“学校を休むこと”に対する意識の変化を感じる動きが、愛知県で出始めている。

たとえば、愛知県は2023年度の2学期から「ラーケーションの日」を始める。「ラーケーション(learcation)」とは、ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」 を組み合わせた造語 。

「ラーケーションの日」は、愛知県内の公立学校(小・中学校、高等学校、特別支援学校)に通う子どもたちが保護者等とともに、校外(家庭や地域)で、体験や探究の学び・活動を、自ら考え、企画し、実行することができる日のことだ。

校外での自主学習活動として位置付け、登校しなくても「欠席」扱いとはしない。保護者等の休暇に合わせて、年に3日まで取得することができ、2023年度の2学期以降に各校で順次、始まる。

また、学校を休まなかった児童・生徒を表彰する「皆勤賞」は、廃止する動きが出ている。愛知県幸田町教育委員会は、2022年度から町内の小中学校で皆勤賞を廃止したのだ。

これらの動きは、“学校を休むこと”に対する意識の変化を反映したものなのだろうか?

まずは、「ラーケーションの日」を導入した、愛知県の担当者に聞いた。

「学校を休むこと」に対する抵抗感はやや薄くなったと感じる

――「ラーケーションの日」を導入した理由は?

2つの側面と担当者の思いをお伝えいたします。

【愛知県「休み方改革」プロジェクトとしての側面】
愛知県は、経済界・労働界・教育界とともに、「休み方改革」を通じ、ワーク・ライフ・バランスの充実と生産性向上による日本経済の活性化の実現を目指しています。

その中で、家族と子どもが一緒に過ごせる仕組みづくりとして、「県民の日学校ホリデー」を創設するとともに、「ラーケーションの日」の創設・導入に向けた環境整備を行うこととしています。

【教育的側面】
教育基本法の家庭教育の条項(第10条)には「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」とあり、子どもの教育の全てを学校が抱えるのではなく、保護者の教育力を引き出すことも必要です。

また、令和3年(2021年)1月の中央教育審議会答申では、児童生徒が自己調整しながら学習を進めていくことができるよう指導することの重要性が指摘されており、保護者等と連携して学びにおける子どもの主体性を高めていくことには、教育的価値があります。

【担当者の思い】
・家族で「一緒に過ごす時間」が大切です。
・「何について学ぶか」を事前に子どもと一緒に話し合ってみてください。そこから「ラーケーションの日」は始まります。
・遠くへ行かなくても、身近な場所にも「学びの種」はあふれています。家族と一緒に活動すると、新たな発見があるかもしれません。

こちらの思いは、保護者用リーフレットに載せました。

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――「ラーケーションの日」について、児童生徒や保護者、教職員は、どのように受け止めている?

令和5年度(2023年度)については、2学期から導入の準備が整ったところから、順次、行っていくため、実際はまだ運用を開始していません。また、児童生徒や保護者、教職員の意識調査も行っていないため、把握はしておりません。

問い合わせは増えてきたので、関心はもっていただけていると思います。


――では、一昔前と比べて「学校を休むこと」に対する意識は変わったと思う?
 
 
以下は、あくまでも、私見です。

自分は昭和40年代の生まれです。自分が小さな頃と比べると、「学校を休むこと」に対する抵抗感はやや薄くなったと感じます。家事の都合などで学校をお休みすることへの意識の変容も感じています。

不登校傾向の子の「心を休める時間」など、現在の子どもたちや家庭の抱えている事情は様々なので、そういった面でも「休むこと」への意識は、日々、変わっているかと思います。

意識の変化は「分かりません」

愛知県がすすめる「ラーケーションの日」の意図は分かった。

では皆勤賞を廃止した自治体は、「学校を休むこと」に対する意識の変化を感じているのだろうか? 2022年度から町内の小中学校で皆勤賞を廃止した、愛知県幸田町の担当者に話を聞いた。


――皆勤賞を廃止した理由は?

皆勤賞については、児童生徒の健康な体作りを目的として継続してきました。

しかし、令和2年(2020年)2月18日より、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、感染の有無にかかわらず、発熱などの風邪の症状がみられる場合には、出席停止措置として、登校を控えていただきました。

さらに、体調が悪い時は無理をせず、自宅で休養することをお願いしており、新型コロナウイルスの感染により、欠席の扱いが、これまでと異なる状況が続いていることを踏まえ、皆勤賞を廃止した、ということです。


――皆勤賞の廃止について、教員、保護者からは、それぞれ、どのような意見があった?

教員は、おおむね賛成です。保護者からの声は、特にはありませんでした。

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――皆勤賞の廃止によって、体調不良以外の理由で休む児童生徒は増えた?

欠席理由について、皆勤賞廃止によるものかどうかを把握していませんので分かりません。


――コロナ禍、そして皆勤賞の廃止によって、「学校を休むこと」に対する意識は変わったと思う?
  
分かりません。


――今後、皆勤賞を復活させる可能性は?

現在のところ、皆勤賞の復活は考えていません。

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今回、取材した2つの自治体の回答からは「学校を休むこと」に対する意識の大きな変化までは感じることはできなかった。ただ「ラーケーションの日」が始まり、さらに皆勤賞を廃止する自治体が増えてくると、「学校を休むこと」に対する意識は徐々に変わっていくのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。