沖縄戦で命を落とした友のため、未来をつくる子どもたちのため、命の限り自らの戦争体験を伝えてきた元白梅学徒の中山きくさん。 

2023年1月に亡くなったきくさんと20年交流してきた平和ガイドや、その後輩たちが思いを紡いでいる。 

次は私たちがどう行動するかが未来の平和に深く繋がる 

沖縄尚学高校 地域研究部 玉城美柚 部長: 
ウクライナで起こっている戦争、そして戦争体験者の方々がどんどん減少している現状をみると、次は私たちがどう行動するかが、未来の平和に深く繋がる時代になってきていると私は思います 

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ガイドとして戦跡を案内する沖縄尚学高校・地域研究部の玉城美柚(たまき みゆ)さん。 
直接会って話を聞くことができなかった元白梅学徒の思いを胸に刻んでいる。 

元白梅学徒 中山きくさん: 
私のお友達のちよちゃんにね、もう死んじゃおうと言いました 

元白梅学徒の中山きくさんは、1945年の沖縄戦で学友22人を失った体験をもとに、戦争の悲惨さや平和の尊さを多くの人に伝える活動に力を尽くしてきた。

かつて軍国少女だったきくさんはおよそ2カ月、傷病兵の看護にあたった。

戦況が悪化し、突如解散命令を受けたきくさんたちは戦場を逃げまどい、自ら死を選ぼうとしたこともあったという。

”戦争は絶対悪”平和には繋がらない 

2022年の慰霊の日、白梅学徒隊の慰霊祭に中山きくさんの姿があった。

元白梅学徒 中山きくさん:
悲惨な戦禍に巻き込まれて、尊い命を失われ、かけがえのない人生を絶たれた皆さま方のご無念を察し、断腸の思いに駆られます

このときすでにきくさんの体は、がんにおかされていた。 

元白梅学徒 中山きくさん:
あの頃はね、お国のためだと割り切っていました。私たちは戦争というものに、沖縄のためだからといって一生懸命協力しましたからね。でも、いまはそうじゃありません。協力したことを悔やんでいます。戦争は絶対悪だと。平和には繋がらないです

2023年1月、きくさんは94歳で亡くなった。 

中山きくさんの同級生 武村豊さん: 
戦争に対する考え方もそれから家族に対する考え方、たくさんいろんなことを教えてもらいました 

ひめゆり平和祈念資料館 普天間朝佳 館長:
優しさの中にも強さがある方で、全女子学徒のことをしっかりと後世に伝えていこうと活動・尽力なさって、本当に尊敬すべき先輩だなと思っています 

後輩がいないと語り継がれていかない記憶が風化してしまう 

きくさんと20年近く交流を続け、白梅学徒の記憶を継承するため平和ガイドとして活動する新垣ゆきさんもその一人だ。 

20年きくさんと交流してきた 新垣ゆきさん: 
本当に孫のようにかわいがっていただいて。(告別式では)一日中気を張っていて、改めて本当に亡くなったんだなって

20年きくさんと交流してきた 新垣ゆきさん: 
私が今年、活動に携わってちょうど20年目で、いっぱいきくさんに報告したいこともありましたし、いっぱい準備していることもあって、だから余計にもうちょっと元気にいてほしかったです

ゆきさんがきくさんに出会ったのは沖縄尚学高校の地域研究部に所属していた時に、他の部員たちと沖縄戦について学びたいと思ったことがきっかけだった。 

20年きくさんと交流してきた 新垣ゆきさん: 
彼女たちは学校自体が無くなってしまっているんですね。後輩がいないとなると、語り継がれていかない。語り継がれていかないということは、記憶が風化してしまうので、それはよくないと思って。それなら勝手に後輩宣言をして、私たちが語りついでいこうと思いました

この後輩宣言は今日までの20年間、代々受け継がれている。 

種をまいていくという言葉 私たちも種になって花を咲かせたい 

2023年5月26日、ゆきさんは母校を訪れ後輩たちに講話した。 

20年きくさんと交流してきた 新垣ゆきさん: 
タイトスカートだと、今度は作業がしにくいですよね。だから、それがモンペに変わっていくんですね。きくさんは最後まで言っていました。あんなダサい制服は着たくなかったって。本当に着たかったのは、ジャンパースカートの本当の二高女の制服でした。彼女たちからもらった種を絶やさないようにしたいなと思ったんです。繋いでいきたいなと、だからいま語り継いでいます

今の2年生と1年生は、きくさんと会って直接話を聞くことは叶わなかった。 

沖縄尚学高校 地域研究部 玉城美柚 部長: 
私たちはずっと本で勉強してきたので、実際にきくさんから聞いて学んできたゆきさんの話を聞いて、当時の女学生たちは同じ高校生だな、同じ女の子だなという感じがとてもしました。ゆきさんが言っていた「種をまいていく」という言葉がとても印象に残っていて、私たちもその種になって花を咲かせたいです

6月17日、2年生がガイドとなり1年生と白梅学徒の足跡を巡った。 

沖縄尚学高校 地域研究部 渡慶次アニカさん: 
重傷で歩けない負傷兵には青酸カリを渡して処置するよう命令されました。処置とは負傷兵たちを強制的に自決に追い込むことです

沖縄尚学高校 地域研究部 玉城美柚 部長: 
ウクライナで起こっている戦争、そして戦争体験者の方々がどんどん減少している現状をみると、次は私たちがどう行動するかが未来の平和に深く繋がる時代になってきていると私は思います。世界中の方々が何者にも恐れることなく、おびえることなく過ごせる日々を作っていけるような活動を、私たちはこれからみんなと一緒にしていきたいです

思っているだけでは平和は来ない。行動しなさい 

2022年、病におかされながらも慰霊祭に参加したきくさんが遺した言葉。 

元白梅学徒 中山きくさん: 
一番、何もしないことがダメなのです。自分のできることはした方がいいと思いますね 

きくさんが後輩たちに託した思いは、これからも紡がれていく。 

沖縄テレビ
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