都市型水族館「AOAO SAPPORO」舞台ウラ密着 

札幌市の中心部に位置するビルの中にある水族館「AOAO SAPPORO」。

完成までには、都市型水族館ならではの難しさがあった。

その裏側に密着した。

2022年9月、工事が進む「AOAO SAPPORO」の中に、初めてカメラが入った。

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ペンギンの展示へ向けて、巨大水槽のアクリル板が設置された。厚みは、10センチ以上!

横8.8メートル、高さ1.6メートル、重さ1.7トン。巨大なアクリル板を使い水槽を設置する。

「28階建ての建物で水族館が4~6階のエリア。水が他のフロアに影響を与えないよう、特に防水にはいつも以上に気を配りながら工事を進めている」(佐藤工業 水族館担当所長 辻 和快さん)

ペンギンの水槽に入る水は約59トン。

これが万が一漏れたら、他のフロアやテナントに大きな被害をもたらす。

ビル内の都市型水族館ゆえ、通常以上に気を遣うのだ。

1か月後、水槽に水を張っていく。水圧に耐え、きちんと防水できているか確認する試験だ。

「100%は工事にはない。万が一にも水が漏れて水位が下がらないか、内心はドキドキしている」(佐藤工業 水族館担当所長 辻 和快さん)

水槽をチェックすると、水位は下がっていない。合格だ。

2022年2月、水槽に人工的に岩を再現した「擬岩(ぎがん)」が設置された。

水族館では世界でも珍しい、取り外しができる構造だ。

「擬岩を付け替えたり、位置を移動させたりすることができる。飼育するのは限られた空間だが、なるべく毎日変化をつけて生き物たちが飽きない展示スペースにしている」(AOAO SAPPORO ディレクター 堀川 綾子さん)

これも、都市型水族館という限られた空間で飼育するための工夫だ。

海がない札幌中心部 “人工海水”を製造

3月、バックヤードに運ばれてきたのは“人工海水のもと”。

「水道水に“人工海水のもと”を混ぜて海水を作っている。小樽市の『おたる水族館』では目の前の海から海水をくみ上げて利用しているが、ここ札幌市には海がないので」(AOAO SAPPORO 飼育員 高橋 徹さん)

海から遠い札幌市中心部の水族館。海水を運ぶのにはコストがかさむ。そこで人工海水を作っているのだ。

直径1.6メートル、高さ2.7メートルのタンクで、1日約3000リットルの海水を製造できる。

“人工海水” ペンギンたちは気に入るか?

5月。飼育員の研修のため、一時的に「おたる水族館」で飼育されていたペンギンを移動させる。

傷つけないよう優しく抱きかかえて、ペンギンをケージの中に入れる。

「いってらっしゃい」の声に見送られ、約40キロの道のりを慎重に運ぶ。

ペンギンたちは、苦心して作った水槽を気に入ってくれるのだろうか?

「AOAO SAPPORO」に到着したペンギンは人工海水で満たされた水槽を自由に泳ぎ回り、擬岩をつたって飛び跳ねている。


「安心してホッとした。ペンギンが水に入ってすぐに跳んでくれたので」(AOAO SAPPORO ディレクター 堀川 綾子さん)
「とても見やすくできた。ペンギンたちもこちらを見ながら泳いでいるので、人とペンギンとの良い関係が作れそう」(AOAO SAPPORO 館長 山内 將生さん)

都市型水族館ならではのアイデアが詰まった「AOAO SAPPORO」。

ペンギンたちは多くの人の来場を待っている。