アメリカ軍の訓練移転などに向けて工事が進む鹿児島・西之表市の馬毛島。2023年1月の着工から半年が経過した様子を上空から撮影。そして、様変わりする馬毛島と呼応するように、種子島での「増えたもの」と「減ったもの」に着目した。

馬毛島着工から半年…工事着々と進む

7月7日午前9時半ごろ、種子島・西之表市の港からトラックなどの重機を載せた台船が出航した。

工事着工から半年が経過した馬毛島
工事着工から半年が経過した馬毛島
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アメリカ軍の訓練移転や自衛隊施設の整備計画に伴い、2023年1月から工事が始まった馬毛島を着工から半年が経過した7月10日に上空から撮影した。着工当初の2023年1月から始められた木々の伐採は着々と進み、土がむき出しになった箇所が増えている。

4月にはなかった施設も…
4月にはなかった施設も…

島の中央部では、4月時点で2棟だったプレハブが4棟に増設されていた。4月にはなかった、周囲よりひときわ高いプラントのような施設もできている。

海岸でも工事進む
海岸でも工事進む

海岸近くにはコンクリートのようなものが敷かれ、海上には工事途中の桟橋も確認できた。

漁獲量減少し魚介類値上がり

この日訪れた西之表市の種子島漁協では、島の近海でとれた新鮮な魚介類が威勢のいいかけ声とともに競り落とされていた。

特産品「ナガラメ」の水揚げ量は前年の半分ほどに…
特産品「ナガラメ」の水揚げ量は前年の半分ほどに…

種子島の特産品の一つ、現地で「ナガラメ」と呼ばれるトコブシは、2023年5月から漁が解禁されているが、前年の半分ほどしか水揚げされていない。

漁協関係者:
馬毛島のものは大きいが、馬毛島では今は採れないから、その分があがってこない

種子島漁協(鹿児島・西之表市)
種子島漁協(鹿児島・西之表市)

ナガラメは馬毛島の東海岸が主な漁場だ。しかし、種子島漁協が基地工事に伴う漁業制限を受け入れ、東海岸での漁はできなくなった。その代わりに漁協は22億円の補償金を受け取った。

さらに、漁師の多くは馬毛島の工事関係者を運ぶ交通船の業務にあたっていて、漁に出る漁師が減少。天候不良の影響も重なり地魚の水揚げも減る中、今、起きているのが魚介類の値上げだ。

この日、ナガラメを競り落とした仲買人:
小さいよ。小さくて高い。量がないから。いつもはこのくらい(この日揚がったサイズ)だったら4,000~5,000円だけど、今は1万円近いから下手すれば倍だよね

工事関係者増加に伴い減少する“空き”

西之表市にある、すし店と民宿を営む店を取材した。カウンターのショーケースは空っぽだ。営業に必要な地魚が入荷できなくなり、すし店の営業を休止している。

民宿 直寿司・瀬下直孝代表
民宿 直寿司・瀬下直孝代表

民宿 直寿司・瀬下直孝代表:
普段取れるキビナゴとかトビウオとか普通の魚が取れなくなっちゃった。一番取れなくなったのはアオリイカだね。値段も1.5倍とか2倍上がっている

――漁に行ってほしいとは思わないか?

民宿 直寿司・瀬下直孝代表:
それは思います。だけど(交通船の)日当が高いからそっちに行っちゃうんですよ

基地工事に伴う関係者は6月末時点で種子島に1,000人、馬毛島に300人が滞在している。2024年2月のピーク時には種子島で2,000人、馬毛島で実に4,000人まで増える予定だ。これに伴って種子島で減っているのが、様々な「空き」だ。

「馬毛島関係の方、建設業とか、そういう方が全国から増えてきて、車が足りない状態になってきた」と語るのは西之表市のレンタカー店の従業員だ。店名を伏せることを条件に取材に応じてくれた。

この店では2022年と比べると倍ぐらいの予約が入っていて、連日、車の「空き」はほとんどないという。

レンタカー店の従業員:
観光客が車がとれなくて、電話は毎日もらうが、断る時が一番つらいです

部屋に“空き”なく…西之表市の家賃相場も高騰
部屋に“空き”なく…西之表市の家賃相場も高騰

同様に作業員が寝泊まりする場所にも「空き」がない。部屋に空きがないことで高騰しているのが、西之表市の家賃相場だ。ある不動産関係者は「新しく募集する物件は家賃がこれまでの2倍から3倍に跳ね上がり、ある物件ではオーナーが6倍の値段を提示したので、借り手が退去したんですよ」という生々しい話をしてくれた。

積まれた粗大・不燃ごみ(種子島清掃センター)
積まれた粗大・不燃ごみ(種子島清掃センター)

さらに、種子島清掃センターには不燃ごみや粗大ごみが積まれていた。2022年より2割ほど増加しているごみも、作業員の拠点作りに伴うものだ。作業員が住むために空き家を造り替える動きも進んでいる。

馬毛島の着工から半年が経過し、需要と供給のバランスが明らかに変容している西之表市。

民宿 直寿司・瀬下直孝代表:
うちは民宿をやっていたからまだよかったが、すし屋だけだったら大変です

10km先の無人島で進む国防計画が、さまざまな形となって種子島に押し寄せている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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