5月8日から法律上の位置づけが「5類」に移行した新型コロナウイルス。
その後遺症について、子供も一定の割合で悩んでいるという。国内で新型コロナウイルスに感染した20歳未満の子供のうち、発症から1カ月以上たっても続く後遺症がある割合が3.9%であることが、日本小児科学会の研究チームの調査で明らかになった。

調査は、2020年2月から学会のデータベースに小児科医らから任意で寄せられた感染者の情報を研究チームが分析した。
(注:約半数が入院を要した小児患者を対象とした調査のため、やや急性期の症状が重症であった患者を多く含む母集団となっている)

その結果、1カ月後も症状が残っていたのが、5月15日現在の情報で、181人(男性:101人、女性:80人)で、感染者全体の3.9%だった。そのうち、「発熱」と「咳」がそれぞれ30%で、「嗅覚障害」が18%、「倦怠感」が17%、「味覚障害」が15%、「腹痛」が9%、「頭痛」「下痢」が8%、「悪心・嘔吐」が6%だった。

※発熱 咳 後遺症があった子供の割合(画像提供:日本小児科学会)
※発熱 咳 後遺症があった子供の割合(画像提供:日本小児科学会)
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※味覚障害 嗅覚障害 後遺症があった子供の割合(画像提供:日本小児科学会)
※味覚障害 嗅覚障害 後遺症があった子供の割合(画像提供:日本小児科学会)

他に、関節痛、筋肉痛、胸痛などの症例も見られた。3.9%というと大人と比べると、少なそうに見えるが、子供のコロナ後遺症にはどんな特徴があるのか?

また、5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」となったが、今後の課題は何か?
研究チームの一人である聖マリアンナ医大の勝田友博准教授に詳しく話を聞いた。

10歳未満は発熱や咳

――子供のコロナ後遺症で一番の特徴は?

成人と比較し、その頻度が少ないこと。また、その中でも10歳代が多くを占めますがその年代は、元々LongCOVID (COVID-19に罹患した後、1カ月以上経過した後に認めた症状で、COVID-19との関連が否定できない症状) に類似した症状(倦怠感、頭痛、めまい、それらに伴う登校困難など)を認めやすい年代であり、他の疾患と鑑別が困難である点です。10歳未満は発熱や咳が多く、10歳以上では倦怠感、味覚嗅覚障害、頭痛、腹痛などが多くを占めていました。ただし、オミクロン株になってから味覚嗅覚障害はほとんど認められなくなりました。


――後遺症がある割合「3.9%」は大人と比べて少ない?

国内からの成人LongCOVIDの報告はその定義にWHO基準(最短でも2カ月以上持続)を用いていますので小児と成人を直接比較するのは困難ですが、海外からの報告も含め、小児の方がLongCOVIDの発症割合が低いのは間違いない事実かと思います。母集団の差による影響を避けるために、コントロール群(コロナに罹っていないこども)との比較が重要と言われていますが、残念ながら今回の我々の調査は、コントロール群を設定しておりません。


――子供のコロナ後遺症は、どのくらい治療すれば治る?

報告にもよりますが、概ね半年弱で軽快します。

※イメージ
※イメージ

子供は学校との連携が重要

――後遺症の治療で大人との違いはある?

この点はまだ不明な点も多いので私見となってしまいますが、丁寧な問診と傾聴で多くの小児患者さんは薬剤を使用しなくても軽快します。臨床心理士や児童精神科医による介入が必要となったり、学校との連携が重要となることが多いのも小児の特徴です。自律神経失調症や起立性頻脈症候群を合併した場合は成人と同様、投薬が必要となることもあります。

※起立性頻脈症候群…立ち上がった際に脈拍数が上がり、動悸、息切れ、立ちくらみなどを自覚する症候群


――後遺症のない子供の感染者と比較して、何か傾向はある?

十分なエビデンスはないと思います。成人では急性期の症状が重篤である、ワクチン接種歴がない、女性、などがリスクとなるとされています。


―― 5月8日に5類に引き下げられたが、今後の課題は?

5月8日以降は、潜在する感染者(診断されない)がコロナの感染源となり、また行動制限の緩和も進むため、今まで以上に急激で大規模な感染拡大となる可能性があります。制限緩和により日常生活を取り戻すこともとても重要ですが、直前の流行情報などに十分注意し、また国の推奨に沿ったワクチン接種を検討することも大切かと思います。


――後遺症対策として我々ができることは?

後遺症は一定の割合で認めてしまうので、罹患しないように心がけることだと思います。


5類に引き下げられたとはいえ、新型コロナウイルスに感染しないことが何より重要だ。これからも、感染対策やワクチン接種などで子供を守ってほしい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。