イノシシなどによる農作物被害が佐賀県で深刻化している。こうした中、有害鳥獣の捕獲用わなをドローンで巡回し監視する実証実験がスタートした。駆除の担い手不足や高齢化問題の解決につながることが期待されている。
ドローンで有害鳥獣を感知
多久市でイノシシ対策にドローンを活用した実験をしているのはドローンを使った事業を行う福岡市の企業「トルビズオン」。

もともと、山間部に住む買い物弱者対策としてドローンを使った物資配送の実証実験を多久市で行っていたが、農作物の被害にもドローンが活用できないかと、今回、実証実験をすることになった。

実験は、あらかじめ山林の3次元データをつくり、イノシシ捕獲用のわなを設置した地点の経緯度や高度を入力したドローンが自動巡回するというもの。

ドローンには生物の熱を捉えるサーモカメラが搭載されていて、野生の鳥や獣を感知しその様子をモニターで確認できる。

この日は230メートルほど離れた2カ所の箱わなをわずか1分で巡回。そのうち1カ所ではアライグマを捕獲していることがわかった。
県猟友会多久支部・木下光次さん:
車の通路だけなので家から出て20分もあれば回れるが、これだと1分

県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
あんまりわなに近づかない方が良い。人の匂いがどうしてもつくから。イノシシが警戒する。しかし、見回りは毎日しないといけない
収穫前に一晩で全滅被害も
実験に協力しているのは、県猟友会多久支部だ。農作物を荒らすイノシシやアライグマ、カラスなどの駆除を行っている。

顧問の毛貫茂さんは70年以上続く農家で、ナスやミカンやモモなどを作っている。
県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
とにかくわれわれは死活問題。せっかく育てたやつが収穫間際になって一晩で全滅する状態になる。あれをやられたら作る気がしない

県内では、2002年に7億円ほどあった農作物の被害額が減ってはいるが、2021年は約2億円と依然として深刻だ。毛貫さんのナス畑でも先日、旅行で数日見回りをしなかった隙に、被害に遭った。

県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
その日から出てきて、きのうもやられた。きょうもやられた。毎日来ている

農作物の被害に対応するため、多久市だけで毎年イノシシを2,000頭前後捕獲しているというが、状況は依然として深刻だ。
県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
実際イノシシはその5倍くらいいるだろう
人手不足・高齢化の解決にも
駆除を担う猟友会は、高齢化で人手不足も課題となっている。

県猟友会多久支部は、一番多いときで130人いた会員も今は40人で、60歳以上が3分の2を占める。猟友会がしかけているわなは約500カ所もあり、険しい山林を見回る作業も一苦労だ。
県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
歩いて見回りするとわたしは年齢的にもやっぱりきつい
これらの課題を解決しようと目を付けたのがドローンだ。

トルビズオン・増本衛社長:
人手不足を解決するためには効率的に自動でデータを取得し、今まで人がやっていたことを機械に代替させることが必要。その一番の最先端技術がドローン
ドローンは決められたルートを自動的に飛ぶことができ、これまで10カ所で2時間程度かかっていた見回りをわずか10分でこなせるという。
購入費や操作資格取得の課題も
一方で、購入費や操縦についての課題もある。
県猟友会多久支部・木下光次さん:
非常に良いと思っているけれども、ただ問題なのは操作。ドローンの操作がわたしたちにできるかどうか。覚えるのがどの程度までできるのか
県猟友会多久支部・毛貫茂顧問:
結構な費用がかかるから猟友会でそれができるだろうか。個人では手が出にくい

トルビズオン・増本衛社長:
このドローンはカメラも含めると200万以上はするが、赤外線カメラがあって、かつ自動操縦ができるドローンも一部あるので、そちらを使えばおそらく70~80万でいける
操作には資格が必要だが、会員は今のところ誰も資格を持っていない。
ドローンは、農作物の被害を減らし、猟友会の高齢化に対応する新たな手段となるのか。実証実験は5月から1年間ほどかけて行う予定だ。
(サガテレビ)