アメリカ議会で超党派の議員が、7月26日に下院の監視委員会で「UFO(未確認飛行物体)」に関する公聴会を開催すると発表した。「UFO公聴会」は去年5月におよそ50年ぶりに議会で開催されて以降、今回が3度目だ。ただ今回の公聴会が話題を集めているのは、参考人がこれまでの政府要人などとは異なり、「UFO」を目撃したとする元軍人などを直接招致した点だ。注目の公聴会が迫っている。
この記事の画像(7枚)議員が怒りの会見「国民は真実を知る権利がある」
20日にアメリカ議会の記者会見場に現れたのは、共和党・バーチェット下院議員ら4人の超党派の議員だ。バーチェット氏は冒頭に「26日にUFOに関する公聴会を開催する」と宣言した後に、語気を強めて政府の対応を批判した。
「今回の公聴会はこれまでとは違う。自分たちの経験について率直に語ることのできる参考人を招くつもりだ。この公聴会については、非常に多くの反発があった。議会からも、情報機関からも、国防総省からも反発を受けた。NASA(アメリカ航空宇宙局)でさえ、私たちから手を引いた」
その上でバーチェット氏は、今回の公聴会では、「ほぼ毎日UFOを見ていた」と告発した元アメリカ海軍パイロットのライアン・グレイブス氏などを含む、UFOに接触、または撮影したとされる元軍人やUFO調査を担当した3人の人物を招くと明らかにした。
また、会見に出席した議員達は、今回の招致をめぐって「情報機関や国防総省から反発を受けた」と明らかにした上で、議会で以前、証言をしようとした人物が、政府からの圧力で証言を拒否した点などを挙げて、バイデン政権の隠ぺい対応を批判した。さらに議員がUFOを目撃したとする国防総省の職員や軍の兵士に話を聞こうとしたところ「妨害された」と怒り心頭で明らかにした。さらに、共和党のバーリソン下院議員は「政府は人目に触れないところで動いていることが多く、陰謀や噂が盛んになる傾向がある」と指摘した上で、「税金で政府が何をしているのか知るのは、国民の知る権利」「命をかけている軍人の命に危害を加える可能性のあるものが空中に何があるのかを調べる義務がある」と強調した。ルナ議員からも「政府はUFO情報を闇に葬ろうとしている」と厳しい批判の声も挙がった
会見ではバイデン政権を支える民主党議員からも批判の声が上がった。民主党のモスコウィッツ議員は「UFOは存在しないという答えなら、そう言えばいい。政府の答えは、「言えない 」なのだ。そして、それは憶測につながる」と述べた上で、「ついにアメリカ政府が何を知っているのか、いつ知ったのかという疑問に答える時が来た」と公聴会を契機として政府にUFOの情報開示を強く求める考えを示したのだ
議会で強まる政府の「UFO情報」の公開
議会からの政府に対するUFO情報の開示を求める声は党派を超えて相次いでいる。
民主党の重鎮であるシューマー院内総務など超党派の議員はUFOに関する政府の機密解除と、開示を義務づける法案を提出した。シューマー氏はUFOに関連する報告の多さから「政府が重要な情報を長期間にわたって隠ぺいしていると考える議会関係者もいた」と指摘し、さらに「機密解除されていない政府のUFO記録が存在するという信頼できる証言がある」と強調した。
こうした動きに呼応するように、UFOに関する内部告発は最近、後をたたない。中には「UFOの機体を回収した」などの告発もあり、アメリカ議会の議員の中では「政府が人間以外によって作れた航空物体を保有している」との疑念が強まっていて、政府が公開していないUFOに関する情報の開示を強く求める声が強まっている
UFOの真相究明につながるのか?
UFOは宇宙人の乗り物と結びつけられ長い間、注目を集めてきた。しかし2021年に国防総省は報告書で「UFOと地球外生命体を結びつける証拠はない」と公表したほか、最近の報告でもUFOとして報告された事案の多くが「気球」や「ドローン」だったことも明らかにしている。さらに2月に中国の偵察気球がアメリカ本土を横断し、米軍が撃墜した際には、政府のUFO調査チームによって以前は判明していなかった未確認の飛行物体が、その後に中国の偵察気球と判明したケースもあると明らかにされた。
ただ、前述の様に、開示されていない情報があることや、内部告発者や目撃者の証言が相次いでいることから、依然としてアメリカ国内では「地球外の文明によって作れた航空機が存在する」という声は根強い。アメリカ市民だけでなく、UFOや宇宙人の存在について研究している学者からも、公にされているデータだけでは科学的な根拠を元に真実の解明につなげることができないとして、政府が機密指定し開示しない情報の公開を求める声も挙がっている。
注目の公聴会がまもなく行われるが、参考人がどのような発言し、議員達がどのような行動に出て行くのか、そしてUFOの機密情報の開示につながっていくのか。今後の動きがさらに注目される。
(FNNワシントン支局 中西孝介)