兵庫・神戸市西区で、6歳の男の子の遺体が見つかってから7月22日で1カ月になる。どうしたら事件を防げたのか。虐待が疑われる事案の情報共有のあり方を考えていく。
事件から1カ月…守れなかった幼い命
6月22日、神戸市西区の草むらでスーツケースの中から遺体で見つかった穂坂修(ほさか なお)ちゃん(6)。
警察は修ちゃんの母親の沙喜容疑者(34)と弟の大地容疑者(32)らきょうだい4人を、修ちゃんの遺体を遺棄した疑いや、祖母を監禁した疑いなどで逮捕。

自宅付近の防犯カメラには、4人とみられる人物が、スーツケースを引いている姿が映っていて、警察は大地容疑者が家族を支配し、事件を主導したとみて捜査中。
幼い命を守ることはできなかったのか。

大地容疑者らの自宅近くに住む人は、事件前から異変を感じていた。
近隣住民:
子どもの姿はベランダに放り出されている時に見た。小さい子が泣きながら助けて助けてと。怒鳴り声めちゃめちゃ聞こえますよ

さらに事件の2カ月前、保育園の職員が修ちゃんの肩とお尻にあざを発見し事情を尋ねると、修ちゃんは「誰かからされた」と答えた。
園はその後、区役所に“虐待疑い”として通告。区の職員がその日のうちに家を訪問したが、沙喜容疑者と祖母から「遊びに行っていていない」と説明され、修ちゃんに会うことはできなかった。

神戸市子ども家庭局・丸山佳子副局長:
(区の職員は)家庭訪問したんですけど、次の日は会えず、またその翌日も保育園に登園されていないので、家庭訪問したところまたお留守だということで、連絡ほしい旨のメモを投函して連絡を待っていました
神戸市の虐待対応マニュアルでは、通報から原則、48時間以内に目視で安否を確認することが定められているが、職員が修ちゃんに会えたのは7日後だった。

西区は修ちゃんについて、保護者による監督や保護が適切ではないとする「要保護児童」と認定する一方、あざが直接確認できなかったなどの理由から、虐待の重さは5段階の下から2番目のレベルと位置付け、緊急性が高い事案とはしなかった。
また神戸市では2カ月に一度、児童相談所と虐待が疑われる事案の状況の確認をしているが、西区から修ちゃんの件は共有せず、警察にも報告しなかった。

兵庫県警の捜査関係者は関西テレビの取材に対し、「SOSに気付けていたら絶対会いに行きアザを確認していた。家族全員を署に呼んで話を聞くし、犯罪性があれば検挙していただろう」と答えた。

共有されなかった“虐待情報”
なぜ、児童相談所や警察に共有しなかったのか。
神戸市子ども家庭局・丸山佳子副局長:
軽度の通報を合わせると、年間1,700件ほどあるので。全件において(共有)するのがいいかは判断が分かれるかもしれませんが、今回は警察に援助要請するという判断には至らなかった
神戸市では、虐待が認められた場合は児童相談所に報告し、全て警察とも共有される。しかし今回は、“虐待のリスクがある”に留まり、共有されなかった。

児童虐待を防ぐ活動をしているNPOは、多くの機関で情報共有することが虐待を見過ごさないことにつながると話す。
NPO法人「シンクキッズ」・後藤啓二弁護士:
虐待リスクの情報は共有しないとリスク判断が異なってしまう。児童虐待は一つの機関だけで対応できるほど甘いものじゃない

各機関と全てリアルタイムで情報共有
悲惨な虐待事件を教訓に、連携体制を抜本的に見直した自治体がある。
千葉・野田市では2019年、小学4年の栗原心愛さん(当時10歳)が、父親から浴室で冷水のシャワーを浴びせ続けられるなどの虐待を受けた末に死亡した。
学校が行ったアンケートで「お父さんに暴力を受けている」と心愛さんから訴えがあり、通告を受けた児童相談所は心愛さんを一時保護した。しかし、わずか1カ月半で保護を解除。警察とも情報を共有せず、そのおよそ1年後に心愛さんは命を奪われた。
千葉県野田市健康子ども部・須田光浩部長:
連携していれば情報も入っただろうし、対応策も考えられただろうし、連携不足によることが原因で命を落とした

事件を受け、野田市は関係機関との連携を強化した。
虐待疑いの事案について市の情報は、全てリアルタイムで児童相談所と共有。さらに児童相談所から警察にもリアルタイムで情報が共有される。

また、月に1回開かれる会議には、警察、学校、民生委員も出席。緊急性がある場合に開かれる会議は、2022年に106回開催された。
千葉県野田市健康子ども部・須田光浩部長:
「野田市はここまでやるのか」といくら周りから非難されてもいい。それで子どもの命救われるならそうしなさいと

神戸市は対応が適切だったか第三者委員会を設置して調査する方針だ。子どもの命を救うために、いま改善が求められている。
(関西テレビ「newsランナー」7月21日放送)