2023年6月、石川県金沢市の交差点で、横断中の男性が信号を無視した車にはねられ死亡した事件。金沢地方裁判所は21日、車を運転していた女と、助手席で信号無視を指示したとされる男の2人に懲役6年の判決を言い渡した。いずれも無罪を主張していた男女、何が判決のポイントだったのか。
運転手・助手席共に危険運転致死罪に問われた裁判
この事件は2023年6月、金沢市内の交差点を自転車で横断していた西川俊宏(にしかわとしひろ)さんが、赤信号を無視した車にはねられ死亡したものだ。

2023年5月17日から始まった裁判員裁判では、車を運転していた長谷川玲子(はせがわれいこ)被告と助手席で赤信号を無視するよう指示したとされる寺崎太尊(てらさきりき)被告が危険運転致死の罪に問われていた。

これまでの裁判で長谷川被告は「わざと信号無視をしたわけではない」などと主張。寺崎被告も事件当日の記憶がないなどとしてともに無罪を主張していた。

一方、検察は長谷川被告が一度減速していて赤信号を認識していることや同乗者の証言などから寺崎被告が執拗に明確な言葉で指示をしていたとして、長谷川被告に懲役8年、寺崎被告に懲役10年を求刑。

そして6月21日…
記者:
今、寺崎被告が裁判所の中へ入っていきます。

無罪主張の男女に裁判員の判断は?
金沢地裁で判決が言い渡された。
野村充裁判長:
主文、被告人両名をそれぞれ懲役6年に処する。

野村充(のむら みつる)裁判長は、長谷川被告について…
「交差点の信号機が赤だと認識し停止しようとしたところで寺崎被告から「止まらんでいいから」と指示され、混乱したというのは認められる。」

「しかし、2人の会話は全て赤信号が前提であるもので、事故後に被害者の元へ駆け寄るなど合理的な行動がとれていることから、赤信号だと分からなかったという主張は認められない」と断罪した。

また、寺崎被告については…

「赤信号で停止しようとしていた長谷川被告に『止まらんでいいから』と指示し、長谷川被告の考えを覆させ、信号無視を決意させるなど、事件において重要な役割を果たした」と、指摘。さらに…
「『仕事に遅れたくない』という動機から、赤信号をわざと無視する意思があり、それを被告2人で共有していた」として弁護側の主張を退けた。

その上で、運転していた長谷川被告と信号を無視するよう執拗に指示をした寺崎被告の刑事責任はさほど変わらないとして被告2人ともに懲役6年の判決を言い渡した。
長谷川被告は、肩で息をするように体を上下させながら、そして寺崎被告はジッと前を見つめて裁判長の話を聞いていた。

判決について西川さんの遺族は…

「きょうの判決は、一区切りではありますが、判決が出ても、亡くなった者が戻ってくることはありません。本件をきっかけとしてハンドルを握ることの責任の重さがより広く認識されることを願っています」とコメントした。
赤信号を無視した運転手だけではなく、それを指示した同乗者にも、同様の責任を認めた裁判員裁判の判決。長谷川被告は即日、控訴。寺崎被告も翌日控訴した。
(石川テレビ)