島根・津和野町に伝わる国の重要無形民俗文化財「鷺舞」が、6月11日、世界遺産の広島・厳島神社に初めて奉納された。京都が発祥とされ、津和野では毎年7月に披露される「鷺舞」が県境を越えて特別に披露されたが、そこにはある願いが託されていた。
厳島神社に奉納された「鷺舞」
太鼓や鐘、笛が鳴る中、「白鷺」役の2人が披露する優雅な舞。 世界遺産の広島・宮島の厳島神社に、島根・津和野町の弥栄神社に伝わる伝統神事「鷺舞」が奉納された。

「鷺舞」のルーツは京都・八坂神社で、のちに山口へ伝えられていた「鷺舞」を1542年、当時の津和野城主が山口から移し入れたとされる。その後、400年以上にわたって伝統が受け継がれ、今も毎年7月に優雅な舞が披露されている。
歴史的なつながりを縁に
島根県の津和野町、吉賀町と、厳島神社がある広島・廿日市市は、江戸時代、津和野藩の参勤交代や物資の輸送などに使われた「津和野街道」で結ばれ、交流が盛んだった。

こうした歴史的なつながりを縁に、現代でも連携を深めようと、3市町は6月11日に連携協定を結んだ。

廿日市市では11日、記念イベントが開催され市役所で「鷺舞」が披露された。「鷺舞」を披露したのは弥栄神社鷺舞保存会だ。35人が所属する保存会で1番の若手が、町役場の職員・佐藤凜太朗さん。

邪気を清めて歩く「棒振り」の担当だ。 津和野で受け継がれて400年の伝統がある「鷺舞」だが、近年若手の担い手が少なくなっている。そこで、佐藤さんは職場の先輩に誘われ、3年前に保存会に加入した。

弥栄神社鷺舞保存会・佐藤凜太朗さん:
バランスを崩さないように、そこが怖いですね
世界遺産・厳島神社での文化交流
大勢の観客が集まったが、記念イベントがメインイベントではなかった。

「鷺舞」のあと、保存会のメンバーが向かったのは世界遺産の厳島神社だ。

弥栄神社鷺舞保存会・佐藤凜太朗さん:
廿日市市役所の前より緊張しています。形よく終わらせたいです
大舞台での披露を前に、保存会のメンバーも緊張の色を隠せない。
松尾直明記者:
「鷺舞」の奉納を前に、高舞台には多くの人が集まっています

舞台周辺には、びっしりと観光客が詰めかけました。
観光客:
おもしろいですね。これを見ていいなと思えば、島根に移住する人もいるかも
観光客:
文化交流は絶対いいと思う

弥栄神社鷺舞保存会・佐藤凜太朗さん:
こんなにたくさんの人に見ていただいて、反響があったのではと思う。またこういう機会があれば、積極的に発信していきたい
地元が誇る伝統文化の発信に、大きなやりがいを感じていた。

弥栄神社鷺舞保存会・栗栖志匡会長:
若者にとってはモチベーションにつながったと思う。今まで続いたものを途切らせずに続けていく努力をこれからもしていく
特産品のマルシェで「食」の交流も

3市町の交流はほかにも、宮島口駅前で日本酒や野菜など各地の特産品が並ぶマルシェが開かれ、「食」でも交流を深めた。
「街道」がつなぐ3市町の交流は始まったばかり。今後はそれぞれの地域の観光資源をめぐるバスツアーなどを計画しており「三位一体」で地域の魅力を発信し、交流人口の拡大を目指す。
(TSKさんいん中央テレビ)