地域の治安を守るために、日々厳しい訓練に励む福岡県警の「第一機動隊」。そのなかでも大規模災害の現場で救助活動や行方不明者の捜索などを行うレスキュー部隊を「広域緊急援助隊」と呼ぶ。 “救出・救助のプロフェッショナル”集団だ。

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2023年6月21日。その集団の過酷な訓練に、1人の男が満を持して挑んだ。テレビ西日本入社6年目の記者、鑓水航。大学まで15年間、ラグビー部に在籍し、体力には自信があるというのだが…。

ウォーミングアップで洗礼を受ける

早速、機動隊の出動服を身にまとってグラウンドに向かう。

鑓水航記者:
きょうは気持ちを入れて、機動隊の皆さんに負けないように頑張ります

しかし、訓練を始める前のウォーミングアップから洗礼を受けることに――。

逆立ちをすれば「うわぁ!もう1回!うわぁ」と崩れ、懸垂をすれば「ああああ!!」と悲鳴を上げる。しかし訓練は、まだまだウォーミングアップ。ここからが本番なのだ。

この日体験する訓練は三つ。まずは、「降下訓練」。

足もすくむ高さからロープで降下

高さ10メートル、傾斜70度の壁をロープを使って降りる訓練だ。

福岡県警第一機動隊 舟川和希・中隊長:
今から降下訓練。倒壊家屋とか高所から降りて、要救助者のもとに速やかに行く

倒壊家屋や崖など様々な状況が想定される災害現場では、安全のために自立した姿勢で降りることが求められる。

鑓水航記者:
すげぇ…、高いなぁ

足もすくむほどの高さ。鑓水記者の番だ。「えいっ!やっ!」とばかりに降下を始めたのだが、隊員からは「もっと腰、突き出して~、おしり、突き出して~」と厳しい指示が飛ぶ。この姿勢では、災害現場の現場では全く通用しない。

隊員の姿勢と比べると当然ながら、その差は一目瞭然だ。

気を取り直して続いて挑戦するのは、「引き上げ訓練」。

助けたいという「気合」で引き上げる

隊員:
要救、ヤマモトさん、21歳、右足首の痛みあり

全員:
了解!

1人の隊員が要救助者のもとへ。高所にいるほかの隊員たちはロープを引いて要救助者を引き上げる。まずは、限られた人員で効率良く引き上げるために、専用の装置を使い要救助者の実際の体重の3分の1の力で引き上げる。

全員:
引け~~~引け~~~

隊員:
救助完了!

鑓水航記者:
思ったより、引っ張るときに思ったように力が加わらないというか、普段、皆さんはどんなことを意識して引いてるんですか?

隊員:
気合

鑓水航記者:
気合ですか…、助けたいという気合で

そして最後の訓練は、「酸欠想定の救助訓練」。想定は、空気中の酸素が不足した暗い現場。その中から要救助者を捜して助け出すというもの。

酸欠現場では、約10キロのボンベを含む「空気呼吸器」を装着する。

過酷な訓練に「本当にきつい…」

福岡県第一機動隊 舟川和希・中隊長:
空気呼吸器で活動できる時間が限られていますので、中の状況も分からないので冷静に判断した上で速やかに救助することが大切です

鑓水記者も空気呼吸器を装着し、現場へ。狭い隙間から素早く入ることに成功した。「大丈夫ですか!」と要救助者に声をかけ、要救助者を抱えながら狭い出入り口から外へ…。

安全な場所まで搬送できたら訓練終了なのだが、過酷な訓練で息切れも激しくなる。

鑓水航記者:
はぁはぁはぁ。きつい…、本当にきつい…

「ゆっくり呼吸をすれば苦しくない」と隊員は指導するが、そもそもスピード重視でハードに動くので息が上がってより呼吸がきつくなるという、どうしようもない状況に記者は陥っていた。

そしてこの訓練で最後となるはずだったが…。

屈強な隊員が「地獄」と呼ぶメニュー

指導隊員:
最後の体力調整、気合出して行きましょう!

訓練の後に必ず行われる「体力調整」。その過酷さから、隊員たちの間では「地獄」と呼ばれている。

鑓水航記者:
自然災害、いつどこで起きるか分からないですけど、自分とか自分の大切な家族とかが、もしそういう状況(要救助者)になったときに、「機動隊員の皆さんだったら絶対に助けてくれるんじゃないかな」というのを今回体験させていただいて、より一層強く感じました

福岡県警危機管理対策 宮崎秀幸・室長:
まさしく今、梅雨の時期なので、いつ災害が発生しても対応できるように、被災者を無事救出することが我々の任務でございます。命がけで訓練を行っています

命を守るための訓練の大変さを身にしみて感じた鑓水記者だった。

(テレビ西日本)

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