安倍元首相銃撃事件から7月8日で1年…次々と浮かび上がったのが旧統一教会と政治家が深く関わっていたという問題。事件から1年、本当に断ち切ることができたのか。長年、旧統一教会内部の独自取材を続けるジャーナリストの鈴木エイトさんに、「自民党は、教会との関係を断ち切れたのか」など詳しく聞いた。
その後の「旧統一教会と自民党」ジャーナリスト・鈴木エイトさんに聞く

あの日をきっかけに、旧統一教会による“霊感商法”、“高額献金”そして、“宗教2世”などの問題が次々に明らかになった。
事件から1年が経ち、旧統一教会は今、そして自民党との関係について詳しく見ていきたい。

2022年9月時点の自民党の国会議員の調査では、教団側と接点があったのは379人中180人、岸田首相も、「関係断絶が基本方針」だと話。
そして、地方議員についてもVチューバー(もるすこちゃん)による全国3800人の地方議員についての調査では、全国の地図で分かるように濃淡があるものの、全国的な広がりがあり、断ち切れていないようにみえる。

自民党と旧統一教会の距離、あの事件を経て現状はどうなっているのか?
ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
これだけ騒がれると、表立って関係を続ける議員はさすがにいないと思うんですけども、一方、その裏ではまだ陣営に教団関係者が入り込んでるような状況もいろいろ見聞きします。なかなか完全に関係を断ち切るのは、やっぱり何十年っていう付き合いなので、そんな簡単にはできないと思いますね
関係を隠しながら今もつながっている議員もいるという現状もあるのか?なぜ、関係を続けるのか?
ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
発覚してない場合は、実はそのまま事務所の職員としてとか秘書として使っている人は実はまだいるようなんですよね、僕がいろいろ見聞きするところによると。実際はなかなか我々が把握できていないようなところでまだまだ関係は続いてるんじゃないかと見ています

ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
当然、(選挙の)票もあるんですけど、その選挙の組織票よりはどっちかというと“マンパワー”ですね。選挙運動員であるとか、政治家(候補者)がほしいものを全て無償でどんどん提供してくれる。そういう相手のニーズに合わせたところを全てやってくれると…そこの「ギブ アンド テイク」の関係がもうずっと確立されてきた。それが一気になくなったら(自分の)選挙が成り立たないんじゃないか?というところですよね
事件から1年…旧統一教会の内部は今どうなっているのか?
そして鈴木エイトさんは、「旧統一教会の信者がたまたまそこの職員になってたり、秘書になってたわけじゃなくて、教団が組織的に送り込んできた。そこでいろんな民主主義がゆがめられている可能性があり、そこが一番の問題」と話した。
さらに、「この報道が加熱しているのが収まれば、また元に戻るみたいなことを教団内部でも言っている。なので“うやむや”のまま、このまま過ぎ去ってほしいと思ってる人(議員たち)は相当数いると思う」。

事件から1年経ち、旧統一教会の内部は、今どうなっているのか、最近、こちらの「発言」に注目があつまった。
旧統一教会のトップ、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が、韓国で6月28日、幹部を含む日本人信者1200人に対し行った演説の内容が波紋を呼んでいる。
旧統一教会のトップ・韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁:
日本は第2次世界大戦の戦犯国。ならば、賠償すべきでしょ、被害を与えた国に。政治家たち、岸田をここに呼びつけて教育を受けさせなさい!

なぜ今、この発言になったのか、エイトさんの取材では、教団は今「終わりの始まり」であるとみている。
韓国本部は今、深刻な財政難に陥っているそうだ。教団ナンバー2による虚偽の財務報告が発覚し、日本からの送金が大幅に減っているということだ。

ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
ここ数年のコロナ禍に加えて、安倍元首相銃撃事件によって、日本から韓国に送金ができない状況が続いていて、一説によると日本の教団には1000億円くらいプールされてるって言うんですね。それがなかなか韓国に今、送金できない状況。一方、韓国では豪華な施設をどんどん建てていたりします。そんな中で、実際に韓国では財政状況がひどくなってるんですけど、教団ナンバー 2だったユン・ヨンホという人物が韓鶴子総裁に嘘の報告ばっかりしていて、この人が失脚したことによって教団の実情を韓鶴子総裁が知ることになったんです。さらに(息子の)分派との裁判に負けて700億円を賠償しなければならなくなりました。それでお金が必要になったんです。ただ資金源の日本からの送金が減っていて、さらに解散命令請求などが進みつつある中で、「日本の政治家は何をやってるんだ!自分にかしずく存在だろう」みたいな…それが何でこんなことになってるんだってところで、岸田さんを呼び捨てにするような発言をしたって流れですね

