天皇皇后両陛下は、6月17日、国際親善のため東京国際空港からインドネシアへと飛び立たれました。
この記事の画像(10枚)直近では、エリザベス女王の国葬のためイギリスを訪問した両陛下ですが、国際親善のために外国を訪問されるのは即位後初めてで、お二人では、2002年以来約20年半ぶりとなりました。
外国訪問のために、両陛下は、色々な準備をされています。どのような準備や関連行事をこなされたか見てみます。
9日の閣議決定から本格スタート
国際親善では、訪問国について、説明を色々な方から受けられることが多かった覚えがあります。
宮内庁の予定では、発表されていませんが、外務省の担当者などからは、別途非公式な形で話を聞かれているのではないかと思います。上皇さまの時代には、現地の大使が一時帰国し、説明することもありました。
訪問まで一週間ほどに迫った6月9日に、閣議決定。ようやくインドネシアへのご訪問が正式に決定します。この時から、色々な行事が動きだしました。
9日、両陛下に同行する随員が発表されました。首席随員は、福田康夫元首相。日本インドネシア協会の会長を務めています。
この日、両陛下は随員たちとお住まいの御所でお会いになっています。
ちなみに、1975年の昭和天皇訪米の際には、当時経済企画庁長官だった父の福田赳夫さんが首席随員でした。
そのほかの随員も発表され、皇后さまのご体調を診てきた医師団のメンバーも入っていましたが、出発直前になって、メンバーから外されています。現地での行事や皇后さまのご体調から同行の必要はないと判断されたようです。
宮中三殿での拝礼や儀式も
両陛下は、外国ご訪問について祖先の墓所にもご報告もされています。
掌典という、宮中祭祀を担当する人たちが、両陛下の代わりに、伊勢神宮、神武天皇陵、昭和天皇陵を参拝されています。
また、16日、陛下は皇居内にある宮中三殿の賢所、皇霊殿、神殿で拝礼をされています。
賢所では、掌典長のご訪問が無事に終わるよう祝詞が読まれ、拝礼に続き、内内陣に供えられていたお酒を陛下が飲まれます。儀式が終了した後には、首席随員の福田氏を含めご訪問に随行する人たちも、宮中三殿の庭上の神楽殿前でやはりお酒を頂いたということです。
6月14日には両陛下で、上皇ご夫妻のお住まい赤坂仙洞御所を訪問されています。4方で楽しそうに話をなさったということです。
上皇ご夫妻は1962年に昭和天皇の名代としてインドネシアを訪問したほか、1991年にも、ご即位後初めての国際親善として訪問されています。
両陛下のインドネシアご訪問が決まった後には、ボロブドゥール寺院を訪問し、塔に触ると幸せになるという話を聞き、上皇さまが触れられたことや、上皇さまの発案で誕生したヒレナガニシキゴイの話などを懐かしそうに話されていたということです。
国事行為は秋篠宮さまに委任
16日には、陛下が訪問中、秋篠宮さまに国事行為の委任する勅書を渡されています。これは、憲法に定められているものです。秋篠宮さまは、閣議で決定した書類に署名捺印するほか、この間に行われる国事行為を陛下に代わり執り行われることになります。
このように、訪問までには色々な行事をこなされる両陛下ですが、もうひとつ大変な行事が、ご訪問前の記者会見です。
15日に行われた記者会見で、陛下は、記者会からの3問、在日外国報道協会からの2問、さらに関連した質問2問に答えられています。
この中で、訪問に当たって関心を払っていきたいことについて触れられています。
一つは、「我が国とインドネシアとの間に培われてきた交流の歴史に思いをはせたい」ということでした。室町時代の交流に始まり、難しい時代を経て、現在の友好関係についても述べられています。
第二に、「我が国とインドネシアの若い世代の交流が、より一層活発になり、今後の両国間の交流と友好親善が更に深まること」とされています。
そして、「水問題に対して、どのような取組が行われてきたかなどについて理解を深めたい」とされています。
文化を知ることで相互理解を深め、友好親善がより進む…この考え方は、上皇ご夫妻の国際観にも繋がっています。
ご訪問までお忙しかった両陛下ですが、現地では、たくさんの人たちと触れ合い、文化に触れ、楽しく実りあるご訪問になることを願ってやみません。
【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】