漁業が盛んで“海人”の街として知られる沖縄県糸満市。

糸満市では、約500年の歴史を誇り、市の無形民俗文化財にも指定されている、「糸満ハーレー」という伝統行事がある。その中で、人気イベント“アヒル取り競争”が、動物虐待に当たるとして、主催者側の担当者と参加者2人が刑事告発された。

伝統行事の存続に向け検討を進める糸満市の浦崎暁市議、イベント主催側の「糸満ハーレー行事委員会」東恩納博委員長、そして住民の声を聞いた。

「中止してほしい」との批判の声

ーーアヒル取り競争はどうするべき?

私は生まれも育ちも糸満市で、子どもの時から「糸満ハーレー」を見てきて、糸満市民として本当に誇りを持っている伝統行事です。

糸満市の浦崎暁市議
糸満市の浦崎暁市議
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その間、何の疑問もなく、当たり前のように毎年行われる“アヒル取り”を見て、大人も子どもも喜ぶイベントだと感じてきました。

しかし、数年前に糸満市議会で、鶏同士を戦わせる“闘鶏”に対する陳情書が提出されました。

糸満ハーレー
糸満ハーレー

そこで動物虐待や動物福祉というものに触れ、自らも考えるようになりました。

“アヒル取り”に対しても全国からさまざまな声が寄せられ、ほとんどが「中止してほしい」という批判の声でした。

今の時代、立ち止まって考えると、「これでいいのかな」と思い、これは見過ごせないなということで、市民として、また議員として、中止を求めて声を上げました。

糸満ハーレーの“アヒル取り競争”
糸満ハーレーの“アヒル取り競争”

ーーどういった批判の声?

900件余りのメールが届いていて、全てを見ることはできませんが、「可哀相だ」とか、「代替案を示してほしい」といった声が圧倒的です。

糸満ハーレーは、全国、世界に誇る伝統行事、文化だと思っています。

私が一番懸念しているのは、“アヒル取り競争”は、糸満ハーレーの一部分なんです。

提供:アニマルライツセンター
提供:アニマルライツセンター

この一部分のために糸満ハーレーが傷ついてしまい、同時に糸満市のイメージダウンにつながってしまうことを私は本当に心配しています。

そのため、“アヒル取り競争”を廃止して、代替案として、動物も困らない、参加者も喜ぶ催しに変えた方が良いと思っています。

“おもちゃ”のアヒルを取る代替案

“アヒル取り競争”は古来中国の祭りを再現する形で、余興として始まったという。

イベントの中止を求める電話やメールが1000件近く寄せらる一方で、イベントの主催者は「アヒルを粗末に扱わないなどの注意喚起を行っている」と主張している。

しかし浦崎市議は、今の時代にそぐわないとして、代替案を提示する。

代替案のおもちゃのアヒル
代替案のおもちゃのアヒル

ーーどういった代替案を検討中?

先日開かれた市議会では、アヒルのおもちゃを使う代替イベントが可能ではないかと提案しました。

例えば、このかわいいアヒルちゃんを海に放して、“たくさん取った人が勝ち”だとか、ある市民からは、一つ一つに番号を付けて、「大当たり」の番号を取った人が“家族旅行”などの景品を勝ち取るなどといった案が出ています。

提供:クックハウス
提供:クックハウス

生き物を追いかけ回して、動物虐待につながるようなイベントが今の時代にふさわしいのか、本当に楽しいものなのかを、市民みんなで考えていきたいなと思っています。

こういった代替案を自由に、市民、そして全国の方々に公募しても良いのではないかと私は思っています。

市民からは継続を望む声

古くから地元で親しまれてきた“アヒル取り競争”。

動物虐待と指摘されたことについて、糸満ハーレーに親しんできた糸満市民は複雑な心境を口にする。

ーー中止を求める声が多く寄せられているが?

糸満ハーレーは大好きです。
伝統だから変えるのは難しいのではないかと思います。

少し残念ではありますが、小さいときから見ている子供達は、自分がもう少し大きくなったらいつかはこのハーレーをやりたい気持ちがあるんです。

一方、動物虐待で刑事告発されたイベント主催側の「糸満ハーレー行事委員会」東恩納博委員長は、アヒルが怪我をしないよう細心の注意を払っていると主張する。

ーー生きたアヒルは使わないよう求める声があるが?

我々はとにかく動物虐待にならないように努力を一生懸命しています。
アヒルが怪我をしないよう専用のネットを用意していることも知ってほしいです。

「糸満ハーレー行事委員会」東恩納博委員長
「糸満ハーレー行事委員会」東恩納博委員長

やっぱり残すべきものは、ちゃんと後世に伝えていかないといけないという大きな責任を感じているので、大事に守っていきたいと強く思います。