2022年に沖縄でも行われた有機フッ素化合物・PFASに関する血液調査が、東京都の多摩地区でも実施され、参加者の半数以上が、「健康被害が懸念される」とするアメリカの指針値を上回った。調査に協力した人たちは、沖縄だけでなく全国の問題だと訴え、国の対応を求めている。

650人のうち半数以上がアメリカの指針値を超える

2023年6月、東京都で開かれた記者会見。2022年11月から2023年3月にかけて、多摩地区の住民650人を対象に実施した有機フッ素化合物・PFASの血中濃度調査の結果が発表された。

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京都大学 原田浩二 准教授:
米国アカデミーの勧告に従って計算しますと、650名中、半分以上の方がこの水準を超えていたということになります

健康被害が懸念されるとするアメリカの指針値、20ナノグラムを超えた人が半数以上となる結果だった。

有機フッ素化合物・PFASは、アメリカ軍が使用してきた泡消火剤に含まれ、発がん性のほか子どもの成長に悪影響を及ぼす恐れが指摘されている。

県内では、北谷浄水場の水道水からも検出されたPFAS。
2022年、市民団体が387人を採血して調べたところ、環境省が実施した全国調査の平均値を上回り、最も高かった北谷町では3.1倍という結果になった。

識者「横田基地も汚染源の一つと考えられる」

沖縄ではアメリカ軍基地周辺の河川や湧き水から高濃度で検出されていることから、横田基地に近い多摩地区の住民が調査の対象となった。

分析を担当した京都大学の原田准教授は、工場や空港など泡消火剤を使用する場所が汚染源と考える必要があるとして、「横田基地も汚染源の一つと考えられる」と指摘した。

京都大学 原田浩二 准教授:
PFASを使用した履歴のある施設は、そういった観点からも一つの原因として考えなければいけません

日本国全体の問題で国に言ってもらわないといけない

血中濃度調査の結果を受けて台所の水道に浄水器を付けたと話すのは、国分寺市の中村紘子さん(80歳)。
血中濃度調査の結果は、PFOSとPFOAを合わせて36ナノグラムだった。

国分寺市の浄水所の水にPFASが含まれていたことは、3年前の2020年に新聞を読んで知った。

国分寺市に住む中村紘子さん:
最初は、自分の健康と結びついていませんでした。いろいろ勉強して体に影響があるということを知っていく中で、だんだん怖くなってきました

血中濃度調査を行うことになり、国分寺の市民への呼びかけ人として活動した。

国分寺市に住む中村紘子さん:
(この問題を)知らない方が半分くらでした。だから「こういうことですよ」とゼロから説明をした上で、「では調べてみましょう」と話をします。みんなが知っているわけではありませんでした

汚染源と指摘されるアメリカ軍基地の調査を実施できない国を動かすためには、市民の関心を高め、沖縄の人たちとも連携して声をあげていきたいと感じている。

国分寺市に住む中村紘子さん:
どうしてすぐに立ち上がれないのでしょうか。日本の政治の問題です。日本国全体の問題で、アメリカ軍に対して、明らかにしてほしいと、はっきり(国に)言ってもらわないといけません

「全員検診するとかやってほしい」「不安を払拭してほしい」

立川市に住んで50年になる佐藤まさ代さんは、実施する市民団体から声をかけられ、血中濃度調査に参加した。
血中濃度調査の結果は、PFOSとPFOAを合わせて29.5ナノグラムだった。

立川市に住む佐藤まさ代さん:
立川の水が汚染されている、という話題はありました

立川市に住む佐藤まさ代さん:
でもその程度でしたので、この採血をやるにあたり、私も前もっての知識は一切なかったです。まさかこんな高いと思っていませんでした

2023年1月に今回の血中濃度調査の中間報告が公表されてから、PFAS問題に対する市民の意識に変化があったと感じている。

立川市に住む佐藤まさ代さん:
こういうデータが出るのなら、立川市としても、全員検診するとかやってほしいです。「私も(採血)やれないですか」というように、市民の間では、少しずつ話題になっていると思っています。そういう不安を払拭してほしいというのが、いま差し当たって、(立川市に)やってほしいことです

「本当に腹が立つ」子や孫への影響を懸念

50年以上、国分寺市に住む新井靖子さんの血中濃度は、PFOSとPFOAを合わせて33.1ナノグラムだった。

国分寺市に住む新井靖子さん:
もう飲んでしまったから仕方がないですが、これからどうしたらいいんだろうと思います

結果を受けて案じているのは、自分の健康よりも子や孫たちのことだった。

国分寺市に住む新井靖子さん:
子どもたちは、やっぱり安全なものを飲んでほしいって思います。孫もいますし。なんというか、腹が立ちます。本当に腹が立ちます。本当は、そういうことを調査しないといけないのは国ですから。悔しいです

PFASが健康に悪影響を及ぼすことを知り、病気がちな娘の顔が真っ先に浮かんだ。

国分寺市に住む新井靖子さん:
娘は病気がちです。だから、全部PFASのせいとは思いませんが、少し入っていたら悔しいなと思います

「行政や自治体が調査しないと見えてこないものがいっぱいあると思う」

アメリカの学術機関は2022年、PFASが脂質異常症や腎臓がんなどの病気に関連があることを報告し、これを受けてアメリカ環境保護庁は、現在の勧告値よりも大幅に厳しい値となる規制値案を発表している。

日本でも2023年1月に専門家委員会が立ち上がっているが、対応の遅れをとる国への不信感が広がっている。

京都大学 原田浩二 准教授:
今まで汚染を知らなかった、もしくは調べていなかったというだけの可能性も非常にあります。しっかりした調査を行政や自治体が行っていかないと、見えてこないものがいっぱいあると思います

国や行政によるさらなる詳細な調査、そして汚染源の特定が求められている。

(沖縄テレビ)

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