今回の特集は「DXが進まない…昭和な会社」。仕事は終わったが、上司より先に帰れない。こんな経験をしたことはあるだろうか。若者はこうした価値観を古いと感じているという。
クラウドERP「ZAC」を提供する、株式会社オロは2023年3月17~24日、知的サービス業に従事する18~29歳のZ世代906人に、残業時間に関連したアンケート調査を行った。
Z世代はどんなことに時間を使うのか
そこではまず、就職・転職先を考える上で、新しい職場での残業の有無を気にするかを聞いた。
この記事の画像(10枚)回答は「とても気にする」(43.3%)、「少し気にする」(39.0%)、「あまり気にしない」(11.5%)、まったく気にしない(6.3%)となり、8割以上が残業の有無を気にしていた。
気にする理由を尋ねると、最も多いのが「プライベートの時間が減ってしまうから」(77.4%)で、次点は「決められた時間以上に働きたくないから」(39.1%)、「残業規制が整っているかで健全さがわかるから」(24.3%)だった。
そして、自由時間の使い道は「趣味」(66.0%)、「睡眠・休息」(61.2%)、「家族や恋人と過ごす」(42.0%)が上位に。家事、自主学習などに使うという意見もあった。
仕事は効率重視!早く帰るための工夫も
それでは、仕事についてはどう思っているのか。
古いと思う仕事の価値観を聞くと、トップ3は「上司より先に帰ってはいけないという暗黙のルール」(82.8%)、「新人は誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る」(79.9%)、「残業時間は長い人ほど頑張っている」(71.7%)という結果に。
これ以外だと、仕事のための残業や土日出勤、プライベートが充実している人は仕事をさぼっているといった価値観も、古いと感じていた。
その一方で、早く帰宅できるように、仕事の優先順位をつける、スケジュール管理を徹底する、できない仕事は断るといった工夫もしていた。
まとめでは、Z世代はタイムパフォーマンス(タイパ)やプライベートを重視する傾向があるが、仕事に対しての情熱がないわけではなく、「働く時間(量)より質」を大切にしていると述べている。
Z世代は“成果に直結しない慣習”は避けたいのではないか
調査結果を見ると、Z世代とベテランとで価値観の違いも出てきそうだが、企業や職場はどうすればいいのだろう。オロの担当者に聞いた。
――今回の調査を行った狙いは?
Z世代は残業が当たり前の時代をほとんど知らない世代です。彼らが、時間に追われるのではなく、時間を味方にして価値を生み出せる方法を探るべく、残業時間をどう捉えているのか、仕事でもタイパを重視するのか。こうした観点で調査に至りました。
――Z世代が古いと感じる価値観に共通点はある?
調査での「古いと思う、仕事に関する価値観」の選択項目を作るにあたって参考にしたのは、昭和の厳しい部活動に存在したルールでした。「朝練は先輩よりも先に来て鍵を開けておく」「練習中は誰よりも声を出す」「新人は最後まで残って練習する」「土日も部活に明け暮れる」などです。
Z世代が古いと感じる価値観に共通するのは、成果に直結しない慣習で「プライベートの時間が(不当に)制限されること」だと思われます。根性論・精神論だけのいびつな教育・指導が有り得ないのは、企業でも同じなのだと思います。
――「上司より先に帰ってはいけない」「新人は早く来て遅く帰る」「残業は頑張っている」。こうした働き方を古いと感じるのはなぜだと思う?
仕事もプライベートもどちらも重視したいZ世代にとって、仕事だけにすべてを捧げる生活スタイルにあまり共感できないからではないでしょうか。
終身雇用の崩壊、残業規制…社会的な要因も影響か
――Z世代は仕事にどんな価値観を持っていそう?
効率を重視する、意味のない前例の踏襲は避ける傾向にあります。しかし、仕事への情熱がないわけではないとも感じました。調査でも「会社のために全力で働く」ことについて、「古いとは思っていない」(32.7%)「どちらでもない」(17.7%)と回答し、合わせると全体の約半数となります。
――仕事への熱意があると思うのはどうして?
自由時間の使い方を聞いた質問では、仕事での成果をあげるため、家事・育児のために使いたい(使わざるを得ない)と考えている人もいました。効率・タイパを重視する傾向があるからといって、仕事への熱意がないとは言いきれないと思います。
――Z世代の考え方には、社会的な要因も影響もしていそう?
関わっていると思います。転職が当たり前になったこと、終身雇用の崩壊に加えて、働き方改革関連法による残業規制、人手不足による人材の奪い合い、ジョブ型雇用への注目、コンプライアンスの整備などの影響もあり得そうです。
企業は働く時間よりも質を重視するべき
――Z世代に対し、企業はどう対応すべき?
Z世代のタイパの感性を活かすべきだと思います。例えば、働く時間(量)より質を重視したマネジメントとして、「時間当たり営業利益」(付加価値の高い仕事を短い時間で遂行するほど良い)などを指標に活用するのも良いでしょう。
ただし、新入社員などの教育・研修にはしっかりと投資すべきです。短期的・一時的な生産性(時間当たり営業利益)の低下を許容してでも、業務経験の浅いメンバーにも仕事を任せることで、人材の成長スピードを速めたほうが、中長期での生産性は高まると考えます。
――Z世代の感性を生かすためのポイントは?
一つ一つの業務がどのように個人や組織の成果に結びついているかを示すことが重要と考えます。成果との結び付きの説明が難しい業務は、見直すべきかもしれません。付加価値の高い仕事を短い時間で出す方向に、会社全体の意識を変えていくことが有効と思われます。
――Z世代を部下に持つ、管理職や上司に意識してほしいことは?
Z世代のマネジメントに向き合うと、業務の効率化や生産性向上につながる可能性もあります。タイパの価値観を否定するのではなく、感性を活かしていく考え方を持つのがよいのではないでしょうか。
Z世代は効率やタイパを重視するからといって、仕事への熱意がないわけではないようだ。考え方はそれぞれだが「残業=頑張っている」といったイメージは、見直した方がよいかもしれない。