教団への「解散命令」はどうなるのか
一方で、日本国内では伝道が活発化していて、協会関連の学生団体「CARP」や“ボランティア”をうたった勧誘が拡大していて、事件前の水準にまで回復しているということだ。
ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
教団内で“伝道数”を競わせているんですが、養成所みたいな…教育センターとかビデオセンターと言われるところ、そこに連れてくる人数を“伝道数”としてるんですが、これが安倍元首相銃撃事件の前までは一定の水準だったんですが、事件以降に落ち込んだと…ただそれが去年12月の時点で事件前の水準に戻ったと今年1月に(教団の式典で)発表してるんです。さらに「CARP」はオンライン・サミットなどを使ってSDGsを掲げてボランティア活動などをやっていて、そういうところに、そうとは(教団関連とは)知らずに参加してる学生であるとか大学の先生とかがいっぱいいて、かなり“伝道数”が伸びてきている。かなり警戒すべきことです

ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
その一方で、教団がスラップ訴訟(SLAPP=資金面などで勝る“強者”側が、“弱者”側の言論活動などを封じ込めるような訴訟)など訴訟を乱発して、かなり攻撃性を強めていて、教団側の「終わりの始まり」が始まっていると(私は)見ています
そして旧統一教会を巡って、注目されているのが“解散命令”が出されるのかどうか。旧統一教会を巡っては、文化庁が教団に対し、「質問権」を行使し、5月に6回目の質問を行い、教団から回答が出されている。
今後、文化庁が違法性があると判断すれば、裁判所に「解散命令」を請求する。そして、裁判所が請求内容を認めれば教団に「解散命令」が出され、宗教法人格が剥奪される。

解散命令の要件は揃い この夏には裁判所に「請求」か?
この解散命令の行方はどうなるのか?エイトさんの取材では…解散命令の要件は、揃っている。この夏には裁判所に「請求」か?ということだが…
ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
解散命令の要件は団体に対する悪質性、組織性 そして継続性なんですね。旧統一教会の場合は完璧に揃っています。ただ、民法上の不法行為なので、その教団の代表役員が直接、犯罪行為を犯したとかそういうことではない。あくまで信者にやらせている。責任を信者に押し付けている分、なかなかそこが立証しづらいというところで、文化庁がかなり証拠調べ に手間取ってきた 。文化庁に返って来る資料ですが、教団側が自分に不利な資料を出すわけがないので、文化庁が別にちゃんといろんな資料を集めて内部資料であるとか、いろんな被害者の情報なども集めた上でようやく一段落ついて、この夏には書類とかも全部揃った上で、解散命令請求に踏み出すんじゃないか?と…そういう感触を得ています

ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
この夏には解散命令請求がなされると思います。実際の裁判所の判断が最終的に確定するまでは3~4年、5年ぐらいはかかるので、その間にちゃんと財産保全をするなどの必要があります
鈴木エイト氏「自民の議員からの“横やり”あるかないかを注視」
これまで解散命令が出されたのは、“オウム”“明覚寺”という刑事事件に問われた宗教法人2つ。神崎デスクは、旧統一教会に対する解散命令についてどうみているのか?
関西テレビ・神崎デスク:
オウムと明覚寺の件は刑事裁判でいわゆる違法性が明らかになっていて有罪判決が出てるってことで、いわゆる一発“レッドカード”みたいな状態で、すぐに解散命令につながりやすかったんですけども、今回の場合はあくまでも、この旧統一協会というのは、民事裁判での違法性という、「不法性」みたいなところしか問われていないので、言うならば“イエローカード”をどんどん積み上げいて、“レッドカード”のレベルまで行くかどうか…っていうのを今、文化庁は慎重にやってるので、なかなか解散命令までには手間と時間を要しているということです

こうした中、鈴木エイトさんは…自民の国会議員から「横やり」があるかどうか?というところを注視しているという。
ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
これまでも実はいろいろとあったんですけれども、教団側が政治家の情報をリークしてこれ以上、教団でとって不利な状況になるようであれば“こういう情報を出しますよ”みたいな形で綱引きをしてる形跡があるんですね。今後、解散命令請求へ進んでいく中で、それにブレーキをかけられる発言であるとか何かしら圧力をかけるような発言が“想定される政治家”がするとすれば、そこはしっかりチェックをして、そういう関係性をちゃんと公に明らかにしていくべきだと思います

視聴者から「LINE質問」。
Q.旧統一教会は自民だけでなく野党とも関係があるのでは?

ジャーナリスト・鈴木エイトさん:
おっしゃる通り、関係ある議員は立憲民主や維新にも関係ある議員はいたんですが、積極的に自ら意図的に教団と関わりをもってきた、黒幕的に動いてた議員たちというのは、実は自民党のごく一部の議員です。「うっかり系」の議員については、僕は深くは追及する必要ないと思います。本当に追及すべき、責任を問うべきは、そういう裏にいた大物の政治家たち。 全く責任を問われていない政治家たちを今後追及すべきだと思います
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月7日放送)