2023年4月に行われた統一地方選挙で、平成生まれの金沢市議会議員が初めて誕生した。若い議員がこれからの政治をどのように担っていくのか、この新人議員の活動を通して政治家の仕事について考える。

初出馬にして上から8番目の上位当選

2023年4月の金沢市議会議員選挙で初出馬にして3799票を集め初当選を果たした道上周太議員(みちがみ しゅうた 32)。金沢市議会では初めてとなる平成生まれの市議会議員だ。

道上周太議員
道上周太議員
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専門学校を卒業後、福祉の現場で11年働き今年1月、無所属での出馬を決意し会社を辞めた。元々政治に興味はあったものの、立候補を後押ししたのは2020年に長男が誕生したことだった。

長男を保育園に送る道上議員
長男を保育園に送る道上議員

道上周太議員:
いざ自分が父親になってみてやっぱり大変だなって。出産、子育て、教育の負担を少しでも軽減して、みんながゆとりを持って子供と向き合う時間が増えるようにしたいなという風に思いました。

給食費の無償化などに支持が集まる

中学時代の同級生が中心となって応援の輪が広がり、選挙戦では子育て支援の強化を有権者に訴えた。金沢市内の自動車工場で働く前田博史さん。道上さんの選挙を支えた同級生の1人だ。この日、道上議員は6月の議会で初めて一般質問を行うことを前田さんに伝えた。

前田博史さん
前田博史さん

前田博史さん:
政治への関心はあまりなかった。市議選とか県議選の投票はほぼ一回も行ったことないぐらいで、なんで行かないかないかっていう理由もないぐらい、自分の生活において金沢市議選っていうのは無でした。

自身も3人の子どもを育てる前田さん。保育料や給食費の無償化を掲げた道上議員の公約に期待を寄せている。

前田さん:
僕の友達も子供が風邪を引いたらどっちかが休まないといけないとか、すごく遠くの保育園に通わせているとか、それぞれ事情がある。子育ての問題について彼には期待している。

架空の手柄をアピール!?

金沢市議会は定数38のうち16議席を最大会派の自民党が占めている。一方、道上議員は同じ初当選組の宇夛裕基議員(うだ ひろき)と2人だけで会派を作り、議員活動を始めることにした。

宇夛裕基議員
宇夛裕基議員

それから2か月余り、早速具体的な形になった仕事があったそうだ。金沢市矢木3丁目の市道で、トンネル内の側溝をふさぐ鉄のふたがボロボロにさびついていた。近くに住む人は「大人ぐらいの体重がのしかかると崩れ落ちそうなぐらいのさび方をしていた」と話す。

ひどくさびついていた側溝のふた
ひどくさびついていた側溝のふた

2023年5月「歩行者にとって危険」と住民から要望を受け、道上議員が金沢市の担当者に掛け合ったそうだ。その結果、工事の手配が整ったとして、自身のインスタグラムに投稿。

道上議員のインスタグラムより
道上議員のインスタグラムより

それから1か月足らずで16枚の鉄のふたは新品に取り替えられた。住民の1人は「困ったことを議員に相談することによって、どんどん早く良い環境が連れていくんじゃないかな」と感心していた。

新品になった側溝のふた
新品になった側溝のふた

しかし金沢市に話を聞くと、2023年3月に別の住民から要望があり5月の時点ですでに工事のスケジュールは決まっていたという。金沢市道路管理課は道上議員の工事への影響を否定した。市側と道上議員側の言い分が食い違っているように見えるが、果たして真相はどうなのだろうか。

給食費無償化について市長に問う

6月28日、道上議員が議場に立つ日がやってきた。市政に関する市長や幹部の考えを議員が問い確かめる一般質問の舞台だ。選挙に協力した同級生たちも仕事の合間を縫って傍聴席に座った。道上議員が一般質問で質したのは子育て支援を掲げた自身の公約に対する市長の考えだ。

道上議員:
給食費の無償化に対しての市長のお考えを最後にお尋ねいたしまして、私からの質問を終わります。
村山卓市長:
学校給食の無償化については検討しておりません。

少しでも具体的な回答を引き出そうと再質問、再々質問を行い食い下がったが…。

村山市長:
現在のところ検討しておりません。

一方、傍聴席に座った同級生たちは議会特有の雰囲気に親しみにくさを感じたようだ。

道上議員の同級生:
門が狭いというか、ちょっと入りにくいところがある。ちょっと軽いノリで来ちゃって、テレビで見るよく見る国会の感じだったんで、ちょっとびっくりしました。

道上議員の同級生
道上議員の同級生

公約よりも“自民党入り”が大事!?

無所属の2人会派で活動する道上議員。最後に記者が気になっていたことを聞いた。

記者:
過半数の会派や自民党でないと政策は形にならないのではないですか?
道上議員:
そこは政策に向き合っていくということで。一人の政治家として向き合ってもらえるようにしていくことが大切かなと思います。
記者:
数の力は関係ないですか?
道上議員:
それはちょっと…僕自民党に入る予定ではあるので。

道上議員は以前、取材に対し「自民党に入れば給食費の無償化については質問できなくなる」と話していた。公約を封じてでも自民党入りすることの方が大切なのか。

道上議員:
あんまりこれ言うとまた怒られるんですよ。一応僕の考え方では…ここからは撮れないですけど。
記者:
オフレコはないです。
道上議員:
それだとちょっと厳しいですね。ちょっと答えられないです。
記者:
答えられない?
道上議員:
無責任なことは言いたくないので。
記者:
違う展開になっていくということ?
道上議員:
…。
記者:
今のままでは行かないということ?
道上議員:
…。

記者からの再質問、再々質問には答えてもらえなかった。市議会議員は任期中の実績に基づいて4年に1度の選挙で市民による審判を受ける。キャリアはまだ始まったばかり。最初の志や信念を貫くことと政治の「現実」との間で、どう実績を残していけるのか。今後に注目したい。

(石川テレビ)

石川テレビ
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