見ていて、そのときに利用してみたいなと思い、電話して来てみました。他のところでは車いす対応はないので、以前まで通っていたところも不便だなと思いながらも通っていましたが、こうやって対応してくれているのですごく助かっています
車いす専用台は、島袋さんのようなお客さんが利用しやすいように改良を重ねた。
車いすで生活するお母さんを連れて来店した島袋順子さん：
母がパーキンソン病ですので、眠気もきたりして少し頭がだらーんとなる時があり、いままでは私が頭を支える形でしたので、豊里さんの邪魔になっていました
車いすで生活するお母さんを連れて来店した島袋順子さん：
そんな話をしていると、改良するというお話をしてくださり、当初は完成がいつになるかわからない感じだったのですが、いつの間にかできあがっていて助かります
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
ここへ来ても、ずっと頭を支えてもらっているだけだとたいへんじゃないですか。（娘さんに）休んでもらいたいという気持ちと、こちらに任せてもらえればいいかなと思いました
車いすで生活するお母さんを連れて来店した島袋順子さん：
通いやすくなりますね
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
どうですか、大丈夫ですか。ちょっと、見てみてください
車いすで生活するお母さんを連れて来店した島袋順子さん：
お母さん、かわいくなっています。ありがとうございます
店の名前「エクシード」は、限界を超えるという意味だ。
エクシード オーナー 理容師 豊里智さん：
限界を超えていますが、できる範囲のところまではやってあげようという気持ちからきています。本来の仕事プラス趣味で作り物。それで、いろいろな人の応援ができればよいかなと思っています
店を訪れた客に、快適で楽しいひと時を過ごしてほしい。
人を思いやる心意気が、豊里さんの創造力をかき立てる原動力になっている。
