江田島市の小学校跡地に誕生した牡蠣(カキ)の加工工場。観光客誘致も視野に入れ、見学通路を整備、BBQ広場やカフェも併設した。人口減少・少子高齢化の島に拠点を設けた福山市本社の水産加工会社の思いに迫る。

閉校から15年、跡地に大型工場建設

2006年、長い歴史に幕を閉じた江田島市の秋月小学校。

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閉校から15年が経った2021年、福山市に本社を置く水産加工会社「オーシャンポイント」が買い取り、カキ加工工場の建設が進められてきた。

オーシャンポイント・坂井英隆 社長:
ちょうどこの辺りに校舎がありました

校舎を取り壊し、敷地を最大限に活用した大きな工場。坂井社長は、地域に根ざした“工場らしくない工場”を目指し、製造だけでなく観光客の誘致にも意気込んでいる。そして、2023年6月14日、「江田島オイスターファクトリー」が完成。

海沿いに建つ新工場を加藤雅也アナウンサーが取材した。

加藤アナ:
外装は白とブルーのマリンテイストですね

オーシャンポイント・坂井英隆 社長:
「工場らしくない工場」というコンセプトもありましたので、おしゃれにツートンカラーのような外装にしました。社名の部分の設計は“船底”をイメージしているんですよ

上空から見た「江田島オイスターファクトリー」
上空から見た「江田島オイスターファクトリー」

船の喫水線や赤い船底をイメージさせるデザイン。そこに、社名の「OCEAN POINT」がまるで“船名”のように表示されている。

大きな船に見立てたデザイン設計
大きな船に見立てたデザイン設計

加藤アナ:
これは秋月小学校の…

加藤アナが立ち止まった場所には、「江田島町立 秋月小学校」と刻まれた石の門扉がそのままの姿で残されていた。石の変色や雨だれにさえ、過ぎたる日の面影を感じる。

工場の敷地内に残されている旧秋月小学校の門扉
工場の敷地内に残されている旧秋月小学校の門扉

オーシャンポイント・坂井英隆 社長:
旧秋月小学校の門扉で、地域の方にも喜んでもらえるように…

国内トップクラスの生産量目指す

次に、工場内の見学通路を歩いてみた。

工場内の見学通路を歩く加藤アナ
工場内の見学通路を歩く加藤アナ

加藤アナ:
壁一面が青色で水族館のような雰囲気ですね。通路の両側に窓があり、工場の内部を見ることができます。今日は特別な許可を得て撮影していますが、普段は「撮影禁止」です。見学用に一般公開しているものの、いかに最先端の技術が詰め込まれているかを感じますね。“省力化”に力を入れていて、フォークリフトには操縦席がありません

無人フォークリフトなど設備には先端技術を利用した自動化を導入。省力化された工場で、世界も販路に見据え、冷凍カキ2000トン、カキフライ1200トンという国内トップクラスの生産量を実現さたいという。

オーシャンポイント・坂井英隆 社長:
江田島市は広島県内のカキ生産地の“へそ”にあたります。それぞれの産地からリードタイムが最短で工場に届くようになれば、鮮度管理にもつながります。カキを集める、鮮度を管理するという点でこの立地は非常に魅力的です

少子高齢化の島に“働く場”を確保

また、一般利用できる屋上バーベキュー広場やカフェも併設。

オーシャンポイント・坂井英隆 社長:
われわれの本社は福山市ですから、江田島に立地するには地域の方々の協力がないとうまくいかないだろうと。江田島の皆さんに工場を認識してもらって、頑張っているねと思っていただきたい

一方、江田島市は人口減少・少子高齢化と向き合いながら“若年層が働ける場”を確保したいと、未利用施設の売却などで企業誘致を進めてきた。近年、新規企業や店舗の進出が相次いでいる。
この日、「江田島オイスターファクトリー」の落成記念式典に江田島市の明岳周作市長も参列。

江田島市・明岳周作 市長:
江田島市は何でもできるとか、江田島市で夢をかなえる、そういう思いを持った方々に来ていただきたいと思っています

江田島市の明岳市長(左)を取材する加藤アナ(右)
江田島市の明岳市長(左)を取材する加藤アナ(右)

(Q:外からと内からの活性化も大事だと思うが?)
江田島市・明岳周作 市長:
市外の事業者への誘致制度と、市内の事業者が活性化のために拡張するとか、そうしたことを積極的に行っています。当然、両方大事なので、事業者と市民と一緒になって取り組んでいく。これが地方創生なんだろうと思います

未利用施設の売却、空き家の活用、島外からの企業誘致や移住など…たびたび話題に上る江田島市。今回、広島が全国一の生産量を誇るカキの加工工場も新たに加わり、ますます目が離せない。

(テレビ新広島)

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