長野県下條村の温泉旅館「月下美人」。「一軒宿の思い出に」と始まった経営者家族のコンサートや星空観察といったユニークなもてなしで宿泊客を楽しませている。コロナ禍をなんとか乗り切り、今後はより一層、満足してもらえるようなサービスを提供したいとしている。
ユニークなサービス
下條村にある温泉旅館「月下美人」。
夜、ロビーでは、社長の独唱に、女将のオカリナ、常務の三男はギター伴奏。
15年ほど前から行う経営者家族による「コンサート」だ。
さらに、旅館前の駐車場で楽しめる徒歩0分の「星空観察」も。
ユニークなもてなしは「宿の特色に」と始めたサービスだ。
この記事の画像(11枚)一軒宿の思い出に
月下美人・児島博司社長(74):
いかにお客さまに満足・感動して帰っていただくか、それだけですね、最終的には
「月下美人」の開業は1999年。20年余りだが、社長夫妻は長く宿泊業に携わってきた。
ふたりは1978年、飯田の市街地にあった「児島旅館」を引き継いだ。
後継者がいなかったため料理の修業をしていた博司さん、実家が旅館の紀子さんの夫婦に任せることになったという。
その後、ふたりは旅館をビジネスホテルに変えて営んできた。
児島博司社長(74):
ビジネスホテルだったけどお客さん少なくて、料理をやって、マイクロのお迎えをして、駐車場の整理をして、全てやらないとなかなか事業はうまくいかない
1980年代になると中央道開通の影響でビジネス客が泊まらなくなり、厳しい経営に―。
そこで博司さんは、下條温泉に目を付け「月下美人」をオープンさせたのだ。
児島博司社長(74):
「一軒家でやってみようと、特色出して」というのが最初の出発点。昼神見たり、いろんなところ見たけど、たまたまここに来た時に景色が良くて月がきれいで、ここなら一軒家でも特色出せるなという感じがした
コロナ禍を乗り越え
現在、現場を取り仕切っているのは女将の紀子さんと、フロントなどを担当する三男の常務・康人さんだ。
コロナ禍は休業も余儀なくされピンチを迎えたが、公的支援で何とか乗り切りようやく客足が戻りつつある。
常務・康人さん(三男・31):
この4年間くらい非常に寂しい日々が続いてたけど、ここ1カ月くらいはGWくらいから多くのお客さまにお越しいただいてありがたいなと
午後6時、夕食の時間。
信州牛やアマゴの塩焼きなど、南信州の食材をふんだんに使った料理でもてなしている。
そのころ、康人さんは部屋の「ふとん出し」。館内を走り回っていた。
常務・康人さん(三男・31):
お酒飲まない方はすぐご飯召し上がって(部屋に)帰ってみえるので
特色「ファミリーコンサート」
慌ただしさが一段落した夜8時過ぎ。いよいよ「ファミリーコンサート」が始まった。
歌好きの博司さんによる独唱。
続いて、紀子さんがピアノを披露。
このコンサート、15年ほど前、紀子さんが実家から持ってきたピアノをロビーで弾き出したのが始まりなんだそう。
女将・紀子さん(71):
何にもないところに来たお客さんたちに、少しでも何か思い出に残ったらいいなと思ってやってます
しめくくりは康人さんのギター伴奏による博司さんの歌。
特色「星空観察会」
コンサートが終わると、今度は駐車場へ移動。
宿泊客はござの上に寝転んだ。
15年前から開催している星空観測会だ。
常務・康人さん(三男・31):
せっかく周りが真っ暗な宿で、どの星がどんな星なのか覚えていただくと、より楽しんでお帰りいただけるかなと
「レーザーポインター」を知り合いからもらったのをきっかけに博司さんが始め、その後、康人さんが星空を案内する民間資格を取得して説明している。
星空観察は隣の阿智村が有名だが、博司さんは「月下美人」の方が早いと自慢する。
児島博司社長(74):
「ヘブンスそのはら」の営業の方が来て「児島さんどうやってやってるの?」って。「ゴザ敷いてレーザーポインターでこうやるんですよ」って、「あ、そうなんだ」って始められた。今は日本一の星空となってますけど、変な言い方ですけど、うちが「元祖」(笑)
この日の夜はやや曇っていたが、天候が良ければ満天の星空を楽しむことができるという。
手ごたえのある日々が戻る
コンサートに、星空観察。サービス精神旺盛な3人のもてなし。
宿泊客からは「アットホームな宿」と好評だ。
「一軒宿の思い出に」と始まったユニークなもてなし。
コロナ禍はできずにいたが、ようやく復活。手ごたえのある日々が戻った。
月下美人・女将・紀子さん(71):
大事な1日を楽しかったなと帰ってもらえる、それが一番いいことだなと思う
月下美人・児島博司社長(74):
私もできる限りは年をとっても出させていただいて、できる限りやっていきたい。いつまで出るか、声が。こういう場所・地を生かしたサービスを今後も一生懸命やっていきたいと思います
(長野放送)