沖縄県宜野湾市にある佐喜眞美術館に収蔵されているのが、縦4m、横8mの大きな作品、「沖縄戦の図」だ。描いたのは丸木位里(まるき いり)・俊(とし)夫妻で、2年の歳月をかけて完成させた。

2023年、「沖縄戦の図」が映画になった。なぜ、「沖縄戦の図」に焦点をあてたのか、映画を手掛けた河邑厚徳(かわむら あつのり)監督に話を聞いた。

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沖縄の人たちが沈黙してきたものがようやく語れるようになった

河邑厚徳監督:
初めて丸木さんたちが沖縄に来たときは、沖縄戦から33年近く経っているんです

河邑厚徳監督:
残っている人も33回忌が過ぎて、辛くて戦争を語れなかった、沈黙してきたものがようやく語れるようになったあの時代に、(丸木夫妻が)沖縄に来なかったら、あの絵画は描けなかった

数々のドキュメンタリーを制作してきた河邑さんは2020年、佐喜眞美術館に収蔵されている「沖縄戦の図」に出会った。

河邑厚徳監督:
上下(の高さ)が4mでしょ。幅も8m近いでしょ。すごい大きい作品を、最晩年の丸木位里さん、俊さんが描いたっていうね

丸木位里・俊夫妻の描いた「沖縄戦の図」は、夫妻が1982年から沖縄に滞在して描かれ、全14部からなっている。

佐喜眞美術館では、2024年1月29日まで全14部を展示。

『沖縄戦の図』(1984年)や『沖縄戦−きゃん岬』(1986)、『久米島の虐殺』(1983)などだ。

集団自決に怒りと驚き 戦争の実相を描く

丸木夫妻は戦跡を巡り、現地に赴いて戦争体験者の話を直接聞くなど、徹底した調査を重ね作品を仕上げた。

集団自決で80人余りの住民が命を失った、読谷村のチビチリガマをテーマにした作品『チビチリガマ』(1986)もある。

河邑厚徳監督:
丸木さんが最も驚いたのは、強制集団死、集団自決ですね。米兵に撃たれるんじゃなくて、子どもを家族が殺し合うっていうことが起きた事に、丸木さんたちは本当に心底怒りと驚きを感じて。戦争はそういうものなんだってことを伝えたかったんじゃないですかね

河邑監督は「沖縄戦の図」の映画を制作する事で、「戦争」というものを心で感じてほしいと話す。

河邑厚徳監督:
戦争をテーマしたドキュメンタリーはものすごい作品数があると思うんですけど、新しい事実を発見したり、証言を構成したりという作り方が多いと思うんです

河邑厚徳監督:
実はもう一つ大きいのは、人の気持ちが動く。頭で理解するんじゃなくて、もうそういうことを起こさないためには心を動かさなきゃ。見ている人の心を

河邑厚徳監督:
人の心を動かすのは芸術の力なんですよね。アートにはそういう力がある。「沖縄戦の図」を中心として、ノンフィクションのアートドキュメンタリーとして、一つの節目になればと思っています

地上戦の記憶が刻まれた「沖縄戦の図」。
映画は丸木夫妻を追った制作の記録とともに、非戦への思いを見る者の心に届けてくれる。

河邑監督は、映画を全14作品が描かれた時系列で構成していて、丸木夫妻が沖縄に初めて来て、何を描いてどう至ったのか。創作と共に巡る、丸木夫妻の考えや思いを徐々に紐解いている。

沖縄は6月23日に、慰霊の日を迎える。

戦世(いくさゆ)の記憶と、命の大切さを後世に伝える「沖縄戦の図」を取上げた映画は、2023年6月17日から県内各地の映画館で上映されている。

(沖縄テレビ)

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