いまから30年以上前に福岡・飯塚市で小学生の女の子2人が殺害された「飯塚事件」。2度目の再審請求のために弁護側が裁判所に提出したのは「新たな目撃証言」だった。目撃者は一体何を見たのか。そして目撃者が語ったこととは――。その真相に迫る。

「あの時私が電話していれば」

当時車を目撃した木村泰治さん:
私の前を軽のワンボックスがゆっくり走っていたんです。そこに女の子がいた

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木村泰治さんが語るのは、31年前の記憶。車で移動中、追い越しざまに見た車に乗る2人の女の子の表情を忘れることができないと話す。

当時車を目撃した木村泰治さん:
とにかく、いままで見たことない、強張ったというか、恐怖におびえたような顔だった。あの時私が電話しておけばね…。後悔しています

事件があったのは1992年。2月20日の朝、飯塚市で同じ小学校に通う1年生の女児2人(ともに当時7歳)が登校途中にそろって行方不明になった。翌日の21日、失踪した現場(飯塚市)から約20km離れた朝倉市の八丁峠付近で、2人は無残な姿となって見つかった。

死刑執行後異例の再審請求

事件から2年がたった1994年、福岡県警はDNA鑑定などを元に当初から捜査線上に浮かんでいた久間三千年元死刑囚(当時56歳)の逮捕に踏み切った。(※逮捕時は死体遺棄容疑、逮捕翌月に殺人容疑)

逮捕前のインタビュー(音声のみ)で久間三千年元死刑囚は「私は見ず知らずの人間。2人と会ったこともない」と話していた。

久間元死刑囚は逮捕されて以降、一貫して無罪を主張していたが、1審、2審共に死刑が言い渡され、2006年、最高裁で死刑が確定した。

そして2008年、森英介・法務相(当時)によって死刑が執行された。

刑執行の翌年、元死刑囚の家族は当時のDNA鑑定は信用できないとして、死刑執行後としては異例の再審請求の申し立てを行った。しかし2021年4月、最高裁は再審請求を退けた。

その3カ月後、弁護団は福岡地裁に対し2度目となる再審請求を申し立てた。その請求の柱として、弁護団が裁判所に提出した新たな証拠が、31年前の記憶を思い起こす木村泰治さんの目撃証言だったのだ。

目撃したのは「短髪・細身・色白」?

当時車を目撃した木村泰治さん:
あそこゼブラ状になってますよね。あそこで追い越してます

木村さんは、女の子2人が行方不明となった1992年2月20日、飯塚市の穂波西インターチェンジ付近を車で移動中、違和感を覚えるほどゆっくり走る白い軽自動車のワンボックスカーを追い抜いたと話す。

当時車を目撃した木村泰治さん:
「誰が運転しているのかな」と思って、隣の車を見たんです。坊主頭の、細型の色白の人がドライバーで、後ろにおかっぱ姿の女の子がランドセル背負って…。あと1人の女の子が後部座席でランドセルを置いて寝てたか、横たわっていた。(その時の女の子の表情は)とにかく、いままで見たことない、強張ったというか、恐怖におびえたような顔だった

木村さんは、亡くなった2人が行方不明になった当日、同じ飯塚市内でランドセルを持つ2人の小さな女の子を乗せた白い車を目撃。その運転手は久間元死刑囚とは異なる、短髪で、細身の色白の男だったと話す。

木村さんは、今回、家族の反対を押し切ってでも証人として自分が出ようと思った理由を次のように話す。

当時車を目撃した木村泰治さん:
最後に見たのは、私しかいないのかなって。当時から絶対、久間元死刑囚は違うって。間違いなく女の子の顔は私が見た顔だったと。30年以上前の記憶は間違ってなかったと私は思います

事件を追い続ける記者が木村さんに聞く

木村さんが目撃した細身の男性は飯塚事件と関係があるのか。事件直後から深く取材を続けていた当時の記者が改めて話を聞いた。

記者:
その後部座席に乗っていた女の子の顔、どっちだと思いますか?

木村さん:
寝ていた子が、こっちだと思います

記者:
寝ていた子の顔は、見えた?

木村さん:
こんな感じで寝てたかな

記者:
1秒か2秒のすれ違いざまで寝てた子の顔、分かりますか?

木村さん:
Aちゃんが、少し細めのように見えた

記者:
飯塚警察署に電話されたとのことだが、何時頃、電話された?

木村さん:
多分、9時過ぎにはしたと思う。1週間近くたってからだと思うけど、刑事の方が来られた。名刺はもらってない。刑事の方が言われたのは「あなたが見たのは、軽じゃなくて、普通車の紺色じゃなかった」と言われた気がする

事件から約1週間後、木村さんは、あの小さな女の子2人を乗せた白い軽ワゴン車の目撃情報を警察に伝えていたが、警察が木村さんのもとを尋ねたときには「当時、久間元死刑囚が乗っていた紺の車ではなかったのか」と決めつけるような言い方だったと話す。

30年前の顔「分かると思います」

記者:
その、運転していた丸坊主の男、もし30年前の顔がそのままだとしたら、いま見たら分かりますか?

木村さん:
私は分かると思います

記者:
いまでも自分が見た2人が、被害者2人であって、久間元死刑囚はえん罪だと思われていますか?

木村さん:
あの当時のDNA鑑定は、初期のDNA鑑定で。DNA鑑定が第一の証拠。それが私はもう完全に崩れたと。それがはっきりしたから、尚更、声をあげていろんな場に出てきた

約1時間にわたる対談取材は終了。記者は「本当かどうかは分からない。事実かどうか確認する客観的証拠がない」とコメントしている。

裁判所はどう判断するか

当時車を目撃した木村泰治さん:
「50人くらい容疑者の顔写真を見せてもらったら、指させる」と言いましたね。当時、「写真を見せてくれ」みたいなことは言った

事件の真実はどこにあるのか。一貫して無罪を主張してきた久間元死刑囚。木村さんの証言によって再審の扉は開くのか…。

今回の木村さんの証言が、もし飯塚事件と関係しているという事になれば、大変大きな問題となるが、一方で、この証言を客観的に裏付ける証拠もない。

裁判所がこの証言をどう判断するのか。今後も注目が集まる。

(テレビ西日本)

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